10月8日(金)、コロナ禍の影響で急増したフランスの電動自転車需要ですが、今年に入り品不足が続いています。需要増にもかかわらず生産や販売台数を増やせないフランスの販売店や自転車メーカーはジレンマに陥っています。
19年の地下鉄スト、20年のロックダウン解除で自転車人気大ブレイク
フランス、特にパリ市内の自転車需要は実のところコロナ禍の前から増加していました。パリ市内の渋滞、環境への配慮や健康志向から人気が出た自転車利用者は、2019年に長期にわたって続いた地下鉄のストライキで一気に増加しました。
さらに2020年のロックダウン解除直後から公共交通機関を避けるために自転車が注目され、市内の自転車専用レーンは大幅に増やされました。今では自転車レーンでも「ラッシュアワー」に渋滞が起きるほどの混雑ぶりです。
新規注文の納期は現在…500日
フランスの大手スポーツ用品店デカトロン(Décatholon)の店舗で、現在自転車、特に人気の電動自転車を新規購入しようとすると、在庫のない商品の納品は1年を超え「500日後です」と言われます。
これについて、フランススポーツ&自転車連盟の代表ヴィルジル・カイエ(Virgile Caillet)氏は「(品不足というが)実は自転車の生産台数は、コロナ禍以前より増えている」と語っています。
カイエ氏によると「供給は順調に行われているものの、需要があまりにも増えて在庫がなくなっている」ため、品不足に陥っているようです。
自転車もグローバル化の産物
自転車の部品は100個以上あり、それぞれの部品が東南アジア、ヨーロッパおよび北米の何処かで生産されています。
昨年フランスを含む欧米で猛威を振るった新型コロナの感染が、今年に入りアジア諸国で拡大しています。半導体不足が騒がれ自動車の生産が急減していますが、自転車も例に漏れず部品不足から生産の減少が続いています。
フランスの自転車メーカー、ルック・サイクル社(Look Cycle)の商品および宣伝責任者フレデリック・カロン(Frédéric Caron)氏によると、現在最も不足している部品は「チェーン、ペダル、ブレーキ、ギア」と自転車になくてはならないものばかりです。
別のメーカー、ラピエール社(Lapierre)は現在も600台の自転車に取り付ける後輪の鎖歯車が納品されないため、出荷できずにいます。
部品メーカー、数社で独占状態
自転車部品、特にギアは世界のシェアがほぼ2社で占められています。
その一つで、ギアと鎖歯車の大手メーカーである日本のシマノ社は、東南アジアの工場がコロナ感染拡大によりフル稼働できないうえ、アルミニウムや鋼鉄の供給不足に直面していると世界中の顧客に通知しています。
アジアへの極端な依存、需要に対応できないジレンマ
部品の供給が数社に限られ、しかも生産における極端なアジア依存が災いし、ルックサイクル社では今後2年間の生産計画が固定されています。
部品を自社で作成するのも他の供給先を探すのも不可能であるため、カロン氏は同社が「需要が伸びている中、より多くの商品を出荷できないジレンマ」に陥っていると語ります。
コロナで輸送コスト10倍、欧州にも生産拠点を
さらに、コンテナ需要の激増でコロナ禍以前は1,500ユーロ(約194,000円/1ユーロ=129,32円)だったコンテナ使用料が現在15,000ユーロ(約194万円)と十倍に膨れ上がっています。
前述のデカトロン社は同社独自のプライベートブランド自転車のフレームやフロントフォークをヨーロッパ生産に切り替え、今のところコスト増による末端価格の大幅値上げには至っていませんが、それでも自転車メーカーによっては2年前に1,100ユーロ(約143,000円)だったモデルが今年は1,500ユーロ(約194,000円)で販売されているなど価格にも反映されています。
ラピエール社のティエリー・コルネック(Thierry Cornec)氏は、全ての欧州自転車メーカーが同じ状況に陥っていることから「この部品生産におけるアジア依存の軽減をヨーロッパ全体で検討する必要が出てくるだろう」とコメントしています。
執筆:マダム・カトウ