８月６日（金）、フランス憲法評議会（Conseil constitutionnel）は昨日５日、議会が提出したコロナパスポートの運用拡大案を一部の条項を除いて承認しました。これにより、来週９日（月）よりレストランやカフェ等での運用が開始されます。
カフェ、レストラン、スポーツジムへコロナパスポートの運用拡大
ワクチンの２回の接種を終えてから７日間が経過するか、48時間以内の抗原検査（またはPCR検査）の陰性、もしくは過去６ヶ月以内に感染したことを証明するコロナパスポートは、すでに50人以上が入場する映画館、美術館、ディスコなどの文化施設で導入されています。
昨日の憲法評議会の承認で、コロナパスポートの運用範囲が拡大されることが法令化されました。
これにより、カフェやレストラン、バーの利用客にもコロナパスポートの提示が求められます。８月９日からは18歳以上の成人が対象で、９月30日から12歳〜17歳も対象になります。
店内飲食のみならず、テラス席の利用も含めての導入が法令化で確定し、飲食業界には落胆の声が上がっています。
飲食店ではなくともバーやレストランのあるホテル、バカンス村やキャンプ場でも導入されます。
ただし、一般大衆の入るレストラン以外の飲食施設、社員食堂などは対象外となります。
対応に追われる飲食業界、落胆隠せず
飲食店側は客が提示するコロナパスポートのQRコードをスマホのアプリで確認する義務があります。確認を怠った場合は警告を受け、７日間以内に改善されない場合は営業停止になります。
さらに45日間で３回の違反をした場合、店のオーナーは禁固刑又または9000ユーロ（約117万円/１ユーロ＝約130円）の罰金が課されます。
運用についても、客の入店に際して全員のコロナパスポートを確認をする作業が発生するため、飲食店は準備に追われています。
飲食店のオーナー、三重苦
コロナ禍で受けた打撃からようやく立ち直りつつある飲食店は、ロックダウンで強いられた長期閉店によるロ損失をこの夏で取り戻そうと躍起になっています。
しかしながら、今回のコロナパスポートの導入で、せっかく回復した客足が再び減るだけでなく、人件費の増加や従業員の確保など新たな問題に直面しています。
フランスの高級レストランや座席の多いブラッスリーなどでは席の案内係が常駐していますが、一般的なレストランやカフェではウエイターやウエイトレスが席に案内し、テラスは自由に着席させるところがほとんどです。
コロナパスポートのチェック業務が追加されると、ウエイターは席を案内する前か注文を取る前に提示を求めなければなりません。
配膳用のお盆を片手に持ち、スマホを取り出してQRコードを確認する作業には客一人当たり数十秒かかるため、注文を取る前に多くのタイムロスが発生します。
感染拡大により、既に前倒しでコロナパスポートが導入されている一部の観光地の飲食店では新たに確認係を一人採用し、テラスの前に配備しているところもあります。
８月30日より従業員も義務化、不所持なら一時停職
今月末からはコロナパスポートは従業員にも義務化されます。期間は11月15日までとなっていますが、感染状況により延長される可能性はあります。
所持していない従業員の契約は一時停止され、その間の給与は支払われません。ただし、コロナパスポートの不所持を理由にした解雇は禁止されています。
雇用主は契約停止の前に、まずこれらの従業員に「接客をしない別の部署」への異動を提示しなくてはなりません。
ただ、実際には小規模の飲食店がウエイトレスに接客しない別の仕事を確保するのは不可能に近く、スポーツジムのトレーナーの部署替えも困難です。
発表後、薬局の抗原検査に予約殺到
昨日の憲法評議会の決定と同時に、抗原検査を提供する薬局には予約が殺到しています。予約は出勤前の８時〜９時ぐらいの時間帯が圧倒的に多くなっています。
昨晩テレビのインタビューに答えた薬局は、以前は「１日８人ぐらいだった予約が、発表後一気に120人に増えた」とコメントしています。
※コロナパスポートの詳細はフランス政府のサイト（フランス語）よりご確認いただけます。
執筆：マダム・カトウ
