8月2日(火)、7月のフランスのインフレ率は6.1%上昇し、5.8%だった6月の記録をまた更新したと、フランス経済統計研究所(インセ:Insee)は発表しました。この数値は1980年代半ば以来の高値となっています。フランス政府はガソリン1リットルあたりの補助額を、9月から大幅に引き上げ1リットルあたり30セント(約40円/1ユーロ=約135.5円)にすると発表しています。
物価上昇、すべて値上がりもピークは越えた?
フランスの消費者物価は、サービス業で3.9%、工業製品が2.9%、過去1年間で値上がりしています。中でも最も値上がりが激しいのは食料品で、この1年で6.7%とインフレ率を超える上昇ぶりです。
電気代の上昇に一服感
電気代などのエネルギー価格も29%上昇していますが、原油価格が需要減で下落したことを反映し、上昇率は一時に比べ緩やかになっています。
消費者物価指数も7月の上昇率は0.3 %と、0.7%だった6月に比べ小幅になっていますが、これは6月後半から7月にかけて、約一ヶ月間続いたのソルド(バーゲンセール)による割引の影響によるものです。
ガソリン代補助、30セントに増額でインフレ抑制に貢献
経済専門家らは、フランスの消費者物価上昇は現在ピークを迎えており、これ以上の上昇はないとみているようです。
アリアンス・トレード(Allianz Trade)社のエコノミスト、アナ・ボアタ(Ana Boata)氏も、原油価格の動向などの国際情勢を加味し、また現在国民議会で審議されている様々な「緊急購買力対策」が可決されれば「9月に7%に達するのは回避できる」と述べています。
フランスのインフレ率、ユーロ圏平均よりマシ
すでに施行されている年末までの一般家庭向け電気・ガス料金の据え置き、および1リットルあたり18セント(約24円)のガソリン代補助の2つの支援策だけで、フランスのインフレ率は、他のユーロ圏の国々に比べ(平均8.9%)低く抑えられています。
インフレ追加対策、企業に代休の買取許可延長など、国民議会で今週末決定
エネルギー以外の追加対策として、期限付きですでに施行されている対策の延長が審議されています。その中には、残業手当への非課税(今年末まで)や代休(注)の買取り(来年末まで)などがあります。
これらの有効期限を延長するか、もしくは期限なしにすることが争点となります。
中小企業に家賃値上げ抑制措置
企業への対策として、社員250人未満の中小企業や商店の家賃値上げ率を、3.5%に抑える一時的な上限設定、および残業手当にかかる社会保障会社負担分の免除などの継続が審議されていました。
これらはすでに先週末フランスの上院に当たるセナ(”Sénat”=元老院)で承認されています。
一方、国民議会の議論の難航が予想される案件として、マクロン大統領再選の公約にもあった、国営テレビの受信料の廃止やインフレで支出が増えた自治体への追加予算などが上げられます。
(注)労働時間が週35時間のフランスでは、35時間を超える就業に対しては代休を与えるのが義務。通常、買取不可で休みとして与えなければならない。
執筆:マダム・カトウ