12月１日（火）、世界各国で新型コロナワクチン接種の準備が進められる中、フランスにおける接種計画が公表されました。それによると、接種は来年１月に開始され、まずは重症化リスクの高い高齢者などを優先にし、年齢などで五段階に分けて行われます。全ての段階を終えるには来年2021年の夏頃までかかるようです。
欧州のワクチン、ファイザー・バイオNテックが最有力候補
現在、世界各国で製薬各社により次々と新型コロナワクチン臨場試験結果の発表が行われ、各国が許認可を急いでいますが、
フランスでは、欧州薬品局が12月中旬頃の予定で認可を待つ米ファイザーと独バイオNテックの共同開発ワクチンが、来年一月から開始が予定される接種の最有力候補となっています。
ワクチンは欧州共同体で共同購入され、その約15％がフランスに供給されます。その数は150万人分と発表されていましたが、84万人分に下方修正されています。
後期高齢者など重症化リスクのある人優先だが…
フランスの独立保健局である高等保健局（HAS：Haute Autorité de Santé ）の発表によると、最優先となるのは、重症化リスクが高く、フランスの死者の３分の１を占める医療介護施設の高齢者で、その数はフランス全国で65万人にも及びます。次に介護施設で働く介護士の内重症化リスクのある持病のある人、もしくは50歳以上の人が対象になります。
さらにフランスに約３千万人いると言われる「重症化リスクのある疾病を持つ人」も最優先者に加わります。
これに対し、当初確保されるワクチンは84万人分で到底足りないことになります。
接種、５段階のシナリオ
第１段階での最優先者の接種に続いて、第２段階から第３段階では1500万人の接種を目指します。
第２段階で対象になるのは75歳以上の高齢者全てと、65歳以上74歳以下の重症化リスクのある疾病を持つ人、および50歳以上の医療関係者、50歳未満でも重症化リスクの高い疾病のある人となります。
第3段階では、２段階までで接種が終わらなかった対象者、50歳以上の人、50歳未満でも重症化リスクの高い人、および全ての医療関係者が加わります。
第４段階で、50歳未満の特に疾病などない健常者の中でも人の集まる場所で働くなど、感染リスクの高い職業についている人が対象になります。また、この段階で、生活環境が厳しい路上生活者、精神病患者、受刑者なども対象になります。
第５段階で18歳以上の全ての人が対象になります。
ちなみに、フランスでは現在のところ未成年への接種は検討されていません。
いずれにしても、これら全ての段階を終えるのは早くても来年の夏頃になる、と高等保健局は予想しています。
保管がネックのファイザー・バイオNテックのワクチン
現在、接種場所を政府指定の病院にするか、巨大な「ワクチン接種専用ドーム」を設置するかなどが検討されていますが、ファイザー・バイオNテックのワクチンはマイナス70℃での保存が必須で、専用の冷凍庫が大量に必要となるため、大規模接種に向けては保管が焦点になっています。
フランス政府は《ワクチン・タスクフォース（特殊班）》と名付けた上級公務員による監視チームを結成し、進捗を報告させていますが、フランスの有力紙JDDによると、ワクチンの輸送、補給、保管の準備に「気の遠くなるような労力がかかる」ことが大きな課題となっています。今の所、保管場所として全国に130箇所目星をつけているに留まっています。
ワクチンに懐疑的なフランス国民
先月24日の演説でマクロン大統領が「ワクチン接種は義務化しない」と発表していたように、接種は義務ではありません。
大統領がロックダウンの行動規制緩和の発表の際にわざわざこの発言をした背景には、フランス国民のワクチンに対する「不信感」があります。
統計によると、新型コロナのワクチンができたら接種するかという問いに「はい」と答えた人は僅か41％となっています。これはワクチンへの信頼が高いドイツの60％に比べかなり低い数字になっています。
ちなみに、感染病が収束に向かうために必要な集団免疫を確立するには、国民全体の６割が免疫を獲得する必要があると言われています。
執筆：マダム・カトウ
