4月13日(火)、新型コロナ感染拡大が続くフランスで、昨日12日より55歳以上の健常者へのワクチン接種が開始されました。現在3度目のロックダウン中のフランスですが、一日の新規感染者は3万人を超え、約6000人が集中治療室に入院中と医療逼迫が続いているため、遅れをとったワクチン接種のスピードアップが期待されます。
接種対象年齢、70歳以上から55歳以上に一気に引き下げ
これまで55歳〜69歳までは、重症化リスクのある人だけが対象でしたが、昨日より健常者を含む全ての55歳以上がワクチン接種の対象になりました。
接種は開業医の診療所、薬局などで行われます。
使用されるのは、超低温保存(マイナス70度)が不要なアストラゼネカ社のワクチンです。副作用の血栓による死者が若年層に出たことから、このワクチンは使用が55歳以上に限定されています。
フランスで接種される年齢別のワクチン(4月13日現在):
70歳以上 :ファイザー(Pfizer)、モデルナ(Moderna)、アストラゼネカ(AstraZeneca)、ジョンソン&ジョンソン(Janssen: Johnson & Johnson Group)
55歳以上69歳以下で重症化リスクのある人 :ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン
55歳以上69歳以下 :アストラゼネカ、ジョンソン&ジョンソン
18歳以上54歳以下で重症化リスクのある人 :ファイザー、モデルナ
ブラジル変異種増のモーゼル県、アストラゼネカは効果薄で推奨せず
フランス全体では、感染者のうちブラジル変異種の割合は5%程度ですが、東フランスのモーゼル(Moselle)県ではこれが実に35%を占めています。
現在提供されているワクチンに関して、フランスにおける医薬品などの検証および使用認可を行う、最高衛生局(Haute Autorité de santé :HAS)がテストを繰り返した結果、アストラゼネカ社のワクチンはブラジル変異種には効果が薄い(約20%)とわかっています。
そのため同局は、モーゼル県においてこのワクチンの使用を推奨せず、mRNAという別の技術を使ったファイザー社かモデルナ社のワクチンを接種するよう医療関係者に通達しています。
すでに1回目の接種でアストラゼネカ社のワクチンを接種した9000人に関しても、2回目はファイザー社かモデルナ社のワクチンが接種されます。
1回の接種で済むジョンソン&ジョンソンのワクチンに期待 仏開業医組合
3月12日に新たに許可されたジョンソン&ジョンソン社のワクチンは、昨日4月12日より納品が開始されました。
フランス開業医組合(MG France)の代表、ジャック・バティストーニ(Jacques Battistoni)氏は、「これまでワクチンの供給が少ないものの、対象になる人も限られていたので何とか接種できていたが、そろそろ難しくなり始めていた」所に新しいワクチンの登場で、接種が増えることに期待しています。
同氏はさらに「フランスに400万人以上いる55歳〜60歳の人達は、血栓の副作用で不人気のアストラゼネカのワクチンのみしか選択肢がなかった」が、新しいワクチンの登場、しかも「接種が1回きりのおまけ付き」でこの層が接種に「より前向きになるのではないか」ともコメントしています。
新型コロナによる死者の合計が99,163人と10万人に迫る中、ワクチン接種の早い効果が期待されます。
執筆:マダム・カトウ