2月14日はフランスでもバレンタインデーです。この日はキリスト教の司祭であったヴァレンティヌスが殉教した日とされています。彼はローマ帝国時代、婚姻を禁止されていた兵士のために結婚式を執り行っていたことから、この日が恋人たちの特別な日になったと言われています。
キリスト教に由来する日であり、フランスにおいては日本よりその歴史は長いと言えるでしょう。日本とフランスで何か違うことや、フランス独特の習慣などはあるのでしょうか。
日本ほどの特別感はない?
結論から言うと、恋人の日という位置づけは同じでも、女性が男性にチョコレートを贈るという日本の定型はフランスにはないという点が大きな違いです。ですからいろいろなお店がチョコレートの特設売場を作るようなことはフランスでは見られません。
また、先日見たフランスのテレビでは「バレンタインデーはアメリカが主導する商業イベント。アメリカと日本だけで盛り上がっている」と冷めた口調で言い切っていました。フランス人にとってはその程度の認識なのでしょう。
それでも何か特別なことはないのかとフランス人の友人に聞いてみたところ、二人で食事に行く、男性が女性に花を贈るなどはよくあるそうです。
ただフランス人は、普段から子供をベビーシッターに預けて夫婦で食事に行ったり、特に何があるわけでなくても気が向いたときに花を贈ったりしています。ですからやはり、それほど特別感は高くないということです。
モンマルトルにある「Je t’aimeの壁」は恋人たちの定番
データが示すバレンタインの盛り上がり
しかしながら近年はフランスでも、バレンタインデーが特別な日という認識がこれまでよりも高まっていることをデータが示しています。
カード大手のマスターカードが毎年発表しているバレンタインデーの時期の消費動向によると、フランスでは2017年以降に50%以上消費の伸びを見せているとのこと。全世界での上昇率は17%なので、フランスでバレンタインデーの特別化・商業化が他国よりも進んでいるといえそうです。
また切り花業界においてはバレンタインデーは1年で最も重要な日とされていて、実際にフランスの花屋は2月のみで年間売上の20%を稼ぐという統計があります。
外食産業も稼ぎ時で、通常は外食に49ユーロ以上出さないと答えたフランス人のうち、約半数がバレンタインデーには150−200ユーロまで出費すると回答しているそうです。この消費動向をとらえてか、2月14日には特別なメニューを提供するレストランが近年明らかに増えており、予約も普段より取りにくい印象があります。
コロナ禍以前の調査ですが、フランス紙 Le Figaro によるとバレンタインデーに何か特別なことを計画しているフランス人の99%が普段よりも財布の紐を緩めるそうです。
恋人たちの日という認識は変わらず
日本でもフランスでも、モノ消費よりもコト消費に関心があるとされるミレ二アル世代や、消費に対し慎重な姿勢を持つとされるZ世代が中心になりつつあります。バレンタインデーはキリスト教圏では14世紀頃まで遡るという古い習慣ですが、こうした世代に変わっても続いていくのでしょうか。
前出のFigaro紙によると、バレンタインデーが商業化していく中でも、やはり恋人にとっての特別な日という認識は続くだろうとのこと。世代は変わっても、恋人たちの気持ちは変わらないということでしょう。ただ今後は贈り物だけではなく、外食や旅行なども増えていくかもしれません。
執筆 Takashi