5日(火)、EU(欧州連合)の欧州司法裁判所(仏表記:La Cour de justice de l’Union européenne、英表記:Court of Justice of the European Union)が、EUに加盟している国は、同性婚を認めていない国を含め、EU市民と結婚した同性の配偶者には、国籍を問わず居住権を付与しなければならない、との判決を下しました。
EU加盟国で同性婚を認めている国
Eu加盟国全28カ国の内、同性婚を認めているのは、オランダ(2000)、ベルギー(2001)、スペイン(2005)、スウェーデン(2009)、ポルトガル(2010)、デンマーク(2012)、フランス(2013)、イギリス(2013)、ルクセンブルク(2014)、フィンランド(2014)、アイルランド(2015)、マルタ(2017)、ドイツ(2017)の13カ国です。(数字は同性婚法が成立した年)
また、同性婚とほぼ同等の、もしくはそれに準ずる権利を有する(国によって基準は違う)パートナーシップ制度がある国は、イタリア(2004)、スロベニア(2005)、チェコ(2006)、ハンガリー(2009)、オーストリア(2010)、クロアチア(2014)、キプロス(2015)、ギリシャ(2015)、エストニア(2016)などがあります。(数字はパートナーシップ制度が成立した年)
この内、スロベニアは2015年に同性婚法が成立していますが、同年国民投票によって否決されています。
EU加盟国で同性婚・パートナーシップ制度共に認めていない国
同性婚、パートナーシップ制度共に認めていないのは、ラトビア、ルーマニア、ブルガリア、リトアニア、スロバキア、ポーランドの、保守的な中・東欧地域の6カ国です。
これらの国では、EU市民の同性パートナーであっても「配偶者」もしくは「正式なパートナー」とはみなされないため、3ヵ月を超える滞在をすることはできません。
欧州司法裁判所は「性中立」の考えを尊重
今回、欧州司法裁判所に訴えを起こしたのは、ルーマニア人とアメリカ人のカップルです。二人は2010年にベルギーの首都ブリュッセル(Bruxelles)で結婚をしましたが、同性婚が認められていないルーマニアでは、パートナーのアメリカ人男性の居住権が認められませんでした。
これに対し欧州司法裁判所は、「EU市民とその配偶者はEU圏内ではどこでも居住する権利を有する、またその移動を妨げることはできない」という移動の自由を定めたEU法の原則に基づき、「配偶者という言葉の概念は、性的に中立の立場であり、同性を含む、すべてのEU市民の配偶者に当てはまる」との見解を示しました。
これは、同性婚を認めていない国であっても、EU市民の配偶者であれば居住権を付与しなければならないことを示しています。
EUの理念か各国のアイデンティティか
裁判はルーマニアの裁判所に差し戻され、ルーマニアの司法の下で再び審議されます。
今回の判決は 、EU法の原則に基づき下された判決で、EU司法裁判所は「国民のアイデンティティを脅かしたり、加盟国の秩序を乱すものではない」とする一方、「同性婚を認めないことはEU加盟国内の移動の自由の権利を妨げる可能性が高い」とも述べています。これは、EU加盟国各国の結婚制度に対して影響を与えることは避けられません。
これに対しルーマニア政府は現在の段階ではコメントは発表していませんが、保守的な中・東欧諸国の反発は免れないと思われます。
中・東欧諸国では最近まで同性愛は犯罪だった
ルーマニアを含む中・東欧諸国では、90年台半ばまで、同性間の性交渉は犯罪とみなされていた国が多く、現在でも同性愛に対して根強い反発が残っています。現在ルーマニアでは、同性愛者に対する差別は違法とされていますが、現在でも偏見や差別が多く残っているのが現状です。
訴えを起こしたルーマニア人とアメリカ人のカップルは現在アメリカのニューヨークで生活を送っていて、ルーマニアに戻る予定はないとのことです。
執筆:Daisuke