2023年1月31日(火)、フランス年金改革に反対する2回目の大規模ストが、本日フランス全国で行われ、朝から大幅な間引き運転や一部の駅が閉鎖されるなど各地で交通が乱れています。パリ市内のデモ行進は、本日14時より左岸のイタリー広場からスタートします。
フランス高速列車TGV、3分の2キャンセル
本日のTGVは、フランス北部路線で5本に2本、東部路線は2本に1本、アトラアンティック路線(西部および南西部)で4本に1本、南東路線が2本に1本、ローコストTGVが5本に2本の割合で運行しています。
急行のフランス地方路線TERは5本に1本しか運行しておらず、インターシティなど国際線も大幅に乱れています。
パリ地下鉄、またまた大幅な間引き、駅閉鎖
パリ郊外線、イル=ド=フランス(Île-de-France)を運行するRERはA線、B線は平均して3本に1本運行しますが、C、D、E線は10本に1本しか運行していません。
前回19日のストでも大幅にダイヤが乱れたパリ地下鉄RATPは、本日も大幅な間引き運転となり、無人運転の1番・14番線を除き3本に1本の割合で運行しています。
ピーク時間のみ開く駅もありますが、各路線毎に2〜5駅が終日閉鎖されています。
製油所・貯蔵所の従業員、7割以上がスト参加
組合側の発表によると、フランス最大のエネルギー企業トータルエネルギー(TotalEnergies)の従業員の75%がストに参加しています。
ローヌ地方Feyzin (Rhône) にある製油所ではその割合が8割に達し、北フランスにあるフランドル(Flandres)製油所ではスト参加率が100%、つまり全員がストに参加するとのことです。
幼稚園、小学校の先生の50%がストで学校閉鎖
19日のストの参加者率70%でしたが、今回も先生の半数がストに参加することになっています。パリ市内では100校以上の幼稚園、小学校が閉鎖されます。
政府、特別年金制度の抹消を審議、パリ地下鉄、フランス国立銀行など
今回の改革では、一般的な年金の受給開始年齢の引き上げ(62歳から64歳へ)のみならず、「特別制度」(légimes spéciaux)と呼ばれる優遇制度の終了も審議案に盛り込まれています。
特別制度が存在するのは旧国営もしくは半官半民の公共事業を行う企業がほとんどで、フランス国鉄・パリ地下鉄をはじめ、フランス国立銀行、また電気系(EDFなど)及び GDFなどのガス関係企業150社余りと多数存在しています。
特別制度は、制度ができた時代に平均寿命が短いとされた電力、ガス、鉄道などの企業に多く存在していましたが、現在の平均寿命は一般とほぼ変わりがありません。
これらの特別制度は現在一般の受給開始年齢62歳前、多くの場合60歳未満から年金をもらうことができ、例えばパリ地下鉄では現在50歳9ヶ月から可能です。
特別制度とは?何が問題?
フランスには37の年金制度があり、それらのうち15が特別制度に当たります。
特別制度と聞くと単に「早く年金をもらえて得している」感じがしますが、特別制度は元々は制度内でやりくりして運営することになっています。
年金の掛け金の個人負担も一般制度より割高ですが、企業側はそれ以上に高い掛け金を払い、さらに国の補助を受けているため優遇されていると言えます。
一般制度も同じですが、特別制度内で掛け金を払う人が、定年退職した人の年金を払うという仕組みになっています。
政府がこの制度のうちのいくつかを抹消しようとする理由は、払う人よりも受け取る人の数の割合が圧倒的に多く、制度が成り立たなくなっているからです。
SNCFの特別制度、払う人1人に対し受給者2人
例えばフランス国鉄の場合、2016年時点で現職の社員約14万人に対し、26万人、つまり社員1人当たりで2倍近い年金受給者がいるわけです。
ちなみに当時一般企業の平均値は現役社員1人に対し1.3人でしたので、この制度の維持がいかに困難になってきたかがわかります。
優遇制度は現在すでにこれらの企業に勤務する社員に対しては維持され、今年9月1日以降に採用された人から新しい制度の対象になることが予定されています。
意外なところに特別制度、パリ・オペラ座、コメディーフランセーズは維持
特別制度のうちパリ・オペラ座(Opéra de Paris)、コメディーフランセーズ(Comedie francaise)は今回の改革の対象になっていません。
パリオペラ座には約1,700人の正社員いますが、ダンサーの場合40歳になると年金を受給することができ、一般制度の満額が給与は75%ですが特別に80%で計算されます。
コメディーフランセーズには300人の正社員がいますが、以前は10年働くと給与の25%が死ぬまでもらえていました。
現在、舞台装置の担当は57歳、内勤の社員は62歳を待たなくてはなりませんが一般制度の受給年齢が変わっても、この制度は維持されます。
弁護士の年金制度、国の補助一切なし
弁護士の年金制度は制度内でのやりくりができており、国からの援助を一切受けていないことから特別制度ですらなく、今回の改革の対象にはなりません。
船員年金も変わらず、掛け金を25年払っていれば50歳で定年が可能です。
執筆:マダム・カトウ