5月25日(火)、国民の約35%が少なくとも第一回目の接種を終えるなど、フランスでのワクチン接種が進む一方、集団免疫を獲得するために、いわゆる「ワクチン懐疑派」と呼ばれる人たちをどうやって説得するかが議論されています。
集団免疫獲得のハードル上がる、変異種で75%以上の摂取必須に
19日からカフェのテラスが解禁し、商店も再開、夜間外出も21時まで可能になるなど街には活気が戻り、国民の生活がようやく正常化へと向かっていると思わせるような明るい雰囲気が漂っています。
確かにワクチンの接種ペースは日に日に上がっていますが、集団免疫獲得に必要な接種率は当初60%以上と言われていたものの、フランス国立科学研究センター(CNRS:Centre national de la recherche scientifique)感染症研究部長、サミュエル・アリゾン(Samuel Alizon)氏は、多様な変異種の登場で「国民の77%から80%」への接種が必要と見ています。
国民の20%はワクチン「接種する気ない」も、改善傾向
5月上旬に行われたある世論調査によると、国民の20%が「接種する気は無い」と答えています。これは3ヶ月前の同じ調査では30%でした。これに「接種を迷っている」の13%を加えると、計33%に説得が必要になります。
別の調査では、昨年12月に60%だった「多分接種しない」と「絶対接種しない」の割合が、5月上旬には44%に下がっています。「接種しない」と答えた人の内69%が「副反応が怖い」と回答し、なぜなら「新しいワクチンは信用できないから」を理由にあげています。
また26%の人が「ワクチンの効果に疑問」を持っており、20%は「ワクチンが選べない」を接種したくない理由にあげています。
とはいえ、32%の人が「ワクチンの安全性や効果を証明する情報」があれば、16%は家族などの「身近な人たちを守るため」なら「接種してもいい」と答えています。
《陰謀説信奉者》や《反ワクチン主義者》はごく少数、ほとんどは「躊躇」
トゥール(Tours)大学病院教授で医師のエマニュエル・ルーシュ(Emmanuel Rusch)氏は、「ワクチンに懐疑的な人たちを差別したり、罪悪感を持たせるような説得の仕方は道徳に反する」と述べています。
リモージュ(Limoges)で開業医を営むジャン=クリストフ・ノグレット(Jean-Christophe Nogrette)氏は、「陰謀説を信じたり、反ワクチン派の人達を説得しようとするのは労力の無駄」と断言し、これらの「拒絶派」は医院にくる患者の「僅か3〜4%」にも満たないため、大多数の「躊躇派」を説得すべきだと述べています。
説得には時間がかかる
ノグレット氏は、自身の医院を訪れる患者に「ワクチンは免疫を増進するが、時により増進しずぎて強い副反応を起こすことがある。だからこそ効果があるといえる」とじっくり説明すると、ほぼ全員が納得して接種すると述べています。
また、「(ワクチン接種が)正常な生活に戻るための唯一の手段」であることをわかってもらうことが大事だと述べています。
ボルドー大学病院の医師、ミカエル・シュヴァルザンガー(Michael Schwarzinger)氏によると、巷にコロナ関連情報が溢れかえって皆「情報過多」になっており、その結果人は「自分に一番都合のいい情報を信じる」ようです。
つまり、反ワクチン派の人たちは、副反応や変異種などの情報により「だから接種できない」と自分の意見を正当化します。
自分だけでなく、身近な人を「守る」ためのメッセージ発信に効果
シュヴァルザンガー氏がフランス保健局と合同で行った調査によると、昨年12月にワクチンの効果が公表されたにも関わらず、65歳未満の成人のうち約半数が「接種しない」と回答し、重症化リスクが低い18歳から50歳未満の層に至っては「自分には必要ない」と更に多くの人が接種に否定的でした。
その後、今年3月に出たワクチン接種を奨励するテレビ広告が放映され、老人ホームにいるおばあちゃんが、接種をした後にようやく再会できた孫を抱きしめているシーンが映っていました。
この広告は優先接種の対象である高齢者向けのメッセージでしたが、「孫に会うため」というおばあちゃんの気持ちが、見る人の感情に訴え、接種に前向きになる効果があったようです。
同氏は、ワクチン接種は「自分のため」だけではなく「自分の周りにいる人を守るため」であるというメッセージを発信することが「とても重要」だと述べています。
執筆:マダム・カトウ