9月21日(水)、フランスでは毎年、車のフロントガラスに車両保険に加入済みであることを証明する緑色のカードを張り替えることが義務になっていましたが、政府は車両保険の証書をデジタル化すると発表しました。これにより保険業界では車両保険未加入者の摘発や詐欺対策の強化、紙の印刷費用の削減が可能になります。
緑の「ヴィニェット」、来年には消える
フランスの247の保険会社を代表する保険業連盟(FFA : fédération des compagnies d’assurances)は、数ヶ月前から車両保険加入済みを証明する、フランス語で「ヴィニェット」(vignette)と呼ばれる緑のカードを廃止し、デジタル化するよう政府に働きかけていました。
これにより、車両が保険に加入済みかどうかナンバープレートで確認できるようになります。
緑のカードは保険未加入を防ぐために作られたものですが、「今はもう不正を防ぐためのあらゆるテクノロジーが発達しているので、デジタル化で利用者の手続きも簡素化できると思います」と保険業連盟会長のフランク・ル・ヴァロア(Franck Le Vallois)氏は説明しています。
さらにデジタル化により保険未加入者はもとより、保険詐欺などの摘発も容易になります。
75年前からの「紙」の証明書5,000万枚、悲願のデジタル化ー 保険業界
フランスでは75年前に保険加入義務が導入されて以来、ドライバーは加入を証明するための緑のカードまたは保険の証書を常に携帯するか車内に置いておく必要がありました。
2016年、保険業連盟は保険証書の偽造や詐欺などの対策として、FAV(Fichier des véhicules assurés)と呼ばれる、保険加入者の情報をファイルにして一括管理するシステムを構築し、2019年には警察にこのシステムへのアクセスを許可しています。
偽造しやすい紙の保険証明書を廃止することで、保険業界は保険詐欺対策を強化し、さらに毎年5000万枚にのぼるカードの印刷費用を削減することができます。
デジタル化に向け数年にわたるロビー活動、メンタリティーを変えるのは「容易ではなかった」
ル・メール経済相(Bruno Le Maire)は先日、来年をメドにこのカードを廃止しデジタル化すると発表しましたが、ここまでたどり着くための道のりは長く、保険業連盟は政府へのロビー活動に数年を要しています。
政府との交渉が本格化した今年の春、保険業連盟は内務相、交通相、経済相の大臣3人との会合を持ちましたが、内閣再編や大統領選挙を控えていたことから、決定には至りませんでした。
長年培ってきたやり方を変更することから、保険業連盟は政府を説得するために「管理システムFAVに入力された保険データの正確性の高さ、ユーザーつまりドライバーと取り締まりを行う警察の双方にとってメリットがあること、さらに交通安全への貢献」を証明する必要がありました。
さらに今回のデジタル化の布告には、大統領選後の新政府の樹立を待たなくてはなりませんでした。
保険詐欺対策に効果、警察、ドライバーにも大きなメリット
2019年より各保険会社は、車両保険の販売から72時間以内にFAVシステムに顧客情報を入力することが義務化されています。入力ミスなどの人的なミスが僅かにあるとはいえ、このファイルデータの「99%は正確な情報」だとル・ヴァロワ会長は断言します。
いずれにせよ「フロントガラスに貼ってある小さな緑のカードをチラ見して、偽造カードかどうかを確認するよりも数段正確」なことは間違いないでしょう。
警察はコントロールの際、ナンバープレートの番号を入力するだけで、保険加入の有無や車両所有者の個人情報などを確認することができます。
ドライバーにとっては、年に一回郵送されてくる紙のヴィニェットを取り替える手間も省け、書面の保険証書を携帯する必要もなくなり、さらに万が一忘れた時の罰金35ユーロ(約5,000円/1ユーロ=約143円)を払う必要もなくなります。
執筆:マダム・カトウ