2023年3月14日(火)、年金改革に反対する6回目のストは現在も一部続いています。年金受給開始年齢の2年引き上げを含む「非常に不人気」なこの法案は12日に元老院(セナ:Sénat)を通過、16日(木)に国会で最終投票が行われます。長引くストは動員数に陰りが見えているものの、国会決議投票の前日15日(水)に再び大規模ストが予定されています。
15日、フランス国鉄は大幅な間引き、パリ地下鉄ほぼ正常
フランス交通相クレモン・ボーヌ(Clément Beaune)はテレビのインタビューに答え、「15日のストは大規模なものではない」とし、パリ地下鉄RATPに関しては、一部の路線で乱れる可能性はあるものの「ほぼ正常どおり」だと発言しています。
一方、パリと郊外を結ぶRER線の間引きは本日14日も続いており、おおむね3本に2本の運行が、15日はさらに間引きされる予想です。
※パリ、シャルル・ド・ゴール空港(Aéroport CDG)方面行きRER(B)を含む、RERの運行情報はこちら
フランス国鉄、本日も3本に2本
フランス国鉄SNCFは本日も間引き運転を続けていますが、明日はさらに運行本数が減ると予想されます。
現在、TGV(Inoui、Ouigoとも)5本に3本、地方を走る急行TERは2本に1本、国際線急行インターシティーは3本に1本のみ運行、夜行は全てキャンセルになっています。
空港はオルリー空港のみ、20%がキャンセル
管制塔のストによる影響は前回よりも大幅に少なく、今回はオルリー空港のみで、主に国内線を対象に約20%のフライトがキャンセルになる模様です。
日本行きのフライトはパリのド・ゴール空港発着のため、今回のストのキャンセル対象にはなっていません。
続くごみ収集職員のスト、5,600トンのゴミが未回収
先週よりパリ23区中、約10の区でパリ市ゴミ収集職員のストが続いています。そのため、これらの地区ではゴミが山積みになっており、悪臭を放っています。
パリのみならず、パリ郊外の一部の都市や西フランス、人口30万人のナント(Nantes)市、北フランス、人口17万人のル・アーブル(Havre)市などでも歩道に積み上がったゴミが問題になっています。
そのため、ナント市では住民にゴミを出さないよう呼びかけています。
パリ市では行き場を失ったゴミの山が飲食店の営業にも影響し始めていますが、イダルゴ市長(Anne Hidalgo)はこれに関して「なんの対策も取っていない」と非難の声も上がっています。
国会最終決議投票も難航か?カギは右派保守に
年金改革法案はセナで可決され、今週16日の国会で最終決議投票が行われます。
マクロン大統領の与党ルネッサンス党(Renaissance)は、2022年の選挙以来、国会で議席の絶対過半数を持っておらず、今回の改正法案に猛反対する野党が多数を占める中、法案可決のカギを握るのは年金改正を支持する右派保守の共和党(Les Républicains)だと言われています。
実際、法案が第一回投票で可決した上院に当たるセナは共和党員が過半数を占めています。
現在、フランスの国民議会(下院)には573議席あり、絶対過半数は287議席に決められています。
中道左派からなる与党連合(ルネッサンス党、モデム(MoDem)党、 オリゾン(Horizons)党)だけで250席を持っていますが、可決するには少なくとも37票を野党から獲得する必要があります。
共和党筋の情報では、議席を持っている党員の30から35人が投票すると言われており、理屈からいうと可決の可能性は高いとも言えますが、実際にこれらの議員が賛成投票するかどうかは不明です。
また与党内、与党連合内でも今回の年金法案が「不公平だ」といった理由で反対票を投じる、棄権するといった発言をする議員もおり、16日の国会で可決する見通しは全く立っていません。
15日に調停員会が妥協案を発表か?
投票の前日、15日にはセナ(元老院)と国民議会の両院からそれぞれ7人ずつ、14人の議員で構成される調停委員会(CMP : commission mixte paritaire)が法案を審議します。
妥協案が合意に達した場合、16日にセナで再投票され、同日国民議会で最終投票が行われます。そのため、新たな妥協案などについては調停委員会の発表を待って判断するという議員もいます。
国民の猛反対に遭い、長引くストを引き起こしている年金改革の行方はまだ不透明なままです。
執筆:マダム・カトウ