フランス リゾート地バスクの地価が急上昇 6月下院選の争点に

2022.05.26

フランス バスク地方フランスとスペインの国境付近にあるバスク地方では、コロナウイルスの感染拡大以降、別荘地などとして利用する人の増加により地価が急上昇しています。

地元住民からは、住居確保への対策が期待されており、6月にせまる下院選での争点となりそうです。

 

バスク地方の住居問題

フランス南西部に位置するバスク地方は、とくに19世紀以降、ヨーロッパ各国の貴族が保養地として利用したリゾート地として有名です。中心地の一つであるビアリッツ(Biarritz)には、かのナポレオン3世が王妃ウージェニーのために建設した離宮があります。

砂浜海岸だけでなく、カジノやゴルフ場などバカンスにもってこいのバスク地方には、コロナウイルスの感染拡大以降、テレワークの導入や自然を好むトレンドにより、別荘を購入する人が急増しました。

パリと同水準の地価も

この影響で地価はコロナ禍以前の15〜20%上昇し、ワンルームの平均家賃はパリのそれに匹敵するまでに上がりました。このため、地元住民が住居の確保に苦戦するという問題が起きています。

ビアリッツの海岸沿いには、オフシーズンにはほとんど空き家となる別荘が並びます。

地元住民のひとりコリーヌ・マレ(Corinne Mallet)さんは6年前から30平方メートルのワンルームを月額500ユーロ(約6万8000円、1ユーロ/約136円)で借りていました。

しかし家主がこの部屋を売却したいとして、マレさんは今年いっぱいで賃貸契約を切るよう伝えられたといいます。売却額は40万ユーロ(約5,440万円)で、これは10年前の倍の売値です。

 

住宅問題、下院選の争点に

6月12日と19日に控える下院選に際し、バスク地方では以上のような住居問題への対応を候補者に求める意見も少なくありません。

上述のアンダイエとビアリッツを結ぶピレネー=アトランティック地域圏(Pyrénées-Atlantiques)6区の代表として、ヴァンサン・ブリュ(Vincent Bru)は、2017年の選挙と同じように今年の選挙でも住居問題への対応をマニフェストに組み込む予定です。

左派4党が立ち上げた環境・社会新民衆連合(Nouvelle Union Populaire écologiste et sociale, NUPES)に属するサンドラ・ペレイラ=オスタヌル(Sandra Pereyra-Ostanel)は、県内で低所得者層向け住宅の入居希望を1万7000件あまり受け取ったとしています。

地元のナショナリスト政党(EH Bai, Euskal Herria Bai)の代表マチルド・ハリー(Mathilde Hary)は、「別荘よりも先に、寝る場所へのアクセス権を確保せねばならない」とのスローガンを掲げています。

民泊にも圧力

地元住民が住居の確保に苦戦するなか、観光客向けの民泊は急増しています。2021年11月時点では、8,000人以上がバイヨンヌ(Bayonne)で民泊を利用しました。

3月5日にはバスク地方で、「観光用の家具付き住居の家主は、同面積の不動産を1年間借りなければならない」という規定が設けられました。これは多くの観光地ですでに実施されている措置です。

このように法整備も進む中、次のステップは国民議会での法改正が目標とされています。

低所得者層向けの住居を確保

アンダイエ(Hendaye)では、2年前から土地を予め買収し、低所得者向け住居(habitation à loyer modéré, HLM)とする計画が動きだしました。

家主は土地ではなく建物のみを管理し、低価格で27室を賃貸に出すという試みです。

おわりに

地元住民にむけては、すでに住民登録のしくみをつくるなどの対策が取られていますが、このような措置に対する議員の意見は割れています。一方で不動産税の見直しなどにより、住居用不動産ではなく観光用不動産にのみ課税する制度などの新設が発案されています。

この問題は、住居不足だけでなく地元住民の収入水準の低さとも関わっており、一朝一夕に解決できるものではないようです。それだけに、抜本的な改革を提案できるか、それを実行できるかがバスク地方では次期の下院選で問われることになります。

執筆あお

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