フランス レストラン、美容室「No-Show」対策に乗り出す

2023.08.08

フランスのレストランのノーショー、対策に乗り出す

2023年8月8日(火)、レストランや美容院、エステサロンなどのオンライン予約の「 No-Show(ノーショー)」(無断キャンセル)の数が多すぎて、収益に影響を及ぼす事態になってきています。そのため、対策としてクレジットカード番号を事前に預かる店が増えています。

 

コロナで激増の「No-Show」、売り上げ週1000ユーロ遺失

「無断キャンセルはこれまでもあったが、2020年のロックダウンから加速した」、パリ9区にあるレストラン「ビアン・エルヴェ」(Bien élevé)のオーナー、アーチュール・ルコント(Arthur Lecomte)氏によると、この傾向は夏になると一層増え、特に週末に多いようです。

この店で毎週無断キャンセルされる席は20席あまり、売り上げにして約1,000ユーロ(約156,000円/1ユーロ=156円)が失われています。

これは同氏の店に限った問題ではなく、ミシュランの星付きを含めレストラン業界の「最大の悩み」になっています。

損失は仕入れや運営にも

予約したのに来ない客がいると、売り上げに響くだけでなく、仕入れた材料が無駄になったり、予約の数でスタッフを配備したりする店の運営全体にも影響がおよびます。

パリ6区にあるイタリアンレストラン「カーサ・ビーニ」(Casa Bini)のオーナー、マッティア・タイウッティ(Mattia Taiuti)氏は「コロナ後に飲食店がどれだけ大変だったかを考えると、泣き寝入りできない」と対策に踏み出しました。

 

No-Show 30%、予約時にカード番号を

結局、タイウッティ氏は予約時にクレジットカード番号を預かることにしました。

これまでこういった厳しい対策は、顧客に対し「フレンドリーじゃない」とためらっていましたが、日によってディナーの予約客の3割が無断キャンセルになるなど、このままでは「もうやっていけない」と導入を決意しました。

カード番号を聞くようになった効果はてきめん、No-Showのお客さんの数はそれまでの3分の1に激減しています。

ホテルレストラン業界連盟(UMIH Restauration)のレストラン部門の会長フランク・ショメス(Franck Chaumès)氏は、こういったレストランの自己防衛対策を歓迎しています。

顧客の反応については、「ホテルでは予約時にカード番号やデポジットをもらい、No-Showの際はキャンセル料を徴収するのが当たり前になっている」のに、「レストランで同じことを要求されるとなぜショックを受けるんでしょうか?」と述べています。

つまり、多くのレストランが予約時にカード情報を預かる仕組みにすれば、「当たり前」なこととして誰も疑問に思わなくなる、というわけです。

 

キャンセル料も設定できる、プラットフォームが普及

こういったレストランの悩みを解消すべく登場したのが「ゼンシェフ」(Zenchef)などプラットフォームビジネスです。

現在、同社のシステムは欧州など15カ国、7,000件のレストランに利用されています。

フランスでは、大手飲食チェーン、ベルトラングループ(Groupe Bertrand)のデルアルテ(Del Arte)、ラ・クリエ(La Criée)などがすでに導入しています。

利用者はテーブル予約時にカード番号を入力し、間際のキャンセルや当日のNo-Showの際、あらかじめレストラン側が設定したキャンセル料を徴収されるという簡単な仕組みです。

キャンセル料はレストランによりまちまちですが、大抵店の料理の価格帯に比例しているようです。

カーサ・ビーニでは、20ユーロ(約3,000円)に設定していますが、オーナーは「スカンジナビアの国では予約時に食事代全額を前払いさせるレストランもあるが、法外なキャンセル料を取って儲けるのが目的ではない」と説明しています。

システムの利用には年間2,000ユーロ(約312,000円)ほどの利用料が発生します。

SNSで発信、お客さんの「常識」に期待、ペナルティは慎重に

一方、複数のレストランを持つルコント氏は、予約時にカード番号をもらうのは2店舗に限っており、さらに6人以上のテーブル予約のみに絞るなど、より慎重な姿勢を見せています。

理由については。SNSでの発信でNo-Showが徐々に減っていることと、やはり「客足への影響は皆無ではない」と信じているから、とコメントしています。

 

美容業界もNo-Show対策に乗り出す

無断キャンセルに悩むのは飲食業界だけではありません。美容院やエステサロンも対策に頭を抱えています。

コロナ禍でオンライン予約が普及し、気軽に予約できるのが当たり前になったことで、逆に無断キャンセルの問題が浮上してきました。

美容業界のオンライン予約システム「プラニティー」(Planity)によると、オンライン予約に料金全額もしくは一部を支払う決済システムを導入した店では、No-Showが半分に減っています。

しかしながら、固定の使用料が発生することもあり、導入は価格帯の高いエステサロンなどが主流で、一般的な美容院ではまだあまり普及していないのが現状のようです。

 

非常識、無責任が横行?する時代、追い風のプラットフォーム

美容師連盟会長のクリストフ・ドレ(Christophe Doré)氏は、No-Show増加の傾向はオンライン予約に限ったことではなく電話予約でも同じで、人々は以前より「無責任になったのか?」と首を傾げています。

こういった非常識で売り上げが減る業界がある一方、プラニティーは会社創設わずか4年でフランスの美容業界プラットフォームのシェア75%を獲得、収益管理機能も兼ね備えたこのシステムで次はドイツ市場に参入します。

レストラン予約プラットフォーム、ゼンシェフも巨大な資本を獲得し、欧州全体へと市場を拡大しています。

執筆:マダム・カトウ

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