2024年11月12日(火)、フランスの中学生、高校生の数学と国語のレベルは過去10年間で下がる一方、政府はさまざまな改革を試行錯誤してきました。フランス政府は昨年、子供の学力の底上げをめざす「知識ショック」と名付けた改革を遂行、本日その第二弾の内容が発表され、議論を醸し出しています。
フランスの子供の学力、低下の一途、世界ランキング26位
2022年に行われた「子供の国際学力調査」の結果、フランスは総合で81か国中26位でした。
『PISA』と呼ばれるこの調査は、OECD(経済協力開発機構)が2年に一度、世界各国の15歳を対象に行うもので、「数学」「読解力」「科学」活用能力の3つの分野で調査しています。
この年も一位はシンガポール、日本は平均的学力向上で5位につけるなど、上位はアジア勢が占めています。
数学と読解力の著しい低下
2012年に平均505ポイントだったフランスの子供の読解力は、10年後の22年には474ポイントと約6%低下、数学は495ポイントから475と約5%低下しています。ちなみに511ポイントだった2000年と比べると7%も下がっています。
最低レベルの生徒が増加、トップレベルの割合は平均値下回る
調査結果は能力を6つのレベルに分けて評価します。
フランスの生徒の71%は「ベースライン」つまり最低限の学力とされるレベル2を超えています。これは調査参加国平均の69%を上回っています。
しかしながら、フランス政府が特に危機感を募らせる背景には、10年前と比較してレベル2を下回る生徒の数が数学で6%、読解力で7%、科学で5%も増えていることがあります。
一方、レベル5、6に評価されるトップレベルの生徒の数は、数学で7%と調査平均9%を下回っています。(ちなみに日本を含むランキング上位国では10%以上)
フランス政府は過去にも幾度となく教育プログラムやシステムの改革を行ってきましたが、学力低下に歯止めをかけることができず、PISAでの過去最低記録を更新しています。
高校進学に中学卒業資格を義務化、2027年から
今年9月の新学期より「知識ショック」改革第一弾として、日本の中学にあたる中等教育第一期(4年間)の1、2年の生徒を対象に、1クラス15人までに限定したフランス語(国語)と数学の強化補修授業を新設するなどの施策を行っています。
「成績の悪い子供だけを区別」と教員の反対デモなどが行われたこの施策、効果のほどはまだこれからですが、慢性的な教師不足のなか、すべての中学で導入できていないのが現状です。
中学卒業資格の評価基準改定
まず、2026年6月に卒業する生徒から、中学卒業資格(Brevet)の評価方法が変更されます。現在、年間の授業の評価と試験の成績が半々でしたが、改革案には年間評価の割合を60、資格試験結果を40に変更することが盛り込まれています。
不合格の生徒に2つの選択肢
2027年の9月から、日本の高校にあたる中等教育第二期「リセ」(Lycée)に進学するには、この中学卒業資格が必要になります。
フランスの義務教育は「コレージュ」(collège)と呼ばれる中等教育第一期までですが、この資格が取れなかった生徒の進路には2つの選択肢が与えられます。
一つはCAP(certificat d’aptitude professionnelle)と呼ばれる職業訓練校への進学、そしてもう一つは高校入学のための準備クラス(prépa seconde)に入る、つまり高校を4年間で卒業することです。
この準備クラスは新システム導入後に新設されることになります。
教員組合新改革に反発、「問題のすり替え」と批判
今年の新学期、「学校に行ったら教室に先生がいなかった」という子供の親数人が国を相手に訴えを起こした、というニュースが流れたように、フランスの学校では授業が年間でフルに行われていないことが大きな問題になっています。
政府があの手この手で教育システムやプログラムを変更しても、根本の問題は「人材不足」だと、教員組合は反対しています。
教師の欠勤(多くの場合病欠)の多さが問題になるなど、人材不足の背景にはモチベーションの低さがあるとして、給与など労働条件の見直しが叫ばれています。
執筆:マダム・カトウ