5月19日(水)ロックダウン段階的解除初日。ランチ客で賑わうパリのカフェテラス席(筆者撮影)
5月21日(金)、カステックス(Jean Castex)首相は昨日20日、ワクチン接種の対象年齢制限を解除し、現在の50歳以上から18歳以上の成人全てを対象にすると発表しました。これにより6月中旬には国民50%に対し1回目のワクチン接種終了を目指します。また、今週水曜日の5月19日よりカフェやレストランにおけるテラス席の営業や商店が再開したため、街には活気が戻ってきました。
31日から全ての成人対象、24日から教師、警官など先行接種
当初6月15日から予定されていた18歳以上49歳未満のワクチン接種は、5月31日に前倒しされました。すでに一部の自治体では、接種会場に予約なしで訪れた若者を受け入れるところもあります。
感染リスクの高い職業従事者に挙げられている、教師、警官、清掃員、バスの運転手、レジ係は、24日から優先的に接種を受けることができます。
フランス国内の旅行先で接種は可能か?「例外的」保健相
ワクチンの供給先の管理上、本来2回目の接種は1回目の接種と同じ場所で受けることになっています。ヴェラン(Olivier Véran)保健相はメディアのインタビューに答え、「どの自治体にどれだけのワクチンを配分し、そこからどの接種センターや開業医、薬局に送るかといった在庫管理が非常に困難なため、2回目の接種は必ず同じ場所で」と発言しています。
しかしながら、ロックダウンの移動制限解除で、5月の連休や週末に帰省をしたり旅行に出かける人が多いことから、「やんごとなき事情であれば、あくまで例外的に認める」と言葉を濁しています。
首相は「休暇先でもドンドン接種して」
一方、経済再開を急ぐカステックス首相は、「旅行先でも接種は可能」と発言し、「今週末の連休中も接種センターはオープンしているので、旅行先や帰省先でも「ドンドン接種してください」と場所を問わずワクチン接種をアピールしています。
また、コロナ禍で壊滅的になった観光業の復活も急がれる中、休暇先での接種需要にも対応していく必要があるようです。
バカンスシーズンに高まる「観光地の感染リスク」に対応も
高齢者人口の多い地方自治体では、住民のほとんどが接種を終えているところもあります。
フランス西部、大西洋側に位置する美しい海岸で人気のビーチリゾート、アルカション(Arcachon)市は、住民11,000人の小さな街ですが、週末やバカンスシーズンになると人口の5倍から10倍もの観光客が訪れます。
アルカション市は早々に住民の9割以上のワクチン接種を終えていますが、このフランス人に人気が高いリゾート地に接種を終えていない観光客が大量に押し寄せると、感染再拡大のリスクが高まります。
そうしたリスクに対応し、ワクチン接種のスピードを落とさないためにも、連休や夏休みなどの人の動きに合わせ、観光客が特に多い地域へのワクチン供給量を増やすことも検討されていますが、ワクチンを「いつ、どこに、どれだけ?」送るかなどの見極めは簡単ではなさそうです。
ヴェラン保健相は「もし止むを得ず旅行先で接種をするなら、地元で予約した接種予約を必ずキャンセルしてください」と呼びかけています。
目指せ!6月中旬の人口50%接種達成
フランスでは、少なくとも1回のワクチンを接種した人の数は、5月15日に国民の約30%にあたる2千万人を超えています。コロナで壊滅的となった経済の復活はワクチン接種にかかっており、政府は一般接種の前倒しにより、6月15日までに人口の約50%にあたる3千万人の接種達成を急いでいます。
そのため、カステックス首相は医療関係者に、手薄になる夏休みの休暇期間中も、都市部でのワクチン接種センターにおける事前診察担当医師の確保を命じました。
執筆 マダム・カトウ