フランスの医療システムと保険制度を理解しよう!日本との違いは?

2025.04.11

医療 イメージ最近、フランス在住の私にも、日本の保険料の引き上げについての話題が目につきます。健康や医療は、フランスでも日本でも健やかな毎日を送るにあたり国民の関心が高いといえるでしょう。両国とも世界的には医療レベルが高く、病気や怪我しても安心して治療が受けられる素晴らしいシステムがあります。今回は、2024年に私自身が受けた日本とフランスでの医療体験をもとにシステムの違いや治療で感じたことをレポートします。

 

フランスの医療制度の基本となる2つの保険

フランスの医療制度の基本は2つの保険から成り立っています。

1.国民健康保険 Assurance Maladie

2.追加保険  Mutuelle

1の国民健康保険はフランス国民に加入義務があり、写真付き保険証が発行されます。未成年でも16歳からは各自の保険証が申請可能です。フランス国民でなくても、3カ月以上フランスに滞在する留学生も加入が義務になっています。また、国民健康保険証は身分証明書としては使えません。

2の追加保険は国民健康保険の補填をする役割を担うもので、民間の保険会社で加入します。追加保険も加入義務があり、留学生も同様に義務になりました。

原則どの保険会社にするか選ぶ自由はありますが、サラリーマンの場合は会社が契約した保険会社を利用する場合がほとんどです。理由としては、保険料の50%を会社が負担してくれるため個人負担が減るメリットがあります。保険プランは家族構成や好みによって選ぶことが可能で、証明書が発行されます。

◆保険利用のシステムを簡単に説明すると…

軽い風邪などで内科医にかかった場合
医療費総額−(Assurance Maladie 65%+Mutuelle) =支払い請求額

専門的な技術を要する治療が入った場合
医療費総額−(Assurance Maladie 65% +Mutuelle)+個人負担分=支払い請求額

Mutuelle に関してはプランによって保証額が異なるため、眼科や矯正歯科などに定期的に通い医療費がかさみそうな人は保証額をよく確認しておきましょう。

病院や薬局では保険証とMutuelle証明書の提示を求められますので常に携帯しておくことをがおすすめします。

また、医療費はセクターと呼ばれるカテゴリーによって変わります。例えば、セクター1は標準料金で自己負担の少ないもの。セクター2は専門的な知識や高度な医療技術を必要とするものに当てはまり、医師が自由に料金を設定できますが大体の相場はわかるようになっています。

 

国民保険証なしで受診!日本の医療制度に感じた利点と懸念

診療 イメージ2024年、私は日本に帰国中に体調を崩し、何度も日本の病院にお世話になりました。しかし、日本の国民保険証がないため覚悟はしていましたが、自由診療になり支払いはかなり高額に…。

日本の自由診療は各医療機関で金額を決定できるため金額にばらつきがあり、不透明な部分も多く感じました。そして、都内の病院でも清算が現金受付のみの病院もあり、今後のインバウンドの観光客のことを考えるとカード決済導入を積極的に導入してもらえれるといいなと思いました。

日本の病院に驚いた対応の早さ!

自由診療の医療費ではスッキリしない部分もありましたが、日本の病院では利点もありました。それは対応がスピーディだったことです。待ち時間はあるものの、病院やクリニックに行けばその日のうちに診察を受けることができて、ちょっとした精密検査も同日にできることは体が不調な時には本当にありがたいシステムでした。

早いうちに患者さんの痛みを和らげたいという、医療者側の配慮も感じられました。精密検査の結果、入院を何度も勧められたものの諸事情によりできなかったので、数回通院することに。入院していれば、治りはもっと早かったかもしれません。

 

フランス在住の人が国内/海外で医療を受けるときの注意点

スムーズに受診するためにホームドクターを特定しておく

フランスの医療は各自かかりつけ医、つまりホームドクターを通してが基本です。

例えば…
STEP1 具合が悪い → ホームドクターにアポ
STEP2  診察 → 診断結果 CTスキャンが必要 紹介状を書いてもらう
STEP3 CTスキャンを行っているラボラトリーに予約 → 実施
STEP4 結果によって薬や治療法を決定

フランスではこのように分業になっているため、上の流れを最短でできたとしても2週間はかかります。

ホームドクターがいるメリットは、医者と患者の信頼関係が築きやすく自分の体の状態や変化を包括的かつロングスパンで理解してもらえることです。

ホームドクターを特定するのは義務ではなく推奨ですが、万が一の緊急診療の際にも柔軟に対応してもらえるでしょう。ホームドクターを特定しない場合、新規の患者さんはお断りというケースも出てくるので注意が必要です。

海外で受けた診療費の一部還付には条件がある

先ほど話した Assurance MaladieMutuelle は、海外で病気やケガをしたときも、場合によっては一部の診療費を還付してくれます。

どこの国に行ってもあなたの健康をサポートしますよという有難いシステムですが、実際は手続きに少し手間がかかり、還付されるまでには時間がかかります。オンラインでも申請可能なので、私もやりましたが、何度も書類のやり取りを繰り返し、半年後にようやく一部の金額が戻ってきました。

また、EU加盟国に旅行に行く際は、あらかじめ申請するとEUで使える保険証が発行され、それを使って現地で診療を受けることができます。

私はまだEU保険証カードを使用したことはありませんが、保険の還付の対象になるケースは、突発的なケガや病気が主になります。歯医者さんの歯科検診など、緊急性のない医療行為は適用外のようです。

 

フランスの薬局はほとんど待ち時間がない!のワケ

日本で診察のスピーディさに感心していた私ですが、薬局での待ち時間の長さには驚かされました。ゆったりしたスペースと飲料水のサービスなどの配慮は感じられたのですが、処方箋を提出して薬を受け取るまでが30分から1時間かかりました。

フランスの薬局では、場所によっては待っても数分くらいで薬を受け取ることができます。なぜなら、服用分だけではなく、薬を箱ごと出してくれるからです。

薬局によっては、担当の方が処方箋をパソコンに打ち込むと、後ろから自動販売機のように薬の箱が出てくるところもあります。その場合はそれを確認して渡すだけなので、あっという間です。

日本のように、薬剤師さんが服用分だけ渡してくれるきめ細やかさはありません。気がつくと薬が家に溜まってしまうデメリットはありますが、不要になった薬は薬局に持って行くと引き取ってもらえます。

 

まとめ

高度な医療技術を持つ日本とフランスですが、やはり基本は自分の健康は自分で保つようにすることが大切だと感じます。日本も今後また医療の制度が変わってくると思います。フランスも2016年以降は、追加保険の加入が個人ベースだったものが雇用先との連携に変わりました。自己管理がうまくできれば医療システムに依存しすぎることなく、多少の負担額の増加やシステムの変更にも柔軟に対応できるのではないでしょうか。

執筆 YUKO

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