フランスには、出産・育児の休暇が3種類あります。中でも、2021年7月1日から出産育児に伴う父親休暇の法律が改善されたニュースは、日本でも話題になったかもしれません。母親が中心に利用してきた出産時の休暇制度に、父親休暇の日数が延長されたのです。では2年たった今、現状はどうなっているのでしょうか?今回は、出産前後の父親休暇についてレポートします。
フランスの出産前後に取得できる休暇制度
フランスで定められている出産前後の休暇制度について説明しましょう。
1.母親が出産前後に取得する休暇
出産前 | 出産後 | |
第一子 | 6週間 | 10週間 |
第二子 | 6週間 | 10週間 |
第三子 | 8週間 | 18週間 |
2.父親が出産時に取得できる休暇
期間 | 形態 | 期限 | 注意事項 |
25日間 | 連続してまたは、分けて取得化 | 出産から6か月以内に取得 | 出産予定日の1か月前に申請 |
義務化されたのは、出産時休暇3日と父親休暇4日の7日間です。
3.子供が3歳まで取得できる育児休暇
子供の数 | |
1人 | 1年間。2回再申請が可能で子供の3歳のお誕生日まで取得可能。 |
2人 | 1年間。2回再申請が可能で子供の幼稚園入学まで取得可能。 |
3人以上 | 1年間。5回再申請が可能で子供の6歳のお誕生日まで取得可能。 |
父親休暇の義務化で育児分担を後押し!
近所の方で、最近赤ちゃんが生まれたカップルがいます。しばらくして、お父さんの姿をよく見かけるようになりました。まず、仕事で使ってる会社のロゴが入り自動車が家からなくなり、お父さんは家の外でスマホ片手にたばこを吸っていたり、ベビーカーで一人でお散歩する姿を見かけました。「ああ、父親休暇中なんだな。」と理解しました。
父親休暇は前項で説明した休暇の2番目にあたり、事前に申請をすれば最大28日間取得できます。そのうちの7日間の休暇が義務化されました。男性も積極的に育児参加できる仕組みが作られようとしているのです。
政府が義務化したことによって一定期間でも新生児のお世話をし、仕事を離れて子育てに参加できる父親休暇は男親、女親両方にとって有難いシステムといえるでしょう。フランスでは里帰り出産という概念がありません。カップルで協力して新生児のお世話をするのが当然な流れになってきています。
育児休暇取得における問題点や働くママの声
今でこそ女性の社会進出がデフォルトになっているフランスですが、50年前はまだ「育児は女性がするもの」という概念がありました。父親の育児休暇はあることはありましたが、1946年時点は3日だけ。そして2002年は14日、2021年では28日と、徐々に期間が延びてきています。
このように育児休暇に対する公的援助はしてきましたが、会社に雇用されるている人ならうまく使える制度でも、以前は個人事業主や失業者には機能してないことが問題点でした。現在は改善される方向にありますが、援助の具体的な数字を知るにはまずは書類申請をしてからというステップは外せません。
女性の育児休暇取得には葛藤も?!
休暇中は給与をベースに計算されて手当が出るため、現状として男女の給与格差があるフランスでは、男性が働いて女性が育児休暇を取得し子育てするスタイルが主流です。
現状として育児休暇を最大期間まで取る人は少なく、1年で職場復帰をする母親が多いです。3年のブランクはキャリアアップにマイナスになるのでは?という思いや、社会との接点を持ちたい、経済的な理由で働くことを選択するなどさまざまな理由があるようです。
育児休暇を取ってみた感想は?
父親育休を取った人からは「仕事よりも、育児が大変だとわかった。」「時間があっという間にたち、育休の期間がもっと必要と感じる。」という感想がありました。
女性側も「フランスは、ヨーロッパの他の国と比べて出産に伴う休暇期間が短い。もっと期間を延ばさないと男女平等には程遠い。」という声が上がっています。
まとめ
日本に比べれば育児休暇の制度は充実していますが、フランス人たちはこの制度の更なる改善を求めています。今までは補佐的な立場での育児参加だった男性も、父親休暇義務化により少しずつ積極的に関わってきています。今後のさらなる変化を期待したいですね。
執筆 YUKO
参照
l’Assurance Maladie:Le congé maternité de votre salariée