2024年11月15日(金)、「11月は禁煙の月」(”Mois sans tabac“)のスローガンを掲げ、今年で9回目のフランス健康保険局による禁煙キャンペーンが開始されています。タバコの価格は年々値上がりし、現在1箱12ユーロ(約1,980円/1ユーロ=165円)の高額にもかかわらず、若年層の喫煙はまだまだ多いのが現状です。仏メディアがその理由を探っています。
若者の喫煙者数、EU内で「銀メダル」のフランス
フランス薬物及び薬物依存監視局(Observatoire français des drogues et des tendances addictives : OFDT)の調査によると、2022年、17歳の若者の6人に一人(15.6%)が毎日喫煙しています。2017年の4人に一人(25.1%)に比べ大幅に減少したものの、フランスは15歳~24歳の喫煙者数で欧州2位の座についています。
フランス政府はその数を何とか減らそうと、タバコ広告はとっくに禁止され、毎年価格をどんどん上げ、公共の場所での禁煙エリアを増やすなど、あの手この手の対策をとってきました。
それでも若者はなぜタバコを吸うのでしょうか?
タバコを吸うのは「クール」
パリ14区の職業訓練高校に通う19歳のマキシム(Maxime)君は、「お母さんが吸ってるから」と11歳で初めてタバコを吸い、16歳からほぼ毎日喫煙しています。
非営利団体「アディクション・フランス」(Addictions France)の書記長で、依存学、タバコ専門医のエルヴェ・マルティニ(Hervé Martini)氏が「家族や友人への帰属意識をもたらすため、身近な人の影響は大きい」と述べています。
カフェのテラスで取材を受けたノルマンディー地方出身で23歳のアデル(Adèle)さんは、高校の時自分以外の友人たちは全員タバコを吸っていたため、結局半年後には自分も吸い始めたと言います。
アデルさんのテーブルでビールを飲んでいる友人の一人、22歳のマリオン(Marion)さんは、「タバコより使い捨ての電子タバコ「パフ」(puff)の方がイケてないと思う」と話しています。
非営利団体「喫煙反対同盟」(Alliance contre le tabac)の代表ロイック・ジョスラン(Loïc Josseran)氏によると、タバコ業界が作った喫煙者の「男は男らしく、女性はセクシーに見える」イメージは未だに効果を発揮しているようです。
ジュリー(Julie)さんも「かっこよく見えると思う」とタバコを吸うことによるイメージへのこだわりを認めています。
喫煙で人との出会いづくり、ストレス解消、退屈しのぎ
「お酒を飲むときに必ず吸う」というアデルさん、言い換えると飲んでいるときは「タバコを吸わずにいられない」ため、一晩で一箱吸ってしまうこともあります。逆に飲んでいないときはタバコを吸わなくても平気で、夜出かけなければ1週間吸わないときもある、と断言しています。
今回インタビューされた若者たちは口をそろえて、夜出かけたときにタバコを吸うと言っています。
マリオンさんは、イメージだけでなくタバコを吸うことの「利点」として、人に話しかけるのに役立つ、たとえば「ライター貸してください」と、バーの外にいる別の喫煙者と話をするきっかけになる、とコメントしています。
また、ストレス解消にタバコを吸う人は多いですが、マリオンさんは逆に退屈しのぎによく吸います。彼女はモード系の勉強をしていますが、プロジェクトに夢中になっているときは全く吸いません。
タバコ屋の60%が未成年にも販売
フランスでは18歳未満の未成年にタバコを販売することが禁止されています。
ところが2019年の調査によると、フランスのタバコ屋の3軒に2軒はタバコを未成年に販売しています。さらに調査された店のうち10%は12歳の子供にも販売していることが明らかになっています。
未成年にとっては高額のたばこ代をどうやって捻出するのかという質問に、17歳のレナ(Léna)さんは「カートンで友達とタバコ屋でまとめ買いし、遊び用の予算に組み込んでいる」と答えています。
タバコなしだが「ニコチン入り」の使い捨て電子タバコ、10代がターゲット
彼女は最近2~3ユーロ(約330円~500円)で買えるパフに切り替えています。カラフルな色に様々なテイストが若年層にうけているようです。
「アディクション・フランス」のマルティニ氏は、10代の子供はまず「遊び心」をくすぐる使い捨て電子タバコから気軽に入るケースが増えているが、結局ニコチン中毒になると危険視しています。
タバコメーカーのブリティッシュ・アメリカン・タバコ(British american tobaco)は最近11憶ユーロ(約1800億円)を投じ、若者向けSNS、TikTok上でインフルエンサーを多用した電子タバコの宣伝を強化しています。
ガンは若いから関係ない、年取ったらタバコやめればいい
喫煙者の母親が肺炎になったり、親の友人たちの中に喫煙がもとでガンになった人がいるというアデルさん、健康への害について周知するも、「私はそんなにしょっちゅう吸ってるわけじゃないから大丈夫」と自分に言い聞かせています。
マリオンさんは「そういう不幸なことは自分以外の人に起こる」と思っているし、「25歳になったらやめればいい」と割り切っています。
マルティニ氏は「喫煙者は減っているが、政府の対策は緩やかなため、効果は10年、20年経たないとわからない」と懐疑的です。
20代過ぎると喫煙もアルコール同様「時代遅れ?」
アデルさんの友人達の中には禁煙する友人が増えています。
年齢的なものかもしれませんが、喫煙がお酒を飲むことと同じく、だんだん「かっこ悪く」なってきたのかも、と自答しています。
隣に座っているヴィオレット(Violette)さんはノンアルコールのカクテルを飲みながら「お酒を飲まなきゃ吸いたくならない」とのことですが、問題は「禁酒が続くかどうか」だそうです。
執筆:マダム・カトウ