時代に逆行? フランスでじわじわ増える「スローレジ」

2022.02.01

フランスで増え始めた「スローレジ」2月1日(火)、「より早く」が当たり前、もはやスマホ時代のスーパー各社がオンラインや宅配でしのぎを削る一方、時代の流れと逆行するかのように「店員さんとゆっくりおしゃべりできる」スローなレジがフランスのスーパーで登場し、今年に入り導入するスーパーが増えています。

 

「ブラ・ブラ・レジ」でレジ係とおしゃべり

フランス北西部の大都市ナント(Nantes)から約400キロ、ロワール=アトランティック地方(Loire-Atlantique)のラモンターニュ(La Montagne)にある大型スーパー、イーペーU(Hyper U)のレジでは、店員が

「奥さん、今日はご機嫌いかが?」と買い物にきた白髪のマダムに話しかけます。

フランスのスーパーではよく見かけるありふれた光景ですが、このレジ係は単に社交辞令で挨拶している訳ではありません。

「お客様と会話する」というミッションが彼らの業務にちゃんと含まれているのです。

 

「スローレジ」のコンセプト、フランス中に

このスローなレジのコンセプトはオランダで始まり、2年前、フランスでは大手スーパーチェーン「イーパーU」Hyper Uが初めて導入し「ブラ・ブラ・レジ」と名付けました。

「ブラブラ」(”Bla, bla”)はフランス語の口語で、日本語でいうと「ベラベラ」喋ることを意味します。

つまり、ブラ・ブラ・レジでは「急いでいない」お客さんがレジ係とゆっくりおしゃべりを楽しむことができるのです。

競争の激しいスーパー業界はあの手この手で顧客の囲い込みを試みていますが、その一環としてこのスローレジが生まれました。

かつて商店は単に商品を購入する場だけでなく、店員や他のお客さんと交流する「社交の場」でもありました。

「当時の小売店の店員と顧客の関係を思い出してもらおうとこのコンセプトは生まれた」とパリ南西約90kmのシャルトル(Chartres)にある店舗で導入を発表した別の大手スーパーチェーン、カルフール(Carrefour)の広報は説明しています。

ベテランのレジ係が「相手に合わせて」会話

フランスでのスローレジ一号店となったイーぺーUラ・モンテーニュ店で働くベテランレジ係のロゼン(Rozenn)さんは、ピッピッと手際よく商品をスキャンしながら「奥さん、腰の具合はどうですか?」と年配のマダム客に話しかけます。

持参した袋に商品を入れるのに手間取るマダムは「あまりよくないわ」と言った後、お天気の話をし始めました。

ロゼンさんによると、会話の内容は主に健康やお天気、家族の話、良い出来事、嫌な出来事などです。彼女はレジ係12年の経験から相手を見て何気ない優しい言葉をかけ、返事もきちんと聞いて受け答えします。

「先週の金曜は常連のおばあちゃんと20分も話しました。もちろん彼女の後ろには誰もいませんでしたが」と、どのぐらいの時間話すかは店の混雑状況に合わせています。

また会話したいかどうかは「お客さん次第」なので、相手構わず長話をすることはありません。

 

どんどん「非人間化」する小売業に一矢

現在、フランスのスーパーでは効率化を追求した自動レジが設置されるのが当たり前になっています。

有人レジは一台につき店員1人必要なのに対し、自動レジでは5〜6台につき1人の店員が、トラブル対応のために待機しているだけです。このようにしてスーパーはレジ係の人数を抑えることができ、一刻も早く会計を終わらせたい顧客のニーズに応えようとしています。

お一人様や高齢者をターゲットに

「当店では急ぐ人は自動レジで、ゆっくりしたい人は『スローレジ』で店員とおしゃべりしながら会計をすることができます。一人暮らしの人や高齢者のお客様にとって、もしかしたらスーパーのレジ係との会話がその日唯一の会話かもしれません」と、イーぺーUで顧客満足を担当するレジス・デフォンテーヌ(Régis Défontaine)氏はコメントしています。

また、「スローレジ」での客の流れが通常のレジと比べてどのぐらい遅いかについては「計測していない」とのことです。

なぜなら「お客様にご満足いただくことが収益性より優先だから」だそうです。

執筆:マダム・カトウ

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