皆さんはアドベントカレンダー(Calendrier de l’Avent)をご存知でしょうか。最近では日本でも「クリスマスカレンダー」などと呼ばれて販売されているようですが、まだ日本ではあまり馴染み深いものではないと思います。今回は、フランスのクリスマスを彩るアドベントカレンダーについてご紹介します。
アドベントカレンダーとは
アドベント(仏:Avent、英:Advent)は「到来、出現」という意味で、キリスト教では「キリストが人間世界に到来すること」を指します。
キリストが到来するクリスマスまでの約4週間を待降節(L’Avent)といい、11月30日に一番近い日曜日から始まります。カトリックの教会ではこの間、毎週のミサごとに一つずつろうそくを灯すという儀式が行われます。
アドベントカレンダーとはこの待降節の間、12月1日からクリスマスイブまでカウントダウンできるカレンダーのことです。各日付には小窓がついており、毎日ひとつずつめくることができるようになっています。日本風にいえば「もういくつ寝るとお正月」のような感覚です。
これは19世紀のドイツで始まった子供向けの習慣で、子供には無限の長さにも感じられるクリスマスまでの24日間をキリスト教の精神にそって過ごすこと、また忍耐の大切さを教えることを目的に広まったと言われています。
ドイツからフランスへ伝わるのに時間はかからなかったようですが、一般の家庭に広まったのはここ100年くらいのこと。比較的新しい習慣のためか早々に商業主義的色合いを帯びたようで、現在では宗教的な意味合いはほとんどなく、クリスマスムードを高めるためのひとつのグッズととらえられています。
スーパーのアドベントカレンダー特設コーナー
趣向を凝らした豊富な種類
フランスでは11月に入るとアドベントカレンダーが発売され、大きなスーパーなどでは特設コーナーも出ます。もとが子供向けの習慣であるため、お菓子やおもちゃのメーカーが特に積極的に商品を展開しています。
小窓には以前は子供が喜ぶ小さな絵が描いてあったり、毎日違ったキリスト教の教えが書いてあったりしたそうですが、最近はお菓子などの小さなギフトが入っているものが多いです。
私の友人は、子供のころチョコレート入りのアドベントカレンダーを買ってもらえるのが楽しみだったと言い、大人になってからも買い続けているそうです。
そういう層を意識してか近年は大人向けも多く発売されており、紅茶、ワイン、ビール、コスメ、キャンドル、香水などあらゆる業種のものがあります。中には数百ユーロするような高級アドベントカレンダーもあります。
お店にとってはいろいろな商品を紹介できるため、毎年各社趣向を凝らしたアドベントカレンダーを発売しています。
ピエールエルメの高級アドベントカレンダーは400ユーロ
毎日違ったキャンドルが出てくるアドベントカレンダー
私自身は、昨年初めてアドベントカレンダーを買ってみました。普段から利用しているお茶のお店のもので、小窓をめくると毎日違ったティーバッグが出てきます。
お茶は100グラム単位での購入でもあり、それまでなかなか新しいものにはトライできずにいました。ですがアドベントカレンダーだと毎日違ったティーバッグを試せるので、普段は手に取らないものの、実は好みだったという商品を探すことができます。実際2つほど気に入ったお茶を見つけることができました。
このように、アドベントカレンダーはいろいろな商品をひととおり試すことのできるチャンスともいえます。企業の戦略にすっかりのせられているのかもしれませんが、少なくとも私には新しい発見ができる良い機会でした。
有名なお店の商品でも新しい発見があるかもしれません
クリスマスまでのカウントダウンを楽しむ
地方に行くと、町の広場に住人が作った大きなアドベントカレンダーがあったり、大きな建物の窓にデコレーションをしてアドベントカレンダーのようにしたりしているところもあります。やはり元はキリスト教のものですから、素朴なアドベントカレンダーもいいなと思います。
アドベントカレンダーは、フランスだけでなく西ヨーロッパ各国で見られる習慣です。この時期にヨーロッパを訪問される際は、アドベントカレンダーでクリスマスまでのカウントダウンを楽しんでみてはいかがでしょうか。
執筆:Takashi