11月21日(木)、数年にわたりパリの地下鉄などで盗んだ品物をモロッコに送って販売していたスリ組織が、パリ警察によって解体されました。
オーガナイズされた一大組織 解体
今年10月末、パリ警察の治安部隊の1班が、盗品を回収し保管していた容疑者の家宅捜査をきっかけに、盗品の輸出を担う一大組織の解体に成功しました。
今回解体された組織の仕組みですが、まずスリ部隊がパリの地下鉄や観光スポットなどで盗んだスマートフォン(以下「スマホ」)など数十品を、《回収屋》が毎日引き取って数日間保管します。その後《運び屋》とよばれる人物が盗品を複数の回収屋から買い取り、モロッコに運ぶという流れになっていました。
パリ治安部隊が回収屋の一人の家宅捜査で差し押さえた盗品は、わずか3日分にしてスマホ58台、香水数十本、iPadなどのタブレット、ルイヴィトンの財布、高級時計、宝石などで、その数の多さから解体された組織の規模の大きさがうかがえます。
600ユーロ以上のスマホが対象
捜査班は、まず今回の組織解体の鍵となった回収屋の一人に目をつけました。
この人物は大変用心深く、プロのスリや未成年者を集めたスリ集団の元締めなどから、回収依頼の電話を毎日20件以上受けていましたが、待ち合わせ場所には手下を送り、自ら出向くことはありませんでした。また、いわゆる「新顔」とは一切付き合わないため、「パートナー」となったスリの下には、盗品の販売を依頼する別のスリがぶら下がっている構造になっていました。
自らも窃盗で前科があるこの回収屋は、安いスマホには一切興味を示さず、最低でも600ユーロの価値があるものしか買い取らないうえ、買取価格を示す「料金表」を作成していたことからも、組織の存在が明らかになったようです。
パリ警察によると、通常回収屋の取り分は、新品のスマホの市場価格の4分の1ですが、ロック解除の必要がある場合は数十ユーロ差し引かれます。これはロック解除を行うためにかかる費用に相当します。
モロッコの《運び屋》の摘発ならず
回収屋から買い取った盗品を輸出する《運び屋》は、フランスとモロッコを行き来する複数の貿易業者の社員で、彼らは10%の手数料で「商品」を現地に運びます。
残念ながらこれらの運び屋はモロッコの貿易業者のため、パリ警察の捜査が及びません。
パリ地下鉄での盗難、前年対比59%増
パリの地下鉄での盗難は、今年1月から10月までの間、昨年2018年から59%も増加しています。特に市内の主要駅で頻発しています。
最も盗難が多い駅は、シャトレ-レ・アール駅(Châtelet-Les Halles)、およびオペラ駅(Opéra)で、警察はさらなる注意を呼びかけています。
執筆 : マダム・カトウ