1月18日(火)、感染症学者のアルノー・フォンタネ(Arnaud Fontanet)氏は、昨日17日に出演したラジオ番組で、フランスは現在「第5波のピークに達しようとしている」とし、「2月以降の新規感染は大幅に減少し、3月末にはその数はごくわずかになるだろう」と発言しました。
パリおよび近郊、「すでにピークを越えた」と感染学者
フランスの科学評議会メンバーの一人であるフォンタネ氏は、パリ及び近郊のイル=ド=フランス地域圏(Île-de-France)はすでに「第5波のピークを越えた」と推定しています。
確かに先週の1日あたりの新規感染者はほぼ30万人というとてつもない数字ではありますが、フランスの他の地域においても「ここ1〜2週間の間でピークを迎えるだろう」とフォンタネ氏は語っています。
第5波、ピーク期間短く
パスツール研究所(Institut Pasteur)が12日に発表した、病院の逼迫時期の試算をもとにフォンタネ氏が打ち出した予測では、今回のピークが過去2年間にわたる4回の感染ピークに比べて「期間が非常に短く」なっています。
つまり「2月には大幅な新規感染者数の減少が始まり、3月には取るに足らない数」となり、昨年12月に延期された病院での手術などが3月には再開できると予測されます。
接触20%減で、入院患者数50%減
第5波のピークが短いのは偶然でもなんでもなく「皆の努力の賜物」だとフォンタネ氏は明言しており、人々が接触を20%減らすと入院患者が半分に減るとのことです。
確かに、現在フランスでのコロナ入院患者は約24,000人と数字だけ見れば多いですが、第2波での最高記録33,000人に比べれば1万人以上も少なくなっています。重症患者の数はピーク時に比べ4,000人も少なく、フランス各地の病院は概ねパンクすることなく持ち堪えています。
この1月からフランス国民は事の重大さを理解し、マスクの着用や手洗いを徹底しテレワークでの勤務に切り替え、会食や集まりを避け、重症化リスクの高い高齢者への接触を避けるなどの努力を行ってきたおかげで、「最悪の事態を回避することができた」ようです。
オミクロン株が去っても残る、デルタの脅威
もうすぐ感染者数が「減少に転じる」という明るい見通しが出されたとはいえ、すぐに気を緩めてはならないようです。
現在導入されている規制は少なくとも「2月中旬までは維持するべき」だとフォンタネ氏は主張しています。
その理由は、現在フランス北部では新規感染者数が過去最高記録の約80%程度の数をもってピークに達しているにもかかわらず、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏(Nouvelle-Aquitaine)からプロヴァンス=アルプ=コートダジュール(Provence-Alpes-Côte d’Azur)にまたがるフランス南部では、病院はパンク状態でこれまでのピーク時期と同じぐらい病床が逼迫しているからです。
もう一つの懸念事項は、現在フランス人新規感染者の10人に9人がかかっているオミクロン株は比較的症状が軽いですが、重症化リスクが高いと言われているデルタ株が「消えて無くなってはいない」ことです。
デルタ株の感染が増えると「問題」というフォンタネ氏ですが、これに関しては「オミクロン株への感染で獲得できる交差反応性の免疫と春の訪れのおかげで感染リスクが下がる」と見ています。
終わってはいないコロナ、新しい感染の波が来るたび免疫力アップ
「第5波で収束するとは言えないが、今後新しい感染の波が来るたびに我々の免疫は強化されていくため、風邪程度の病気になり重症化するケースは稀になるだろう」と、フォンタネ氏も大方の感染症学者同様の見解を共有しています。
もちろん今後オミクロン株よりも重症化する強力な変異種が出ないとは限りませんが、フォンタネ氏は「我々もワクチン接種などで防衛力を高めている」ことを強調しました。
さらに、昨日発表された飲み薬の登場がさらなる防衛力になることが期待されます。
治療薬パクスロビドの登場、生活の正常化へ期待
ファイザー社が開発した新型コロナウイルス 経口薬パクスロビド(Paxlovid)が2月にはフランスでも使用開始されます。この薬のおかげで重症化リスクがある人の入院リスクは10分の1にまで減る見通しです。
ファイザー社はこの治療薬について、原薬をフランスで生産するための施設を増設すると発表しています。
執筆:マダム・カトウ