2024年5月21日(火)、パリ五輪開催期間中の「甚大なる努力」と引き換えに、一部の公共サービス従事者にボーナスが支給されます。警察官、パリ地下鉄(RATP)などすでに交渉が終わっていますが、パリ郊外線(RER)の運転士などは明日予定されている交渉を前にストを行いダイヤが大幅に乱れています。
夏にバカンス行かないで!でボーナス
フランス人にとって7月~8月に3週間~1か月、夏のバカンスを取ることは「聖域」に近いものがあります。業種ごとに結ばれる労働協定でも、有給休暇についてこと細かい決まりがあり、企業はそのルールを守る必要があります。
たとえば、年間約5週間ある有給のうち最低2週間は7月~8月の「ハイシーズン」に出す事、学校の休み期間は子供がいる人が優先などの決め事があります。
ただし、有給は「労働者の好きな時に必ず出さなければならない」という縛りはなく、会社都合で却下したり別の日にしてもらうことは、机上の論理では可能です。
それでも夏のバカンスのピークにあたる7月末から8月中旬までの期間に、多くの社員をバカンスに行かせないのは、例外中の例外といえます。
ボーナス要求、連鎖反応
ボーナスが支給される理由はバカンス時期の変更だけではありません。パリ地下鉄、RERは期間中15%の増便を予定、おびただしい数の観戦客で治安維持関係者は負担が増えます。
警察官の期間中のボーナスが1,900ユーロ(約321,000円/1ユーロ=約169円)と公表されると、最近ではパリ市付けのごみ取集者も同額のボーナスを要求するストを行っています。
フランス国鉄パリ郊外線スト、大幅間引き
パリ郊外線RERのD線は本日、5本に1本のみ、しかも通勤通学のラッシュアワー(6時半~9時半、16時~20時)しか運行していません。
E線も5本に1本、10時〜17時は運行がありません。そのほかパリから地方へ向かうトランシリアンとよばれる路線の一部が1時間に1本など大幅に間引きされています。
パリ郊外線、路線によりストにならないワケ
今回のストは、フランス国鉄SNCFの一部の組合によるものですが、パリから郊外へ向かうRER線は、路線により運営がSNCFによるものと、パリ地下鉄公団(RATP)によるものに分かれています。
パリ地下鉄のボーナス交渉はすでに終了しており、期間中平均して一人あたり1000ユーロ(約169,000円)が支給されます。
1日の利用者が100万人を超えるRERのA線は、RATPが運行しているためストを免れています。一方、ポワシー(Poissy)行きはSNCF管轄のため2本に1本の間引き運転になっています。
北はド・ゴール(Charles de Gaulle)空港、南はオルリー(Orly)空港と重要な路線であるB線ですが、こちらもややこしいことに、北方面はSNCF、南方面はRATP管轄のため今回、北方面行は2本に1本、南方面は3本に2本の運行です。
組合、交渉前にストでボーナス増額狙い
明日の話し合いが決定的となるSNCFのボーナス交渉ですが、会社側は7月22日~9月8日までの期間中、就労日1日あたり税引き前で50ユーロ(約8,500円)のボーナスを予定しています。
組合側は金額をさらに上げるため最大限のプレッシャーをかけていますが、交渉が決裂するとさらなるストの可能性もあります。
公共交通機関の乱れ、パリ市民の五輪ムード盛り下げ
五輪開催前の地下鉄工事によるダイヤの乱れ、一部の駅の閉鎖や不通、さらに追い打ちをかけるようなストで辟易とするパリ市民、「この状態で何十万人も人が来たらどうなる?」と、開催地でムードが今一つ盛り上がらない要因の一つとなっているようです。
執筆:マダム・カトウ