フランス 2022年ゴンクール賞にブリジット・ジロー氏、6年ぶりに女流作家

2022.11.04

フランス ゴンクール賞毎年ゴンクール賞の選考会場となっているパリの老舗レストランドゥルーアン(Drouant)

11月4日(金)、フランスで最も権威ある文学賞、ゴンクール賞(prix Goncourt)に今年は女流作家のブリジット・ジロー(Brigitte Giraud)氏の”Vivre vite”(仮題「生き急いで」)が選ばれました。2016年のレイラ・スリマニ(Leïla Slimani)氏の受賞から6年ぶりに女性作家の受賞となります。

 

今年120年のゴンクール賞、13人目の女流作家

今年120年を迎えるゴンクール賞の選考は、名作が多く最終選考は真っ二つに別れて難航しました。

第一回投票で5票を獲得し最終選考に残った作品は、ブリジット・ジロー氏の”Vivre vite”とジュリアーノ・ダ・エンポーリ(Giuliano da Empoli)氏の”Le Mage du Kremlin”(”クレムリンの魔術師”:仮題)でした。

この2つの作品から受賞作品を選ぶのに実に13回もの投票が行われましたが票が動かず、ゴンクール賞のルールにのっとって、選考委員長に2票目の投票権を与え14回目の投票でジロー氏の作品が選ばれました。

ジロー氏の受賞を決定づける投票をしたゴンクール作家のディディエ・ドゥコワン(Didier Decoin)委員長は、自らも1977年、当時の選考委員長のエルベ・バザン(Hervé Bazin)氏の決戦投票のおかげで受賞しています。

ちなみに、ゴンクール賞を受賞した作品は50万から60万部売れると言われています。

 

運命とは?夫の交通事故死を書いた”Vivre vite”

1999年、ブリジット・ジローは最愛の夫をバイクの事故で亡くします。今回受賞した作品”Vivre vite”はこの出来事をもとに書かれています。

事故という偶然の出来事で身近な人の死に直面した時、「もし…だったら?」と繰り返し考えてしまうことは避け難いことです。

「なんで自分はこんな目に遭ったのか?」「何が夫の死を引き起こしたのか?」と繰り返し自問していくうちに、ジロー氏は事故直前の数ヶ月間、数週間、数日間に「いつもと違う出来事が起きていた」ことを思い出します。

日常が「いつもと違った」という、軽い「機能不全」のようなこうした出来事の中から、「どの出来事がなかったら事故は起こらなかったのだろうか?」と考え始めます。

運命を事故に導いた「パズルのピース」を探し求め

ジロー氏はこれらの出来事をパズルのピースにたとえ、「事故という最後のピースがきっちりはまらないようにするには、どのピースを取り除けばいいのか?」を検証して行きます。

しかしながら、この「パズルのやり直し」は妄想にすぎず、しかもパズル自体が自分の周りにいる人たち全員でプレーされているため「結局は自分一人だけではどうすることもできなかった」という結論に達します。

ジロー氏はこの小説を「もし思いのままに書き続けていたら、3000ページになっていただろう」と語っています。

一つの時代を反映、愛の告白

「急いで生きる」という意味の”Vivre vite”というタイトル通り、小説は現在のデジタル社会に完全に移行する前の、全てがものすごいスピードで動き始めた時代背景において書かれています。

当時30代後半の主人公にとっても全てが目まぐるしく動き、そんな中で彼らは人生を構築しようとし、ジロー氏は「ユーモアと皮肉を混在させながら」書いています。

同氏はまた、この小説は「愛の告白」だと述べています。

人は突然の不幸に見舞われた時、「小説の中に人生の意味を求めることができるか?」という問いにジロー氏は、この小説の中で「私は説明不可能なことを説明しようと試みました」と答えています。

ブリジット・ジロー氏

1960年フランス領アルジェリア生まれの62歳、現在リヨン(Lyon)在住。2007年、ゴンクール賞の中でも短編小説に与えられる”Le prix Goncourt de la nouvelle”を、作品”L’amour est très surestimé”で受賞しています。

執筆:マダム・カトウ

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