8月24日(水)、マクロン大統領をはじめとするフランス政府の大臣らは2週間のバカンスを終えました。ウクライナ侵攻、インフレ、電力不足などさまざまな問題が山積している中、新年度が始まります。
環境問題への対策が必須 猛暑をうけ
2022年夏のフランスでは、猛暑によるジロンド県での大規模な山火事や、コルシカ島での暴風雨による被害など、天災が相次ぎました。これらを受けてフランス政府は、新年度も環境問題への対策に重点を置く見通しです。
マクロン大統領は、新年度早々にアルジェリアへ3日間訪問してすぐ、環境問題に特化した専門家会議を開催する予定です。ボルヌ首相からも、エネルギー節約とエネルギー転換に関する演説が行われるといいます。
秋にかけては、再生可能エネルギーに関する法改正が行われる見通しであり、この改正によって風力や太陽光の分野でのフランスの遅れを取り戻す意向です。
インフレも深刻
現在はウクライナ侵攻によるインフレも深刻であり、冬にかけてガソリン、ガス、電力の不足が懸念されています。
マクロン大統領はバカンス中の8月19日、南仏コート・ダジュール地方にあるボルム=レ=ミモザ(Bormes-les-Mimosas)の解放記念式典に訪れ、フランス国民に対しエネルギー問題への対策を呼びかけました。
この問題はフランスのみならずヨーロッパ諸国をはじめとする国々にとっても重大であり、フランスは近隣諸国と連携して解決することを求められています。
社会保障の改革
昨年度にひきつづきフランス政府の重要課題とされているのが、社会保障制度の改革です。マクロン大統領は選挙中、退職年齢を65歳に引き上げることを提案していました。
しかしオリヴィエ・デュソプト(Olivier Dussopt)労働大臣は労組との交渉が必要だと主張しており、議論はこの先も続きそうです。
失業保険については、保険の適用条件を緩和するための改革が検討されています。具体的には、就労の困難な人々に対して支給される積極的連帯手当(revenu de solidarité active, RSA)の制度改正などが予定されており、「完全雇用」に向けて試行錯誤しています。
「国家再建評議会」
マクロン大統領は第2次政権において、「国家再建評議会」(Conseil national de la refondation, CNR)を組織し、上に挙げた問題などの解決に取り組むとしていました。
この委員会は政治、経済、社会、民間団体、くじ引きで選ばれた市民などで構成され、ボトムアップで政策課題に取り組むことを目的としています。しかし実際のところ、メンバーの選出方法などは明らかになっていません。
委員会の設置が、新年度のマクロン政権にどのような風を吹かせるのかが注目されます。
執筆あお
参照 労働政策研究・研修機構 「積極的連帯所得手当(RSA)受給者が増加」(2011年1月)