Bonjourは世界中に知られているフランス語。日常生活の基本の言葉です。(FRANCE365の以前の記事にも「Bonjourはフランス生活に馴染ませてくれる魔法の言葉」があります)「こんにちは」なんて普通の言葉がどうして「魔法の言葉?」と思われるかもしれません。
Bonjour の習慣 〜 フランスと日本の違い 〜
日本では知らない人に「こんにちは」「おはようございます」と声をかけることは少ないように感じます。よく通りかかる会社の玄関で、警備員が出社してくる社員に「おはようございます」と声をかけても「おはようございます」と返す人がほとんどいない光景を目にします。フランスのBonjourを言い合う習慣を身につけたせいか、警備員さんを気の毒に感じて、つい「おはようございます」と返してしまいます。でもその警備員の方も業務上そうすることになっていて自発的なあいさつではないのかもしれません。それでも「おはようございます」と言葉を交わすのは気持ちが良いものです。
フランスではお店の従業員はもちろん、目が合った人、エレベーターが一緒になった人にも、とにかくBonjourと言う回数が多いのです。一回しか会わないかもしれない人と「一期一会」の瞬間をBonjourで共有するのは清々しい感じがします。
” Bonjour ” をパワーアップさせるもうひとつの『魔法の言葉』
さて、顔見知りの人、習慣的に同じ空間を共有するような一歩進んだ関係の人、もしくは初めて会う人でも少し心を込めてあいさつしたいときはどうしたらいいでしょうか。Bonjourとあいさつするのは当然ですが、もうひとこと付け加えると、好印象を与えることができるのです。そのもうひとつの魔法の言葉は何だと思いますか?
答えは「名前」です。Bonjour の後にその人の名前をつけて
Bonjour, Philippe
Bonjour, Madame Dubois
のように言います。その人の名前を知らない場合は
Bonjour, Madame
Bonjour, Monsieur
と言いましょう。その方が Bonjour だけよりもグッと印象が良くなります。
名前や Madame、Monsieur を Bonjour につけると、その人を自分には関係ない他人として扱っているのではなく、存在を認めている感じがするのです。
これは Bonjour だけに限ったことではなく
Au revoir, Madame
Merci, Monsieur
など、他のあいさつにも応用できます。
日本語ではわざわざ「おはようございます、山田さん」「こんにちは、信子さん」と名前をつけて言うことはあまりないので(特に強調したい理由がある場合を除いて)名前をあいさつの後につける効果がわかりにくいかもしれません。フランス語ではそうすることで丁寧できちんとした人という印象を与えることができるのです。
魔法の言葉をうまく使うコツ
「あいさつの言葉の後に名前をつけるなんて簡単なことだ」と思われるかもしれませんが、この魔法の言葉を有効に使うために大切なルールがあります。それは「名前を間違えてはいけない」ということです。名前を間違われることほど悲しいことはないと思いませんか。私も「Nobuko」なのに何度「Noriko」と呼ばれてがっかりしたことでしょう。
以前、友達になったばかりのフランス人と2回目に会ったときに、彼女が「Nobuko」と間違えずに呼んでくれてとても嬉しかったことがありました。1回目に会ったときは特に長話したわけではなかったので私の印象はそんなに強くなかったと思います。それでもその友人はフランス人にとって覚えるのが難しいと思われる日本人の名前も1回で完璧に覚えていました。とても嬉しかったので、彼女に好印象を持ちました。そしてその後、彼女をよく見ていると会う人ごとに「Bonjour, Yumiko」 「Bonjour, Satoshi」のように間違えずに相手の名前を呼んでいることに気づきました。
彼女と仲良くなってから「どうしてそんなに名前が覚えられるの?」と聞いたことがあります。彼女は少し恥ずかしそうに笑って「実は誰かと初めて会ったらその人の名前と特徴をノートに書いているの。名前を間違えられることほど嫌なことはないでしょう?」と答えました。彼女がノートに書いて覚えるようになったのは、自分自身が「Sophia」と言う名前なのに、間違って「Sonia」と呼ばれてとても嫌な思いをしたことが何回もあったからだということも教えてくれました。特に外国人の名前は間違えやすいので必ずチェックして覚えるようにしているという彼女の努力を知り、感心しました。そう言われてから彼女を観察してみると、いつもたくさんの友達に囲まれているのです。
自分の名前を大切に扱ってくれる人なら良い友達になれそうです。この人は良い人だと思わせる力がこの魔法にはあります。
まとめ
Bonjour と誰にでも声をかけられるようになるのが、フランス語コミュニケーションの最初の一歩だとしたら、次のステップはその人の名前を Bonjour の後につけることではないでしょうか。そのときは名前を間違えないように注意してください。もちろん名前を知らない人にも初めて会う人にも「Bonjour, Madame」や「Bonjour, Monsieur」と声をかけてみましょう。それだけで素敵な人と思ってもらえる簡単な魔法です。
執筆 ペレ信子
ブログ:Plaisir de Recevoir
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