7月22日(金)、現在開催中のツール・ド・フランスは24日、男子がパリ、シャンゼリゼ大通りでフィニッシュを迎えますが、この日、実に20年ぶりの復活となる女子のレース「ツール・ド・フランス・ファム」(”Tour de France Femmes”)がスタートします。女子大会のディレクターにはフランスの元チャンピオン、マリオン・ルス(Marion Rousse)が就任しています。
ツール・ド・フランス・ファム、本格的な女子プロスポーツとして再スタート
サッカーやラグビーが女性のスポーツとしても市民権を得る中、男子限定だった自転車ロードレース、ツール・ド・フランスもついに本格的な女子プロ大会としてスタートします。
ツール・ド・フランス(”Tour de France”)(男子)の主催者であるツール・ド・フランス社は、1984年に男子と同じ日程とコースで女子部門も開催し、1989年に「経済的な理由」で中止されるまで続きました。
1990年に別の日程で「ツール・ド・フランス」の名称を使わず再スタートしましたが、93年にこちらも終了しています。
その後も他の主催者が手を変え品を変え女子のレースの開催を行なっていますが、「ツール・ド・フランス」の名称を使用することはできないため盛り上がりにも欠け、開催の発表後にキャンセルされることもしばしばでした。
女子のレース日程8日間、男子の3分の1のワケ
23日間で21ステージ、約3,500kmを走る男子と違い、2022年版のツール・ド・フランス女子部門は8日間、パリエッフェル塔からアルザス地方の間の8ステージ、約1,033kmを走ります。
ツール・ド・フランス・ファムのディレクターに就任した、フランスの自転車レース元チャンピオン、弱冠30歳のマリオン・ルス氏は、男子の3分の1の日程になった事について、「女子が体力的に男子と同じコースを走ることが困難なわけはありません」としています。
現にイタリアですでに開催されているツールドイタリーの女子部門は10ステージ、10日間の日程になっています。
まだまだ少ない女子自転車ロードレーサー
女子のレースが男子より短い理由の一つとして、現状、女子のレーサーの人数は男子に比べて圧倒的に少ないことが挙げられます。
男子は1チーム30人以上のレーサーがいますが、女子は10人程度にとどまります。
そのため男子のように3週間もの日程を組むと、チームの全ての選手をツール・ド・フランスだけに出場させる事になり、他の大会に出場させる選手がいなくなってしまいます。
まずは「長続き」する大会に
大会の「復活」を「大変誇りに思う」とコメントするルス氏は、女子大会が8日間に限定されてしまうことはなく、「今後徐々に長くなっていく可能性がある」と述べています。
とはいえ、まずは小さく始め、「収益をあげて長続きする大会にすること」が当面の目標です。ちなみに今大会では、自転車のバーチャルトレーニングアプリZwift社がスポンサーになっています。
ツール・ド・フランスの自転車レーサーが女子の夢になる?
ツール・ド・フランスを道路脇で応援する小さな女の子が、「将来あの選手のようになりたい」と女子チャンピオンに憧れて自分も自転車レーサーになる—今後こんなことがどんどん起こっていけば、女子レーサーの総数も増え選手の層が厚くなっていくでしょう。
現役時代にツール・ド・フランス女子部門がなかったため、自分が目標にしたのはロビー・マッコーエン(Robbie McEwen)というオーストラリア人の男子選手だったというルス氏は、これでようやく「女性選手を目標にすることができる」ことを誇りの思っています。
自転車ロードレースといえばツール・ド・フランス、自転車のロードレーサーにとってサッカーW杯のような「憧れの大会」ができれば、女子も今後盛り上がっていくと思われます。
男子レースと肩を並べる人気のロードレースに
ツール・ド・フランスの女子大会の復活は、女子自転車ロードレーサーにとって大きな意義があります。
それにとどまらず、元フランス女子チャンピオンは、大会としても「男子レースのワンランク下」ではなく、兄貴分のツール・ド・フランスの「4週間目のレース」として大きな盛り上がりを見せることを期待しています。
執筆:マダム・カトウ