フランスの学校 制服の復活はありか 大統領YouTuberインタビュー

2023.09.05

2023年9月5日(火)、新学期が始まった昨日4日、マクロン大統領は政治や社会問題を取り上げるユーチューバー、HugoDécrypteの番組に出演し、「ライシテ」(非宗教)の原則に基づくフランスの公立校における生徒の服装に関して「制服再導入」も検討の余地があると発言し、議論が巻き起こっています。

 

マクロン大統領、制服の「試験的」導入に賛成

今回のインタビューでは様々な問題が取り上げられていますが、その中で先日アタル教育相(Gabriel Attal)が発表した「アバヤ」(アラビア半島の伝統的女性の服装)の禁止は「やりすぎではないか?」と聞かれ、大統領は下記のように答えています。

フランスの小中高の教育の原則は、義務であり、無料であり、かつ「ライック」(laïc : 宗教と分離されていること)であるとし、生徒やその親の出生、人種、国籍などにかかわらず、フランス共和国の一員として平等であることを前提としています。

この原則に基づき、大統領は教育の場が「中立的な場所であること」の重要性を強調し、特にまだ自分の意思かどうかはっきりしない小中高校生に関しては、服装ではっきりと信教を表現することが偏見に繋がる可能性があるとして、学校側の対応を明確にすることが必要で、そういう意味でアタル教育相の対応は評価に値すると述べています。

Tシャツとジーンズに統一すればいいのでは?

インタビューしたユーチューバー、ユーゴ(Hugo)の「ではどんな服装をすればいいのか」の問いに、「それは大統領が決めることではない。各学校の校長が校則で決めれば良い」とし、私はその「原則が守られることを保証する者」だと答えました。

中立性を保つため、制服の導入に関して意見を聞かれたマクロン大統領は、学校側がやってみたければ試験的に導入するのはありだと賛成の意を表しています。

ただし、フランス中の学校に制服の導入することは非常に大掛かりなプロジェクトになるため、単に生徒は「Tシャツにジーンズ、ジャケットを着用のこと」といった統一ルールを決めるのが良いのではないか、と答えています。

 

「ライシテ」のフランス公立校、信教を表す服装は禁止だが…

政教分離国家であるフランスでは、憲法に定められる「ライシテ(laïcité)」の原則に基づき、役所など公的機関における信教を表す服装やアクセサリーが禁止されています。そのためキリスト教の十字架はもとより、ユダヤ教の男性が頭につける「キパ」、イスラム教の女性が頭を覆うスカーフが禁止されています。

これは公立小中高校でも同様ですが、今回問題になった「アバヤ」や男性用の「トープ」は、禁止される服装として明記されていませんでした。

そのせいか、フランスにある約59,000の公立小中高校のうち数百に関して、女子生徒が「アバヤ」を着用して登校する「違反」の通告が増加しています。

この問題に関し、政府はこれまで、生徒との対話によりその服装が民族衣装の位置づけなのか、着用に「宗教的な意図があったか」を見極めることを学校側に一任していましたが、件数の増加に伴い教員や学校側の負担、基準の不明確さなどが問題になっていました。

これを重く見たアタル教育相は、新学期の直前の8月31日に政府としての明確な指針として「アバヤ」の禁止を発表し、違反者へ「対話」を行うものの、対話が実らなければ「授業への出席は不可」などの措置を学校側に通達しました。

 

フランス国民の60%が制服に賛成、若者は40%

2017年に行われた世論調査で、全体の63%が制服の再導入に「賛成」と回答しています。しかしながら、回答者の年齢を18歳から24歳に絞ると40%のみでした。

今回起こっている議論でも「再導入」という単語が使用され、「昔は制服があった」と思っているフランス国民も多い中、実はフランスでは制服が一般的に普及していたことはないのです。

実は、フランスでは過去にもほとんどなかった「ユニフォーム」

フランスの制服(uniforme scolaire)は1802年に男子の全寮制高校に導入されたのが初めてで、しかも家計への負担がかかりすぎるという理由ですぐに廃止されました。

その後登場したのは、フランス語でブルーズ(”blouse”)と呼ばれる、上っ張り、子供用スモックで、幼稚園や小学生の子供が服を汚さないために着ていたものです。

これは制服を意味するユニフォームではありませんし、いずれにせよ1970年代に廃止されています。

執筆:マダム・カトウ

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