パリ五輪の交通 目玉のグラン・パリ・エクスプレス間に合わず

2023.08.04

2023年8月4日(金)、来年のパリ五輪まで1年を切った市内で、現在公共交通機関のシミュレーションが行われています。パリ五輪委員会は当初、前例のない「CO2を増やさない大会」を宣言し、100%公共交通機関で競技会場へ移動できるという野心的な計画を立てていましたが、開催まで1年を切った現在、多くの計画は間に合わず、五輪で増える数十万人の観客とスタッフ、およびバカンスに行かないパリ市民の足をどうするかが問題になっています。

パリ地下鉄15%増便で足りるのか?

パリ地下鉄公団(RATP)は、大会期間中平常時の夏より15%増便すると発表していますが、夏のバカンスで運転士が減る中、増便による特別手当目当てにどのぐらいの社員が確保できるかはわかりません。

当初の計画では、五輪期間中「楽で安全かつ全ての人に対応できる交通機関を用意する」という原則のもと、入場券所持者の公共交通機関の利用が無料とされていましたが、結局、競技場などへのアクセスを含む特別なパスが発行され、通常より割高で販売されることになりました。

 

新路線4本、五輪に間に合わず、選手村への交通に影響

五輪交通の目玉として謳われ、大会競技場付近の駅を含む68駅でパリの郊外を一周するグラン・パリ・エクスプレス(Grand Paris Express)として、15、16、17、18号線が新たに追加されることになっていました。

選手村と競技場を結ぶ路線もある中、16号線と17号線は2026年秋開通予定など、来年のオリンピックまでにオープンする路線はありません。

五輪開催誘致のため2015年から2017年にかけて作られた計画には「インフラ強化でパリ市民に多大な恩恵をもたらす」と記載され、いくつかの路線の延長も含まれていましたが、今のところ、14号線、パリ北部のオーベルヴィリエ(Aubervilliers)と南部を結ぶ12号線が5年遅れでようやく完成したのみです。

空港からの直通、CDGエクスプレスも4年遅れ

また今年開通予定だった、シャルル・ド・ゴール空港(Charles de Gaulle)とパリ市内の間28kmを20分でつなぐ、CDGエクスプレス(CDG Express)の工事は遅れに遅れ、早くても2027年にしか完成しません。

欧州2番目に混雑のRER B線、トラブル多発も車両全面改装はギブアップ

パリの北にあるド・ゴール空港および南にあるオルリー空港Orlyと市内を結ぶ唯一の公共交通機関、郊外電車RER B線は老朽化が激しく、数年前から頻繁に遅延を繰り返しています。

アルストム社(Alstom)に3年前に依頼した車両の全面改装は間に合わず、エアコンやビデオ監視システム装着は断念され、簡単な修理とお化粧直し程度にとどめられます。

 

車なし五輪、駐車場増設はなし…

五輪誘致の際、パリの優位性の中に郊外と市内を結ぶ約1,150kmの「充実した高速道路、環状線などの既存インフラ」が謳われ、訪れた人は100%公共交通機関や自転車で移動できる大会にすることが目標とされていました。

ハイブリッド車で知られるトヨタ自動車がスポンサーとなり「大会オフィシャル交通」として認定されている一方で、郊外にある競技場への新たな駐車場の増設などは「CO2排出を抑える」ため当初から予定されていません。

そのため、公共交通機関の不足が明らかになってきた今も、車へのシフトは簡単ではありません。

エコな移動手段である、ヴェリブ(Vélib)と呼ばれるパリ市が提供する自転車貸しだしサービスは3,000台増やすことが予定されていますが、十分とは言い難いようです。

 

ヴェルサイユ宮殿、ローランギャロス、車なしでどうする?

五輪会場の中でも、サッカー場のパルク・デ・プランス(Parc des Princes)、テニス場のローラン=ギャロス(Roland-Garros)、乗馬の競技場になるヴェルサイユ宮殿(château de Versailles)および カヌーやカヤックの競技場になるヴェールシュールマルヌの水上競技場(base nautique de Vaires-sur-Marne)は、アクセスできる公共交通機関が限られており、場所によってはかなり不便なところにあります。

駅のホーム、増便に限界

しかも、電車の駅のホームが小さすぎて、おびただしい数の観戦客が予想されるピーク時間帯には耐えられず、かといって増便にも限りがあります。

五輪の交通対策部  (IDFM)は、最短で行ける交通機関ではなく、例えばヴェルサイユなら新しくできる路面電車T 12の駅から馬術競技場までバスを用意するなど、遠回りさせる方法も検討しています。

問題は、ピストン輸送に使う数十台のバスをどこに駐車させるかですが、いずれにせよ一度に運べる人数からすると、列車に勝るものはありません。

しかも、利用者数は競技の種類や時間帯によりまちまちで、代替え交通機関のオーガナイズは非常に複雑です。

こういったことは、立候補した時に作った書類にはどこにも書かれておらず、実際に五輪を開催するにあたり、このような細部が大きな課題であることがよくわかります。

執筆:マダム・カトウ

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