
フランス政府認定の試験であるDELF(Diplôme dʼétudes en langue française)B1は、日常生活に支障のないレベルのフランス語力があるかを確かめるのによい指標となります。
このシリーズ記事では、DELF B1試験の内容や対策をご紹介しています。ついに最終回となる今回はDELF B1の口頭試験(面接試験)を徹底的に分析します。
(シリーズ第1回では、DELF B1試験の基本情報を、第2回では過去問と参考書の探し方を、第3回〜第5回はリスニング・読解・作文の内容と対策を紹介しています。ぜひそちらもご覧ください。)
DELF B1の口頭試験
第1回の記事で見たように、DELF B1では筆記に加えて口頭試験が行われます。
このセクションでは口頭表現(Production orale)が行われます。約15分の間に3つの課題に答えます。
1問目 試験官の誘導による面接(entretien dirigé):自己紹介をし、試験官の質問に答えていきます。
2問目 やり取りの課題(exercice en interaction):試験官とロールプレイを行います。
3問目 テキストにもとづく意見の表明(expression d’un point de vue à partir d’un document déclencheur):150語ほどのニュース記事などを読み、テーマに関する自分の意見を述べます(約3分間)。その後、試験官の質問に答えます。
3問目のみ10分間の準備時間があります。これは試験の開始直後に与えられ、試験室とは異なる教室に案内されることがほとんどです。
3つの課題は、似ているようで全く異なる能力を試すものです。それぞれの特徴を理解し、対策に役立てましょう。
1問目の内容と対策
例年、試験室に入ったらすぐに約2〜3分間の自己紹介を求められます。
ここでのポイントは、3つの「時」に焦点を合わせて話すことです。具体的には、それまでの経験(過去)、とりくんでいる勉強・仕事や関心事(現在)、そして将来の目標や展望(未来)を指します。
おすすめの対策
3つの「時」のそれぞれについてエピソードを考え、適切な時制を選んで話せるように練習しておくとスムーズでしょう。
もちろん、過去→現在→未来の順番で話す必要はないですが、試験官からの質問はこれらの内容に沿ったものとなる場合が多いようです。
ネタはさまざま
なお、「過去」といっても生まれた時から人生を振り返る必要はありません。前日に食べたものや直前のヴァカンスの思い出、あるいはなぜフランス語を勉強し始めたかなど話題はさまざまです。
「未来」についても実現可能性などは問わず、その日の夕飯の内容やフランス語を使ってどんなことがしたいかなど、幅広く準備しておくことをおすすめします。
vousを聞きjeで答える
口頭試験では、試験官の質問を理解する力や聞かれたことに正確に答える力が必要です。
自己紹介は1人で練習できると思いがちです。しかし緊張した状態で正確に試験官のフランス語を聞き取るのは、実は容易ではありません。
日頃からvousの人称の活用形を意識して覚える、vousの活用をすぐにjeの活用に直して口に出してみる、といったトレーニングを積んでおくことをおすすめします。
2問目の内容と対策
2問目は、特定の状況における会話を想像し試験官とロールプレイを行います。
過去問では「購入した洋服の返金を要求する」「友人を説得する」などがあり、さまざまなテーマが用意されていることがわかります。
ここでは会話の目標を達成するための、相手に依頼や抗議などをする力が問われています。
相手に働きかける表現を学ぶ
まず、依頼や抗議など相手に働きかける表現を学ぶことが必要です。
ロールプレイは公共での場面だけでなく、友人や同僚との会話なども想定されています。よってtuとvousの両方の人称で練習しておくと良いです。
例えば「依頼」であれば以下のような表現がありますね。
Pourriez-vous… ? / Pouvez-vous… ?(〜していただけませんか?)
Pourrais-tu… ? / Peux-tu… ?(〜してくれない?)
また、jeを主語にして要望を表す表現もあります。
Je voudrais vous/tu demander…(〜していただきたい/〜してほしいのですが)
J’aimerais bien…(〜してほしいです)
「抗議」なら以下のような表現があります。
C’est inacceptable/inadmissible !(それは受け入れがたい)
Ce n’est pas possible/ C’est impossible !(ありえない)
Je ne comprends pas !(理解できない)
以上は一例ですが、会話の目標に沿ってさまざまな表現を身につけ、使い方を確認しておきましょう。
役になりきって話す
2問目で意外とひっかかるのは、試験官を「友人」や「ホテルマン」などに見立てて、臨場感たっぷりで役割を演じなければならないこと。
1問目ではvousを使っていた試験官に対して、お題によってはtuを使わなければならない場合もあります。またとっても良い人そうな試験官に対し「あなたの言っていることは分からない」「ありえない」などと強気で(!)話す必要があります。
フランス語力は十分なのに、場馴れしていないがために言葉に詰まってしまう…。そんなことのないように、役になりきって話す練習をしておくと良いでしょう。
3問目の内容
3問目は唯一準備時間が与えられ、問題や意見を話します。その後は試験官との質問応答が行われます。
材料として出されるのは、短い新聞記事やニュースメディアのテキストなどです。テーマは「テレワーク」「夏休みのアルバイト」「若者の人権活動」など、社会的な話題です。
材料の多くがフランス語圏のメディアであるため、中には日本で生活していては馴染みのないテーマもあります。また記事の中には統計や、当事者の意見などの引用が含まれる場合もあります。
話すべき要素
基本的には選んだテーマについての記事を読み、その記事への意見を述べます。文章中にすでにいくつかの質問を含むものがほとんどです。例えば「夏休みのアルバイト」にかんする過去問では、以下のような具体的な質問が書かれています。
「若者に対する夏休みのアルバイトについてどう考えるか?(Que pensez-vous des jobs d’été pour les jeunes ?)」
「あなたの意見では、合法とされる年齢はふさわしいか?(L’âge légal est-il, selon vous, adapté ?)」
これらの質問をテキストから探し出し、意見をまとめます。
3問目への対策
ここでは3問目への対策方法を、3つのステップに沿って紹介します。
ステップ1.まずは過去問から
まず指定の時間制限と形式通りに、過去問や参考書に取り組むことをおすすめします。例年、テキストの読解と準備に10分、発表に3分程度という形式で進みます。
メモのとり方(本番になると文字が頭に入ってこない!)や、話す順番(どうやって切り出せば良いのか分からない!)など、細かい点を確認しましょう。
ステップ2.内容のブラッシュアップ
次に、作成したメモや、実際に口から出てきたフランス語を振り返ります。そして咄嗟に出てこなかった単語や、文法の間違いを自分でチェックします。
そして、本番でも使えそうな単語や文法をつかった表現をつくります。レッスンなどを活用して、文法や表現を添削してもらうのも良いでしょう。
ステップ3.再現できるよう練習
最後に、前の段階で直した点に注意しながらもう一度指定の時間制限のなかで再現する練習をします。
そして修正した表現を実際に本番で言えるよう、何度も口に出して練習します。
以上の練習を、できるだけ多くのテーマについて繰り返していると、似たようなテーマが出題されると詳細を変えるだけで対応できるようになるはずです。
意見そのものではなくフランス語力が大事
仏検準1級の試験対策シリーズでも書いたのですが、口頭試験では自分の語彙力や文法力でできる範囲の意見を述べることが大切です。
すなわち、意見が優れているかというよりは、ある程度の複雑な内容を適切なフランス語で表現できるかが試されています。解答に新奇性や創造性は求められていません(あるにこしたことはありませんが!)。
このため制限時間を設けて、自分で修正した内容やレッスンなどでアドバイスを受けた事柄を、緊張した場面でも再現できるようにしておくと良いでしょう。
まとめとアドバイス
DELF B1は仏検に比べると受験料も高いです。また問題文からしてフランス語で参考書もオールフランス語で、どうしたらいいのか分からない…という声をよく聞きます。
まずは今回の記事をご参考に、ご自身で過去問に取り組んでみてください。
今回でDELF B1試験シリーズは終了です。もちろん語学に終わりはありませんが、DELFは一度合格すれば一生もの! DELF B1試験対策をきっかけに、日常生活に必要なレベルのフランス語をマスターしましょう。
執筆あお












