12日(火)、パリ南西のイヴリーヌ県(Yvelines)ヴェルサイユ(Versailles)市にある、多くの観光客に人気のヴェルサイユ宮殿(Le Château de Versailles/Le Palais de Versailles)が、礼拝堂建設の為に349年前に注文した赤大理石のブロックを、数世紀にまたがる配達遅延を経て、ようやく受け取ることが出来る、と報じられました。
349年ぶりに発見された注文の品
今から数週間前、南フランスのオード県(Aude)のコーヌ=ミネルヴォワ(Caunes-Minervois)市の採石場で、従業員が清掃作業に取り掛かろうとした際、ブロック状に切り出されていた重さおよそ3トンの赤大理石を発見しました。
ミネルヴォワ大理石教会(l’association Marbres en Minervois)のキャリアマネージャー兼会長のカリドゥ・マッスー(Khalid Massoud)氏は、「採掘するために、私たちは再度清掃を行った」と説明しました。
切り出された赤大理石は調査の結果、17世紀に太陽王(Roi-Soleil)と呼ばれたルイ14世によって建立されたヴェルサイユ宮殿の礼拝堂のに使われる為に注文されたものだった、ということが判明ました。
王室や城建設に使われたコーヌ=ミネルヴォワの大理石
17世紀当時、コーヌ=ミネルヴォワの街は大理石の採掘で栄え、フランス各地の多くの城や記念碑の建設にコーヌ=ミネルヴォワの赤大理石が使われていました。
配達されなかった大理石
今回発見された赤大理石は、1670年、当時建設中だったヴェルサイユ宮殿から、礼拝堂の12本の柱に使用するために注文されました。その後なんらかの理由で礼拝堂建設が取りやめになったことから、この切り出された赤大理石は349年間、一度もヴェルサイユ宮殿に配達されることなく、人々から忘れられていました。
「配達」は当時の方法で
マッスー氏は「当時の注文は尊重されなければいけない」と述べ、この3トンの赤大理石は、17世紀当時と同じ方法でヴェルサイユ宮殿まで運んでいく考えを明らかにしました。
大理石を載せた木造の大型の台車は、馬によってミディ運河(Canal du Midi)まで運ばれ、その後は船でカルカッソンヌ(Carcassonne)、カステルノダリ(Castelnaudary)、トゥールーズ(Toulouse)を通り、ボルドー(Bordeaux)まで運ばれます。その後はビスケー湾(仏:Golfe de Gascogne、英:Bay of Biscay)を北上し、イギリス海峡(仏:Manche、英:English Channel)を通り、ルーアン(Rouen)まで運ばれます。
ルーアンからは、セーヌ川を伝ってパリまで運ばれたのち、ベルサイユ宮殿まで運ばれます。
納品は4~5年以内
17世紀当時と同じ方法で配達されるため、ヴェルサイユ宮殿に「納品」されるのはおよそ4、5年かかるとみられています。また、マッスー氏は立ち寄り先の主要な街で、イベントなどのプロモーションを行う考えです。
発注からおよそ350年遅れで納品される、この大理石。実際にどのようにヴェルサイユ宮殿で使われるかは今のところ未定です。
この壮大な「配達遅延」に、ツイッター上でも多くの人がコメントを寄せています。
Et le record de “On va avoir un peu de retard mais ça va le faire” est attribué à…https://t.co/KQZi3hEBla via @le_Parisien
— Hycarius (Histoire Appliquée) (@Hycarius) 2019年2月12日
「少々配達が遅延しておりますが、お届けいたします」の記録がパリジャン紙によって与えられた
とてもロマン溢れる配達遅延、お客様の手元に届くのは、まだ先になりそうです。
執筆:Daisuke