意外な観光スポット?パリで訪れてみたい図書館5選

2023.08.02

国立図書館リシュリュー館の La Salle Ovale

歴史の長いフランスでは、数々の小説家や哲学者が多くの本を書いてきました。そしてフランスの文化省のデータによると、「図書館」と名のつく施設はフランス全土に約165,00あるそうです。そのほとんどが市町村立の一般的なもの(Bibliothèques municipales)ですが、なかには観光目的でも訪れてみたい図書館もあります。今回はパリにあるそうした図書館を5館ご紹介します。

 

国立図書館旧館(リシュリュー館)

国立図書館でいま最も注目されているのが、10年以上の改修を経て昨22年に再オープンしたリシュリュー館です。パリに現存する5つの国立図書館の母体でもあります。

建物はもともと、ルイ14世の教育係で読書家でもあったマザラン枢機卿(Jules Mazarin)の邸宅として17世紀前半に建てられたもの。18世紀に王立図書館として使われるようになり、その後国立図書館になりました。

この図書館の目玉は、メインの閲覧室である「La Salle Ovale」(楕円の間)です。スポーツスタジアムより大きいのではと思わせる広い空間は19世紀の改装時に作られたもので、天井のステンドグラスから自然光が差し込むように設計されています。この閲覧室は利用登録も入場料も不要で、誰でも気軽にアクセスできます。

リシュリュー館は歴史も古く、王族に近い人物の所有する屋敷であったことから、貴重な美術品を展示する有料の美術館も併設されています。オペラ座からほど近い日本人街にあるため、アクセスが非常に良いのも魅力です。

立派な外観の国立図書館リシュリュー館

 

国立図書館新館(フランソワ・ミッテラン館)

80年代のミッテラン大統領の時代に建設が決まり、1996年に公開された近代的な図書館です。13区のセーヌ川沿いの広大な土地に、本を4冊広げて向かい合って並べたような高層ビルが4棟建っていて、そのすべてが図書館です。

建物のほとんどのフロアが書庫で、4000万冊あるとされる国立図書館の総蔵書のうち1000万冊以上がここに収蔵されています。古文書や有名作品の原本、美術品などの常設展示のほか、特別展も開催しています。

入館には年間15ユーロの利用料を払って利用者カードを作る必要があります。ただパスポートなどの身分証があれば旅行者でも簡単に作れます。展示室の特別展は、利用者カードがあれば無料です。

近代の建物だけあって、空調も効いていてWi-Fiも速く快適です。閲覧席数も多いため、学生の試験シーズンなどを除くと満席になることはほとんどありません。カフェや売店もあり、集中して仕事をしたいときや調べ物をする時には最適な図書館といえます。閲覧室の混み具合はサイトでも公開されています。

あまり観光では来ることがないエリアですが、建物の中を歩き回ってその規模を感じるだけでも面白い図書館です。

近代的な国立図書館フランソワ・ミッテラン館

 

サント・ジェヌヴィエーヴ図書館

5区のパンテオンの丘にあるのがサント・ジェヌヴィエーヴ図書館です。6世紀に設立されたサント・ジェヌヴィエーヴ修道院の図書館室がルーツとされ、パリで最も歴史の長い図書館と言われています。

書物が一部のエリートや特権階級のものであった時代は一般公開されていなかったようですが、19世紀に現在の建物ができてから、一般人も利用可能になったようです。一見すると倉庫のようにも見える建物は、中に入ると体育館のような広い空間に机と椅子が並べられており、壁一面に200万冊と言われる蔵書が並んでいます。

この図書館周辺は、ソルボンヌ大学や理工科大学校(École polytechnique)などの有名大学、またアンリ4世高校(Lycée Henri-IV)やルイ・ルグラン高校(Lycée Louis-le-Grand)などの名門高校が並ぶ文教地区です。この図書館も現在はパリ大学の管理下にあるため大学図書館のような扱いですが、登録さえすれば学生でなくても誰でも無料で利用できます。

学期期間中こそ閲覧室は学生ですぐ満席になりますが、学校が休みの間も毎日開いています。夏休み期間中にパリを観光する際は、すぐ横のパンテオンやリュクサンブール庭園と合わせて覗いてみると面白いかもしれません。


学生街にあるサント・ジェヌビエーブ図書館

 

アメリカンライブラリー

7区には、ヨーロッパ大陸で最大といわれる約10万冊の英語の本の蔵書を持つアメリカンライブラリーがあります。この図書館は1920年、第1次世界大戦中にヨーロッパに出陣した米国兵のために送られた本を集め、非営利組織(NPO)により設立されました。

建物や内装に関しては上記の図書館ほど特別感はありませんが、パリに住んでいたアメリカ人作家のヘミングウェイが通っていたという逸話があったり、戦時中に実際に兵士が読んでいた書物が展示されていたりと、独特のストーリーを持つ図書館です。

年会費150ユーロの会員制ですが、15ユーロの利用料で1日だけ利用することもできます。エッフェル塔のすぐ横という利便性も相まって、訪れてみたい図書館の一つと言えるでしょう。

アメリカンライブラリーの閲覧室

 

グランドモスクの図書室

パリ5区には立派なモスク(Grande Mosquée de Paris)があります。モスクはイスラム教徒以外は入れないところが多いですが、ここは3ユーロの入場料を支払えば、お祈りの日である金曜日とイスラム教の祝日以外は誰でも入ることができます。

中は広く、お祈りのための広い部屋やたくさんの植物や噴水がある中庭、ゼリージュ(Zellige)と呼ばれる幾何学模様のモザイクに彩られた塔など、パリの喧騒から隔絶された世界を見ることができます。

図書室もあり、普段あまり目にすることのないアラビア文字で書かれたコーランなどが並べられています。この図書室の本は展示がメインで貸出等はされていないようですが、モスクの神聖な雰囲気の中で書物が並ぶ光景は、なんともいえない雰囲気を醸し出しています。

ちなみにこのモスクには中東・北アフリカ料理が食べられるレストランや、アラブ菓子とミントティーを楽しむことができる雰囲気の良いカフェも併設されているので、観光目的で訪れても十分におもしろい施設です。

神聖な雰囲気のモスクの図書室

 

ひと味違った観光スポット

8月になると観光地以外は有名なレストランやお店もシャッターを下ろしてしまうフランス。定番ではないスポットは夏休みで閉まっていたなんてこともよくあります。図書館は基本的に誰でも入ることができるうえ、夏休み期間中に長期閉館することもありません。ひと味違った観光スポットとして、ひと休みがてら立ち寄るのもよいかもしれません。

※文中の情報はすべて執筆時のものです。訪れる際は必ず公式サイトなどで最新情報をご確認ください。
執筆 Takashi

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