フランス  インフレで購買力0.8%後退 貯金の取り崩しも

2022.06.10

フランス インフレで今年の購買力0.8%低下

6月10日(金)、「フランス人の購買力は今年0.8%後退する」、フランス景気観察局(OFCE:Observatoire français des conjonctures économiques)がこのような予測を9日に発表しました。

 

フランスのインフレ率4.9%、経済成長率2.4%

OFCE、フランス景気観察局は、今年一年間のインフレ率は4.9%、経済成長率はわずか2.4%となり、年間購買力は0.8%後退すると見ています。インフレになると家計は支出を抑え、引き締めに入ります。

フランス人の消費は今年の第一四半期(1月〜3月)で、すでに1.5%後退しています。

コロナ禍で貯まった膨大な貯蓄

コロナ禍で消費を控えたためフランス人の貯蓄は膨らんでおり、今年の貯蓄率は16.7%に達すると予想されてます。

OFCEで予測課所属のマチュー・プラーヌ(Mathieu Plane)氏は、インフレが急激に加速すると、そのショックを和らげるために家計は「いきなり消費を止めるのではなく、まずは貯蓄を削って埋め合わせる」とコメントしています。

コロナ禍の2020年から今まで貯蓄を大幅に増やしたのはインフレの影響が少ない富裕層で、貯蓄も少ない低所得層は支出を抑えざるを得ない状況にあります。

またウクライナ侵攻からの「地政学的リスク」も家計の心理に大きく影響しており、今後の見通しが立たない事から消費に慎重になっています。

それでもOFCEは今年1年間、フランス人の消費は前年対比では2.5%増えると予測しています。

 

フランス政府のインフレ対策一定の効果も、購買力後退は変わらず

昨日発表された予測の算出には、2021年末に政府が行ったインフレ対策の補助金もすでに含まれています。

2期目に入ったマクロン大統領が公約で掲げ、6月の議会議員選挙後に施行予定を担っているインフレ対策:

・公的年金や生活保護など4%引き上げ
・公務員の2%昇給
・電気代などの政府統制価格の継続
・ガソリン代1リットルあたり0.18ユーロの補助金
・フードクーポン

また、今年の賃金の上昇率は全体で3.6%と予測されています。

上記の対策にかかる費用は国内総生産(GDP)の1.6%にあたり、金額にして4000億ユーロ(約5兆6700億円/1ユーロ=約141円)に上りますが、景気観察局はこれにより物価上昇率を2.1ポイント抑えることが出来ると見ています。

プラーヌ氏は、特に生活保護など低所得層向けの補助金における4%の上昇は、「購買力低下の歯止めに大きく貢献する」とコメントしました。

インフレ昇給による「所得税率の変更はなし」、ル・メール経済相

今年昇給したり収入が増えても、所得税が上がる場合は消費に回す分が増えるとは限りませんが、この点についてル・メール経財相は「インフレによる昇給が理由で所得税率が上がるようなことがあってはならない」と昨日の記者会見で述べています。

フランスでは単身一人当たりの収入が10,225ユーロ(約144,2000円)から所得税が課されます。

ちなみに、フランスの所得税率は収入に応じて、11%、30%、41%、45%の4段階に分かれています。

執筆:マダム・カトウ

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