コロナ禍の社会保障費、フランス財政を圧迫

2021.06.24

家族 補償

6月23日(水)、フランスの社会保障会計委員会(La Commission des comptes de la Sécurité sociale, CCSS)は2021年度の社会保障費として384億ユーロ(約5億800万円*)の赤字を計上する見通しを公表しました。

コロナウイルスの感染拡大の影響により、歴代最高額の赤字を記録した前年度(387億ユーロ)に引き続き、フランス政府の財政は厳しい状況にあります。

*1ユーロ=132円で換算

 

コロナ収束、予定よりも鈍く

フランスではここ2ヶ月、ロックダウンの段階的解除を実行し、コロナ前のライフスタイルに戻りつつあります。これに伴い、経済活動も復調に向かっています。しかし、コロナ禍で増大する社会保障費は、フランス政府の財政状況を圧迫しています。

フランス社会保障会計委員会によると、2021年度の社会保障費は384億ユーロの赤字となる見通しです。同委員会は2020年11月末、今年度の社会保障費を「約357億ユーロの赤字」という見通しを発表し、前年度からの回復を強調していました。

しかし実際には、予定よりも約23億ユーロ分の赤字額増加で、前年度からの大幅な改善とはなりません。半年前の時点でフランス政府が予想していたようには、コロナの収束と財政再建が達成されなかったようです。

歳出は増

2021年度の歳入全体は、前年度より増加しました(56億ユーロ)が、これはベース効果(物価変動により足元の税収が増加すること)によるものです。昨年度からの貯蓄分は、ロックダウンや外出制限で特に悪影響を被った国民のために使うことになっています。

社会保障に関する歳入については、前年より4.6%増加し、これは民間部門の給与からの収入増(前年比+5.2%)と、税収の増加(前年比+5.5%)によります。コロナからの経済復興が好影響をもたらしたようです。

 

歳出は増加したにも関わらず、なぜ財政赤字?

フランス財政を圧迫する理由の一つに、次のような社会保障の様々な施策があります。

労働者への手当

まず、自営業者への手当の制度化です。これは民間の保険料徴収連合*が昨年から実施している施策で、35億ユーロの財源を確保しました。 *社会保障・家族手当保険料徴収連合(Unions de Recouvrement des Cotisations de Sécurité Sociale et d’Allocations Familiales, URSSAF)

また、コロナ禍における会社員や自営業者への特別支援金として、37億ユーロが計上されました。

医療介護関係への支援策

昨年にマクロン大統領は「保健セギュール協定(Ségur de la santé)」を発表しました。この政策の目的は、病院や介護施設での労働環境や待遇を改善することです。今年度には介護職への給与引き上げのために、23億ユーロが投じられています。

また、病院やEHPAD(Établissement d’Hébergement pour Personnes Agées Dépendantes:要介護高齢者居住施設)に対しても、14億ユーロが投資されます。

高齢者への社会保障

老齢保険(l’assurance-vieillesse:日本の年金にあたる)に関しても、二度目の給付金は支給されないこととなりましたが、前年度より支出額が増加しました(今年度50億ユーロ、前年度は44億ユーロ)。

保険料の納入に関わらず受け取ることができる連帯老齢基金(la solidarité vieillesse)についても、26億ユーロの赤字で、社会保障費を圧迫しています。

 

コロナ関連の社会保障費も加わり…

今回発表された社会保障費の支出額は、昨年11月末に発表された予測よりも、82億ユーロ多いです。この原因については、主にコロナ禍で医療保険(l’assurance-maladie, Ondam)の還付に96億ユーロかかったことが指摘されています。

コロナウイルス感染対策にかかる費用については、当初の予測ではPCR検査に15億ユーロ、ワクチン摂取に20億ユーロを計上していましたが、実際にはPCR検査検査に46億ユーロ、ワクチンに49億ユーロを投じることになりました。

病院や介護施設への支援金や日当の支払いなどにも追加費用が充てられるため、コロナ関連としては合計で134億ユーロの歳出となる見通しです。

世界トップクラスの社会保障負担

GDPに対するフランスの社会保障負担率はOECD加盟国のなかでもトップクラスと言われています(こちらの記事)。

ロックダウンの解除など日本と比べればスピーディにコロナからの復活を実現しているように見えるフランスですが、フランス政府の当初の予測よりはるかに長かったコロナ禍からの財政的な脱却には、時間がかかりそうです。

執筆あお

参照

Bpifrance Création Mise en place par l’Urssaf de nouvelles mesures pour les travailleurs indépendants [2021.06.24]
Les Echos (2020/10/19) DOSSIER Le « Ségur de la santé »
厚生労働省 「2019年 海外情勢報告 第3章 欧州地域にみる厚生労働施策の概要と最近の動向(第1節 フランス共和国(French Republic)、(2)社会保障施策)」[2021/06/24]

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