西欧人、なかでもフランス人は特に太陽が好きなイメージがあるのではないでしょうか。長い夏休暇を取り、サングラスをかけてビーチで寝そべっている…バカンスの典型的なイメージかもしれません。大統領や大物俳優などもバカンスで日光浴をしている様子が毎年遠慮なくタブロイド紙に載ります。
夏らしくなってきたフランスで、フランス人と日光浴に関して考察してみたいと思います。
いつも日なたへ
夏のフランスでは、日本と違い日傘をさすような人は皆無。街の公園でもビキニの女性や上半身裸の男性がサングラスをかけてごろごろしています。
ですが夏に限らず、フランス人は年中通して太陽が出ていれば日なたに流れていくような印象があります。
日光=バカンスのイメージなので、たとえ昼休みのような短い時間でも、頭を切り替えるために日なたに寝そべってプチバカンス気分になるよう努力する、という人もいます。
(写真)夏の海辺は太陽を求めるフランス人でどこも混み合う
日焼けにポジティブ
「きれいに焼けたね。どこ行ってきたの?」。フランスではバカンスが明けると日焼け自慢が始まります。
日焼けに対してポジティブな印象を持つ傾向は、フランスだけでなく西欧全体に当てはまるようです。その背景には、日焼けができるのはバカンスに行けるからで、バカンスに行けるということはそれなりに金銭的余裕があることを意味しているからだと言われています。
ただ19世紀までは、日に焼けていることは肉体労働者の象徴とされ、肌は白い方が良いとされていました。昔の王族や貴族の肖像画はどれも透き通るような白い肌ですし、印象派時代の絵でも女性は日傘をさしているものが多く見られます。
その傾向が変わったのは1920年代、日光を浴びることで生成されるビタミンDが体に良いとされ、医者が健康増進のために日光浴を推進し始めたのがきっかけのようです。
それをさらに後押ししたのが有給休暇制度の拡充です。1936年に年間12日の有給休暇を義務付ける法律ができたことで、誰もが安心して夏のバカンスを取ることができるようになったのです。
こういった社会的背景により、日光浴の習慣が急速に広まり、その結果日焼けした肌が好意的に受け入れられるようになったと考えられています。
(写真)日当たりの良い公園は必ずピクニック会場になる
過酷な冬への反動
ヨーロッパの冬は日本よりも寒く、しかも雨が多く降ります。寒く暗く過酷で、精神的にまいってしまう人も少なくありません。またクリスマスと新年のふたつが過ぎ去ったあとの冬は特に大きなイベントもありません。
7月や8月は、気温が40度に達する熱波(une canicule)に襲われることもあるものの、基本的には最高気温が30度前後でカラッと晴れた過ごしやすい陽気が続きます。
過酷な冬と比較して、毎日晴れていて爽やかな夏。今のうちにたくさん太陽を浴びておこうという思考になるのも無理はありません。
ビタミンD生成
冬は日照量が少ないこともあり、ビタミンDを補うためのサプリメントがいろいろと売り出されます。そのひとつが肝油で、北欧諸国ほどではありませんがフランスでも薬局などで肝油ドロップが売られています。
(写真)何もかもがきれいな夏
とはいっても人それぞれ
フランス人が日光浴好きといっても、それはあくまで一般論で、やはり人それぞれです。北部ノルマンディ地方出身の友人は暑さに弱く、25度を超えると日なたには行かないと宣言しています。
北東部アルザス地方出身の友人も、日焼けした健康的な肌には憧れると言いつつ、日に焼けると真っ赤になり痛くてどうしようもないので、焼けないよう気を付けていると言います。
住まいの「日当たり」は気にしない
また意外なことに、住居探しではあまり方角や日当たりを気にしている感じがありません。不動産屋の広告を見ていても、日本のように南向き・日当り良好といった表示はあまり見られません。
友人によると、どうせ1年の半分以上は曇っているから日当たりはあまり気にしない人が多いのではないか、とのこと。また街なかにも公園や緑地が多いため、日光を求めるのであれば散歩に出ればよいと考えている人も多いのかもしれません。
フランスの夏の始まり
夏至の日の音楽祭(Fete de la musique)を過ぎると夏の幕開けです。大きな仕事も7月14日の革命記念日までには終わり、7月後半には本格的なバカンスシーズンとなります。フランスの短い夏が間もなく始まります。
執筆 Takashi