1月14日(金)、今年上半期のEU議長国となったフランス。年初に1000人を対象とした世論調査が行われましたが、今年20周年を迎える統一通貨ユーロ導入がフランス経済に「有益だったのか?」という問いに対し、意見が真っ二つに分かれています。
フランスに「幸も不幸も」もたらすEU
調査で最も多かった回答はEUはフランスにとって「有益でもあり不利益でもある」の39%でした。「不利益の方が多い」とみる人は33%で「有益である」の27%を5ポイント超えています。
EU観についてフランス人は3つのグループに分かれていると言えますが、以前の調査に比べEUへの「不信感は若干和らいでいる」と調査会社エラブ(Elabe)の社長ベルナール・サナネス(Bernard Sananès)氏は述べています。
氏によると、フランス国民は日常生活の中でEUがどれだけの利益をもたらしたか「ピンとこない」ようです。一方EU側もその「アドバンテージ」を前面に打ち出すことに成功しているとは言い難く、結果「EU統一規制」などの発表による「不利益ばかりが目につく傾向にある」ようです。
統一通貨ユーロはフランス経済に「不利益」50%
統一通貨ユーロに関して、アンケートに応じた人の50%が「フランス経済、購買力にとって良くない」と回答しています。逆に「良かった」と答えた人は49%と意見が真っ二つに分かれています。
グローバル化の「盾」としてのEUに期待
統一通貨ではEUに否定的な人も、経済のグローバル化の脅威からフランスを守る役割としてのEUには期待しているようです。
回答者の40%が、フランスはEU加盟国と経済的に良好な関係を「維持」し、「必要な物資を全てEU圏内で生産」できるようにすべきと答え、「世界中の国と交易を維持し続けるべき」という回答(17%)を大幅に越えています。
また43%の人は、フランスは必要な物資を「全て国内で生産すべき」と答えています。
コロナ禍でマスクをはじめとする物資に欠品が出たことや、現在も続く半導体不足でグローバル化のリスクが浮き彫りになったこと、さらにはワクチンなどの国内供給の必需性が高まったことなどが調査結果に克明に現れています。
GAFAMへの規制、国境治安維持の協力などの提案「歓迎」
世界最大のIT5社への規制強化には83%の回答者が賛成し、25歳未満の若者支援策としてすでにフランス国内で行われている「若年者社会奉仕活動」がEU加盟国でもできる「ヨーロッパ市民用役」の創設は大半が支持(81%)しています。
昨年から続くウクライナとポーランドの国境付近の不法移民問題などを受け、「EU加盟国内で国境警備のための緊急対策組織を創設すること」にも賛成(75%)が過半数を大きく超えています。
環境問題への関心の高まりから、79%の回答者はEU加盟国内の「環境汚染に繋がる物資」への課税に賛成しています。
より平等で保護主義的な社会へ、「協調」がカギ
EU圏内における最低賃金の格差是正への関心は高く、アンケート回答者の75%がEU加盟国共通の「欧州最低賃金」の創設に賛成です。
今回の調査でフランス国民がEUに「より格差が少なく、保護主義」な共同体を期待していることがわかります。
調査会社のサナセス社長は、フランス国民が歓迎する「提案」が実現することが重要としつつ、いまフランス国民が望む「より平等で保護的な社会」の実現に「より多くの国と協調することで実現可能になると人々にわかってもらうこと」がEUの課題だと述べています。
執筆:マダム・カトウ