フランスの移民・難民は激増したのか、2022年の統計発表

2023.01.27

フランス移民、難民2023年1月27日(金)、フランス内務省が26日に発表した移民統計によると、2022年に発給された滞在許可証の数は32万件で前年比17%増、難民申請は前年比で26%増加しています。一部の仏メディアで「難民が激増」と騒がれていますが、実際統計をみると本当に大幅に増加しているのでしょうか?

 

フランス滞在許可証発給数32万件、2019年超え ブレグジットで英国人も

2022年に申請されたフランスの滞在許可証の数は前年比で17%増え、発給数は320,330件とコロナ禍前の2019年を超えています。

ちなみに、この中には旧EU加盟国イギリス国籍の10,386件は含まれていません。

モロッコなど旧植民地国、中国など

滞在許可証の受給者を国籍別でみると、上位4カ国を旧植民地国出身者が占め、1位モロッコ(35,325)、2位アルジェリア(25,896)、3位チュニジア(17,412)4位コートジボワール(11,387)の順になり、続いて5位中国(9,708)となっています。

発給の3分の1は学生ビザ、「家族呼び寄せ」を超える

フランスに1年以上の予定で滞在する人に発給される滞在許可証のうち、学生ビザの発給数は前年対比で22.8%増え、滞在理由として初めて、すでに許可証を持っている人が母国にいる家族を呼び寄せる「家族呼び寄せビザ」を抜き1位になりました。

また、雇用契約による就労目的の数は前年より 40 %増えています。

 

難民申請は激増 !? 13万人

政治的、人道的な理由などで2022年にフランス難民保護局 (OFPRA)に登録された外国人の数は、130,933人で、昨年に比べ26%増えています。

激増したように見えるこの数字ですが、コロナ禍の20年、21年に数が大幅に落ち込んだことが大きく影響しています。

ちなみに2019年は138,420人でした。

昨年難民として正式に認定された人はわずか38,789人ですが、前年比8%増、コロナ禍前の2019年と比較しても20%増えています。

ウクライナ難民6万人、「いつか母国へ」

この数値にはロシア侵攻によりフランスに難民として来たウクライナ人65,833人は含まれておらず、統計上も「仮の数値」として把握されています。

ウクライナ難民のうち本格的にフランスへ難民申請した人はわずか2,187人にすぎず、ほとんどが戦争終結後の帰国を望んでいます。

タリバン復権のアフガニスタンから急増

難民申請が最も多い国籍は21年のタリバンの政権奪取により難民が急増したアフガニスタンで、昨年は22,570人と前年比40%増となっています。

次いでバングラデシュ、トルコなどが続いています。

特記すべきはアフリカのコートジボワール(-6,1 %)やナイジェリア(-12,7 %)国籍の難民申請が減っていることです。

 

ビザ発給数、コロナ禍で半減も長期ビザは2割増

フランス入国のために各国の領事館で発給される短期および長期ビザ(※)の申請数の合計は前年比では37%増え、2022年1年間で発給された数は170万件でした。

しかしながら、これは2019年の350万件の約半分にすぎず、コロナ禍が大きく影響したと言えます。

1年以内の長期滞在ビザ、経済的理由で増加

一方、1年以内の就労、商用、就学などに必要な長期滞在ビザは20年に落ち込んだ後、2021年より回復し、22年も前年比22%増と2019年の数よりも超えています。

長期ビザ申請者で最も多い国籍はインドで、実に16万人がこのビザで来仏しています。

続いて2位モロッコ(142,291)、3位アルジェリア(131,264)、4位トルコ(103,310)、5位中国(99,579)、6位サウジアラビア(91,758)、7位チュニジア(86,,636)、8位ロシア(68,645)、9位レバノン(56,844)、10位フィリピン(44 ,175)となっています。

 

不法滞在者への滞在許可証付与 8%増

不法滞在者の「正規化」(régularisation)は前年比で8%増え、これにより滞在許可証が付与された人は34,000人ほどでした。

正規化には様々な理由がありますが、最も多かったのは「不法労働者の正規化」、つまりすでに就労している人に与えるもので、件数は前年比29%増と大幅に伸びています。

フランスでいわゆる「ブラック」で雇われている人の数は推定250万人で、この中には副業や短期労働、失業中などのフランス人労働者の占める割合も多く、外国人の数は明らかになっていませんが、不法滞在者の弱みに漬け込んで安く雇う、長時間労働を強いる、有給を与えないといった雇用主がいます。

不法滞在者の正規化により、不法労働者が不当な扱いを免れることはもちろんのこと、すでに既成事実として仕事があることから、社会保障費用や所得税などの納税者になるという国としてのメリットもあります。

 

不法滞在者の強制送還、15%増

コロナ禍で激減した強制送還は大幅に増加しています。2022年は前年比13%増の10,091人の不法滞在者が国外に強制送還され、中には3,615人の犯罪者が含まれています。

フランス政府は犯罪者の強制送還を強化しており、その数は前年21年の1,834人のほぼ2倍に増えています。

 

フランス国籍の取得、1999年以来最低数

1999年以降、減少傾向にあるフランス国籍の取得ですが、昨年は78,000件と過去23年間で最低レベルになりました。

うち16,465人が婚姻により取得しています。

 

仏政府、人材不足の職種限定で新しいビザを検討

介護士など慢性的な人材不足の緩和を目指し、特定の職種に限定した新しいビザが検討されています。

執筆:マダム・カトウ

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