2月8日(火)、現職のマクロン大統領が依然出馬を表明していない中、2ヶ月後に迫るフランス大統領選挙の投票意図に関する世論調査が行われました。その結果、収入や社会的地位、年齢、性別による興味深い投票傾向が浮かび上がっています。
ブルーカラーは根強い極右支持
2017年に行われた前回の大統領選同様、今回も労働者階級の有権者の10人に3人は極右のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)氏への投票意図を表明しています。
また10人に1人は、政治経験がなく過激で人種差別的な発言で有名な論客エリック・ゼムール(Eric Zemmour)氏を選んでいます。
伝統的に左派支持者が多かったこの層ですが、今回の調査では左派候補者全員への支持数を合計しても4人に1人に留まっています。つまり極右2候補者だけで、左派全体の支持数を超えていることがわかります。
左派候補者の中でこの層に最もアピールできているのは、極左のジャン=リュック・メランション(Jean-Luc Mélenchon)氏と、オランド政権下で法務大臣を務めた移民系のクリスティアンヌ・トビラ氏(Christiane Taubira)(社会党)氏です。
昨年立候補を表明した社会党所属で現パリ市長のアンヌ・イダルゴ(Anne Hidalgo)氏と、伝統的右派、保守党のヴァレリー・ペクレス(Valérie Pécresse)氏2人の女性候補者について、この層の支持者は皆無となっています。
マクロン現大統領支持者は高学歴、高収入
現大統領への投票意図は大体16〜23%の割合で推移しています。これは2017年の大統領選前の支持数13%を超えています。
マクロン大統領の主な支持層は、前回の第2回投票で敗れたルペン氏の支持層とは真逆で、知的労働者や管理職などに従事する層(30%)が占めています。
さらに月収3500ユーロ(約455,000円/1ユーロ=130円)以上の有権者の4分の1は現大統領への投票意図があり、4分の1は保守のペクレス氏を支持しています。
一方、この層の極右ルペン氏への支持は6%にとどまり、「インテリ」のゼムール氏(17%)に水を開けられています。
「女性蔑視」発言のゼムール氏、女性の支持得られず
「反移民、反イスラム」などの過激な発言で、極右ルペン氏の支持者層の票を取り込もうとする論客のゼムール氏ですが、男性の支持17%に対し女性の支持は10%と女性へのアピールに苦戦しています。
過去に女性蔑視発言を繰り返したことが大きく影響し、「男尊女卑」のイメージを払拭することができていません。
ゼムール氏は選挙キャンペーンでは「女性の権利を侵害する事はしない」「私が最も女性を守る大統領」と公言していますが、今回の調査で「最も危険な大統領候補者は誰か?」の質問に、女性の67%がゼムール氏を挙げています。
これは男性よりも8ポイント高くなっています。
一方ルペン氏は、前回の大統領選で男性より女性の支持を得た実績があります。
若者に人気のマクロン大統領
5年前の大統領選前の調査で、25歳未満の4分の1から支持されるなど、若年層に最も人気が高かった極左メランション氏は今回トップの座をマクロン大統領に奪われています。
選挙を棄権する割合が最も高いこの層からの高い支持は選挙結果に大きく影響しない可能性が高いですが、フランスの将来を担う「若者から支持される大統領」のイメージは現大統領のアドバンテージと言えます。
ちなみに25歳未満だけを対象にした世論調査でマクロン候補者は24%、ルペン氏は21%、ゼムール氏は9%、メランション氏は13%となっています。
若年層は伝統的保守党が最も取り込めていない層で、ペクレス候補への支持はわずか8%にすぎません。また、この層は環境問題に敏感であるにもかかわらず、緑の党の候補者ヤニック・ジャド(Yannick Jadot)氏(5%)は支持を得られていません。
65歳以上の支持、真っ二つに別れ
選挙の票田として最も重要な層といえるのが65歳以上の高齢者層です。
フランスも高齢化が進み人口における65歳以上の割合が増えている事も理由の一つですが、なんと言ってもこの層が一番投票に足を運ぶからです。
また高齢者は右派保守党の最も重要な支持層でもあり、5年前の選挙前の世論調査では10人に4人が当時の候補者(のちにスキャンダルで辞退)フランソワ・フィヨン(François Fillon)氏への支持を表明していました。
しかしながら、今回はこの層の28〜29 %がマクロン大統領、23〜28 %が保守党のペクレス候補に投票すると回答しており、伝統的右派は圧倒的な支持を獲得できずにいます。
農村部は極右支持傾向
今回の調査で各候補者の支持を地域別に見ると、5年前の大統領選における農村部での支持率では、マクロン候補(中道)、フィヨン候補(右派)、メランション候補(極左)、ルペン候補(極右)の4人が事前調査でそれぞれ20%前後を分け合っていました。
ところが、2018年「黄色いベスト運動」と呼ばれる購買力低下に起因した政府への抗議運動で、極右は農村部での支持率を大きく伸ばし、マクロン大統領は17%、極右は10%と大幅に下げています。
この層が寄せるルペン氏への支持は25%と根強く、後を追うゼムール氏を大きく引き離しています。一方保守党のペクレス氏は13〜20%と遅れをとっています。
マクロン大統領およびペクレス氏の支持は、パリ及びイル=ド=フランス地域圏(Ile-de-France)や都市部で高いことも今回の調査で明らかになっています。
執筆:マダム・カトウ