現役アーティストがパリでおすすめの美術館をご案内するシリーズ5回目は、無料で質の高い常設コレクションが観られる「パリ市立近代美術館」と、非西洋文明の美術を堪能できる「ケ・ブランリ美術館」です。その魅力についてご紹介します。
9)パリ市立近代美術館
パリ市には現在、近代美術館が2館あります。一つは本コラムでもすでに紹介したポンピドゥー・センター(国立近代美術館)。もう一つが今回ご紹介するパリ市立近代美術館(Musée d’Art moderne de Paris)です。
質の高いコレクション
美術館に入るとまず最初に目に飛び込んで来るのが、ラウル・デュフィ(Raoul Dufy)作の「電気の精(La Fée Électricité)」です。縦10メートル、横60メートルもある大作は圧巻の一言。画面内にはギリシャ神話の神々と一緒に、歴史的な発明家や科学者が描かれています。この作品は、パリ万博の際にデュフィが国から電気館の内装として依頼されたものです。
その他、フォービズムの巨匠マティスや抽象画のドローネー、エコール・ド・パリの代表画家モディリアーニや藤田嗣治の作品も展示されており、少数ながら質の高いコレクションが観られます。
常設展示は無料
当館を含め、パリ市が運営する美術館は常設展示であれば無料で見ることができます。こういった部分にも文化を尊重するフランスの姿勢を感じることができますよね。私はこの制度に大変お世話になりました。
10)ケ・ブランリ美術館
パリおすすめ美術館10選の最後にご紹介するのが、ケ・ブランリ美術館。正式名称は「Musée du quai Branly-Jacques Chirac」で、その名のとおり故ジャック・シラク元大統領が関わった、西洋文明以外の芸術を扱う美術館です。
民族芸術に造詣が深いシラク氏
シラク氏はもともとアジア・アフリカ・オセアニアなどの民族芸術に対する造詣が深く、日本美術愛好家としても有名です。その彼がパリ市長時代に原始美術の研究家ジャック・ケルシャシュと出会ったことから構想され、2006年に開館しました。
彼はプレ・オープンの席で「ケ・ブランリ美術館には、西洋文明がすべてといううぬぼれと他文明を過去の遺産だとする偏見を打ち砕く意志があります。人間と同じように、アートにも上下関係はないのです」と述べています。私はこの言葉に氏の強い信念を感じました。
見ごたえのある内容、ユニークな外観
館内はおもにアフリカ・アジア・オセアニア・アメリカ大陸の4つに分かれた構成で、各地域の一級品が揃って展示されています。何回か訪問しましたが、原始芸術が大好きな私にとって見応えのある内容でした。所蔵点数はなんと35万点だそうです。
外観のユニークさも魅力の一つです。建築家ジャン・ヌーベルによる「風景に溶け込む建物」というコンセプトをもとに、歩道と敷地は透明ガラス壁で仕切られています。またセーヌ川を望む側の壁面には苔やシダを密生させていて、私はすごく工夫されていると感じました。
敷地内には自然豊かな庭園もありますので、こちらもお見逃しのないように。
他にも見逃せない美術館がたくさん
今回ご紹介した二つの美術館はどちらもパリ市と縁があり、「パリおすすめ美術館」シリーズの最後を締めくくる上では最適ではないかと思います。
パリには他にも見逃せない美術館がたくさんあるので、機会があればまたご紹介します。それでは、Bonne Visite! Et à la prochaine!!
執筆 KEIJI
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