フランス カフェのギャルソン不足が深刻 採用にあの手この手

2022.05.24

フランス カフェのギャルソン不足深刻 今年20万人5月24日(火)、4月後半からの好天気でフランス全国でカフェのテラスが賑わっています。ところが、カフェやレストランのオーナーは喜んでばかりもいられないようです。カフェのギャルソン(ウエイター)不足が今年いよいよ深刻化し、業界は人材確保に知恵を絞っています。

 

フランスで20万人以上の人手不足

パリでカフェを経営するスタニスラスさんは、雨が降ってガラガラのテラスを見ながらホッとしています。テラス席が埋まると、ただでさえ「疲弊しきった」ウエイター達の負担が一層増えるからです。

スタニスラス氏は、お客さんが少ないのを嬉しいと思うようになるほど「人手不足は深刻だ」と語っています。

コロナ禍で人生観が変わった

2020年6月のロックダウン解除から、ホテル、レストラン、カフェなどのサービス業で人手不足が顕著になり、フランスのホテル業組合(Union des métiers de l’hôtellerie)の試算によると、その数は2022年で22万人〜25万人にも及びます。

スタニスラス氏のカフェでは、今年の1月、2月も必要な人数のウエイターは確保できなかったものの、「オフシーズンなので我慢」できましたが、これから「夏のハイシーズンをどうするか」が大きな問題になっています。

 

できる限り給料を上げる

では、今年の夏、パリのカフェでは客が「自分でビールをつぐ」ことになるのでしょうか?

「まだそこまではいっていない」と言うフランスレストラン経営者組合(Association française des maîtres restaurateurs)アラン・フォンテーヌ(Alain Fontaine)会長によると、「飲食業はいろんな人との出会いがある」など、素晴らしい仕事ですが、この素晴らしい職業をもっとアピールし、夏の繁忙期までに人材を確保するにはお店側にも「改善」が必要です。

まずは、低賃金の改善です。

会長は「もう月給1800ユーロ(約245,000円/1ユーロ=約136円)未満では誰も採用できない」し、可能であれば「さらに給料を上げる必要がある」と述べています。

 

インフレとのダブルパンチ、人材確保か閉業か

確かに給与が上がると応募者は増えるかもしれませんが、経営者にとってはそう簡単ではありません。

「インフレでなんでも値上がりしているうえに、これ以上給料を上げるとさらに利益が減ってしまう」と、ニーム(Nîmes)でレストランを経営するエリザベット(Elisabeth)さんはため息をついています。

ちなみに彼女の経営するデュ・ソレイユ(Du soleil)は、ウエイター一人当たり手取りで月給2200ユーロ(約30万円)を支給しています。

とはいえウエイターがいないと「閉店に追い込まれる」ため、「利益を削って」でも人材確保を優先しています。

住み込み、三食、洗濯付き

レストラン経営者組合では、大都市ではなく田舎のレストランでは、給与を上げる代わりに「衣食住」込みのオファーを提案しています。

こういったオファーは若年層の就業推進に適しており、雇用推進に国が補助金を出すことを期待しています。

 

カフェのギャルソンに、もっと「自由」を

長時間、週末、夜間労働と「人が嫌がる職業」のレッテルを貼られてしまったウエイター業ですが、これを解消しなくては新しい人材確保は難しいものがあります。

ロックダウンの間、家で今まで経験したことのない「自由な時間」を満喫してしまったクロエ(Chloé)さんは、店を辞めたことを全く後悔していません。

営業時間を短縮

パリ中心部2区のカフェ、プチ・ポネー(Petit Poney)のオーナー、ジェレミー(Jérémy)さんは、店の営業時間を「繁忙時間帯」だけに変更しました。

商業地区に位置するこの店では、朝の10時に来る3人の常連客のためだけに店を開けるのをやめました。朝から開店しても店は儲かりますが、ギャルソンにとっては「馬鹿馬鹿しい」ものです。

この店では、夜の営業時間も午前1時から23時に変更しました。

帰らない客に「ノン」

しわ寄せは当然お客さんに行くわけですが、「最後のビールを23時ギリギリに注文しようとゴネる客」や「閉店時間を過ぎても帰らない客」には「ノン」と言わなければなりません。

23時に店を閉めるのと、23時に最後の注文を受けるのとでは大きな違いがあります。

「何時に帰れるかわからない」ことが就業する人の不信感を買い、この職業が敬遠される「最大の原因」だとフォンテーヌ氏は言います。

 

フルタイムより半日労働、4時間の休憩がネック

フランスのウエイターの就業時間は、概ね朝11時ごろからランチ終了の14時ごろまで、午後の休憩時間4時間の間いったん家に帰り、夕食のサービスのため18時頃から23時頃まで働くというパターンです。

4時間という中途半端な休憩時間を有効に使えることが少ないせいか、フルタイムより「半日(注)のスタッフを2人雇う方が簡単」なようです。

半日の場合、学生や時間が欲しい若者など、応募者の枠を広げることができるからです。そのほかには、EU外からの移民なども視野に入れる案も検討されています。

外国人も視野、昔とは違うやり方で

「安い労働力」を連れてくるのではなく、フランスに定住し文化に溶け込みたい人を開拓します。

いずれにせよ、カフェのギャルソンも時代に合わせた「変革」を進めていく必要があることは間違いありません。

(注)フランスの労働法では、「パート」「アルバイト」という概念はなく、半日などの時短でもフルタイムでも「正社員」になり同様の権利が保証されています。

執筆:マダム・カトウ

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