11月8日(火)、エジプトで行われたCOP27から帰仏したマクロン大統領は、本日フランスで最もCo2排出量の多い50社に大幅な削減努力を促すため、エリゼ宮(大統領官邸)に社長らと会談しました。
50社でフランスのCo2全排出量の10%
フランスのCo2排出量の20%は産業で占められています。
本日エリゼ宮に招聘されたフランスで最もCo2排出量の多い上位50社が占める分野は化学肥料、セメント、製鉄、製油など多岐にわたります。
マクロン大統領は、国内の雇用を維持する目的から、グローバル化で海外に流出したフランスの産業再生を促してきましたが、産業化とCo2排出量削減の両立を図るのは容易ではありません。
首相付シンクタンク「フランス・ストラテジー」によると、フランスは最も産業空洞化が顕著な国の一つで、過去20年間で100万、40年間で200万もの雇用を失っています。
マクロン大統領はこの流れを阻止することに成功しています。
【カーボンゼロ化】を口実に、経済大国間で熾烈な争い
カーボンゼロ化はまた、各国の産業誘致や投資集めの競争の激化を促しています。
中でも中国はEV車用のバッテリー生産で群を抜き、ソーラーパネルの生産でも欧州の競合を寄せ付けないにも関わらず、カーボンニュートラルの目標を欧州が掲げる2050年より10年も先延ばしにし、2060年に設定しています。
目標達成を2050年に掲げるアメリカは、「カーボンニュートラル」をインフレ削減政策(IRA :Inflation Reduction Act) の中心に据え、3600億ユーロ(約52兆7058億円/1ユーロ=約146.4円)もの投資を集めようとしています。
アメリカが自国の産業活性化のために巨額の資金を集めようとしていることは、各国の国境を超えた工場誘致にも影響を及ぼしています。
スウェーデンのグループ企業で、EV車用のバッテリーを生産するノースボルト(Northvolt)社は、ドイツに「ギガファクトリー」(giga factory)と命名した工場の建設計画を先延ばしにする可能性が出てきました。
カーボンニュートラルを口実にした資金集めが、この分野における優位性を確保するために利用されることは本末転倒なことです。
EUの欧州市場担当委員ティエリー・ブルトン(Thierry Breton)氏は、アメリカの保護貿易的な政策に対し「制裁を加える」と発言しています。
1トンのアンモニア生産に、2トンのCo2排出
本日、エリゼ宮に招待されたうちの一人、フランスの総合化学メーカー、ヤラ・フランス(Yara France)社のニコラ・ブルタン(Nicolas Broutin)社長は「Co2削減を行うための方策はあり、弊社は今後それを遂行していく」と述べています。
同社はル・アーヴル(Le Havre)にある化学肥料工場一つだけで、実に80万トンものCo2を排出しています。
短期的には、同社はCo2を大気排出する前に回収し液体化した上で、北海にある使用済みの油田に埋める計画を立てています。
Co2を「ブルー水素」に変えることにより、ブルタン社長によると「2026年〜27年にはCo2の排出量を3分の1削減する」ことが可能です。
そして次の段階は、このブルー水素を再生エネルギーや原子力発電を利用した「グリーン水素」に変えることです。
これにより「2トンのアンモニアを生産するのに、1トンのCo2排出で済む」ことになりますが、ブルー水素より大幅にコスト高なグリーン水素への移行には「政府の支援が必要だ」とブルタン社長は述べています。
執筆:マダム・カトウ