意外に面白い!地下世界の迷路「パリ下水道博物館」をご紹介

2022.11.14

(写真)展示室の様子

日本で最近よく聞かれる「大人の社会見学」、フランスでも流行っています。ワインの醸造所やチーズの熟成庫はもちろんのこと、飛行機や自動車の工場、発電所や空港施設なども見学可能です。

そんな中、2021年にリニューアル・オープンしたパリ下水道博物館(Musée des Égouts)が面白いと話題になっていたので行ってみました。地味ですが意外に楽しいこの博物館を今回はご紹介します。

 

稼働中の下水道を見学できる

(写真)長大な地下世界につながっているとは思えない控え目な入口

セーヌ川にかかるアルマ橋のたもとのモダンな外観の入口を入ると、普通の博物館のような受付があります。

ここで「下水に飛び込んでもいいけど、シャワーはないので気を付けてください。また、中で用を足しても問題ないけれども、キレイなトイレを用意しているのでそちらの利用をお勧めします」と、フランスらしいユーモラスな説明を受けたあと、いよいよ地下に潜ります。

(写真)実際に稼働している下水道管が設置された通路を自由に歩き回ることができる

地下に降りると、そこは下水の匂いが充満する何百メートルと続く長い下水道です。下水をテーマにした展示・学習施設はたくさんあると思いますが、現役で稼働中の下水道を利用しているのは世界でここだけだそうです。

実際に稼働している下水管を頭上に感じながら、まずはパリの下水道の歴史や関連技術を紹介する展示を見学します。そのまま進んで行くと、今度は水量調整のための水門や詰まりを解消する大きな機械などが実際に稼働する様子を見ることができます。

下水道の容量をモニターする計器類も見ることができ、今どの程度の下水がどこに流れているのかが一目で分かるようになっています。大雨などで下水道の容量オーバーとなった場合は、博物館自体が水量調整タンクとして機能することになっており、それでもオーバーフローとなればセーヌ川に流されるそうです。

下水の熱エネルギーをリサイクル

個人的に面白いと思ったのが、将来の下水利用に関する展示です。

下水にはレストランが調理に使った水や、家庭の浴槽などから流される水が混ざっており、上水や地表水よりも暖かいのだそうです。その熱エネルギーを回収して、リサイクルする技術を考案中とのことでした。

地上の通りと同じ名前が

館内は広く自由に歩き回れるものの、地下なので自分がどこにいるのか分からなくなります。そんな時に役立つのが通りの名前を示したパネルです。

パリ市内の各通りに掲げられている、通り名を示すお馴染みのパネルが館内いたるところに貼られていて、今どの辺りを歩いているのかが分かるようになっています。

(写真)地上の通り名を示すパネルが至る所に設置されている

 

パリの下水道の歴史

現在パリ市の下水管の総延長距離は2600kmに達しています。105平方kmという東京23区の1/6の面積しかない小さな都市の地下に、下水管が文字通り網の目のように通っているのです。

19世紀中頃にはその10分の1にも満たなかったようで、ヴィクトル・ユーゴーの小説「レ・ミゼラブル」の中に「パリには226kmの下水道がある」という記述があります。

下水道の起源

パリの下水道の起源は、パリがリュテシアと呼ばれていたローマ時代にまで遡ります。現代の下水道のもととなるインフラの整備は中世に始まります。

19世紀にパリの人口が増え始めると、衛生環境は劣悪になりたびたびコレラが流行します。そのような状況を憂いたのが現在のパリにつながる都市計画を立てたオスマン知事で、彼のもとで土木技師として働いていたウジェーヌ・ベルグランが近代の下水道を築きました。博物館にも彼の功績を称える展示や胸像があります。

 

ネズミのぬいぐるみも

(写真)ミュージアムショップに並ぶネズミのぬいぐるみ

日本と比較するとパリはお世辞にも衛生観念が高いとは言えませんが、そうしたイメージを覆す使命も期待されているのか、内容の充実した見ごたえのある博物館でした

また、ところどころでネズミの絵が描かれていたり、ミュージアムショップではネズミのぬいぐるみが売られていたりと、下水のイメージを逆手に取ったマーケティングにもしたたかさを感じます。

ルーブルやオルセーなどパリの有名な美術館や博物館に飽きたという方は、ぜひトライしてみてください。パリの意外な一面が垣間見れるかもしれません。

Musée des Égouts de Paris

住所:Musée des égouts, Pont de l’Alma, 75007 Paris
開館時間:10時〜17時(毎週月曜、5月1日、12月25日は閉館日)
入場料:大人9ユーロ
HP:https://musee-egouts.paris.fr/
(22年11月現在)

執筆 Takashi

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