2023年1月20日(金)、年金改革法案に反対する昨日19日のデモは大規模なものとなり、パリ市内だけで40万人、フランス全土で100万人以上が動員されたと組合側は発表しています。今月31日に再びデモが呼びかけられていますが、そもそもこの改革は誰が対象で、何が変わるのでしょうか?
年金受給開始年齢、62歳から64歳に引き上げ、1961年4月生まれから対象
今月10日に発表された改革案によると、年金受給開始年齢が現行の62歳から64歳と2歳引き上げられます。
施行は今年の9月1日が予定されていますが、64歳に引き上げられるのは2030年で、それ以前は移行期間として生まれた年に応じて1年ごとに3ヶ月引き上げられます。
2023年に62歳になる人は受給開始年齢が62歳と3ヶ月、24年で62歳と6ヶ月、25年では62歳と9ヶ月というように加算されていきます。
段階的引き上げ、本格的には2030年から
年 対象者 年金受給開始年齢
2023年 1961年生まれ 62歳+3ヶ月
2024年 1962年生まれ 62歳+6ヶ月
2025年 1963年生まれ 62歳+9ヶ月
2026年 1964年生まれ 63歳
2027年 1965年生まれ 63歳+3ヶ月
2028年 1966年生まれ 63歳+6ヶ月
2029年 1967年生まれ 63歳+9ヶ月
2030年 1968年生まれ 64歳
年金改革で最も損するのは、1965年と66年生まれ?
新しい制度の対象になるのは、今年62歳になる1961年4月1日以降に生まれた人です。
61年組は3ヶ月ほど長く働くことになります。
こうして2030年には定年が64歳になり、この年に62歳になる1968年生まれの人は、2年長く64歳まで働き2032年に定年となります。
定年受給年齢、納付期間の両方引き上げのダブルパンチ
今回の改革で最も「損する」のは65年生まれと66年生まれになると言われています。
年金開始年齢の引き上げに加え、2027年には年金の満額が受け取れる納付期間が現在の42年間(出生年により168〜169四半期)から43年間になり最低172四半期、掛け金を納付することになります。
納付期間の延長は2014年のトゥレーヌ法により、2035年まで毎年3ヶ月ずつ行われることになっていました。
今回の改革で延長のスピードが一気に上がり、2027年から172四半期(43年間)に引き上げとなります。
2027年に62歳となる65年組は、年金受給年齢が63歳と3ヶ月と2年3ヶ月長く働くうえ、満額受給が172四半期となるためこちらも9ヶ月長く待つことになります。
66年組は、63歳と6ヶ月で受給開始となりますが、満額を受給したければやはり43年間掛け金を納付しなくてはなりません。
長期就労者の繰り上げ受給は可能
20歳未満で就労を開始した場合は「長期就労」(carrières longues)と呼ばれ、その対象者(20歳までに15ヶ月就労した人、納付期間など条件あり)は64歳を待たずに繰り上げ受給を開始することができます。
14歳から働くと58歳、15歳からで59歳となり、18歳から20歳までの間に働くと62歳となります。
以前は16歳までに開始した場合と20歳までという2つの枠しかありませんでしたが、これに18歳までという枠が追加され、条件が改善されました。
ここでも生まれた年と労働開始年齢により1年ほど余計に納付し損する人が出てしまいます。
フランス年金改革案 まとめ
年金受給開始年齢 64歳に
年金満額受給に必要な納付年数 43年(172四半期)
ただし、満期年齢は変わらず67歳(納付期間が43年に満たない場合の満額受給開始年齢)
最低年金額の設置 最低賃金の85% 約1.200ユーロ
60歳受給開始対象者の拡大、現行の16歳、20歳に18歳枠を追加
重労働認定者の定義を拡大
優遇年金制度の段階的廃止(パリ地下鉄など)
1月19日、改革反対デモにフランス全国で120万人、スト31日に再び
年金改革反対デモは労働組合側の予告通り大規模なものとなりました。パリ市内でも多くの人がデモ行進に参加し、その数は40万人と言われています。
組合側は今月31日にも大規模なストと反対デモを予告しています。
執筆:マダム・カトウ