フランスでは、全体のおよそ半数の世帯でペットを飼っているという統計が出ています。犬や魚、2000年以降は猫を飼う人が増えているそうです。フランスではレストランやカフェにペットを連れて行くのが当たり前という、飼い主にはありがたい風土があります。一方で、バカンス前のペット放棄が深刻な問題になっている側面も。今回は、2022年現在のフランスのペット事情についてレポートします。
フランスではペットの購入法もSNSの時代!
「見てちょうだい!この子かわいいでしょう?さ、抱いてあげて!」
義理母から差し出されたのは、子犬のチワワ。新種なのか、毛がほとんどなく大きな目が印象的でした。彼女の説明によると掲示板サイトなどでチワワを探して、これ!と思ったブリーダーとコンタクトを開始したのだそう。
生まれる前からブリーダーとこまめに連絡を取り合い、無事に生まれたらご対面。そして晴れて家族の一員として迎えるという流れだったそうです。この犬を受け入れるために、自分がいかにこの犬を必要としているか、そしてしっかりとお世話ができる環境にあることを手紙にしたため、花束のプレゼントも加えてプリーダーにアピールしたようです。
以前のパートナーの犬とのお別れから4年経ち、新しい犬との生活を選んだ義理母。普段あまり家から出たがらないのに、猛暑の中を車で2時間運転して引き取りにいったことにびっくりしました。
ワクチン接種や医療費など、経済的な負担も覚悟で決めたようです。今でもブリーダーとはこまめに連絡を取り、犬の成長ぶりを報告するなど満足しているようです。
ペットショップでの販売が禁止に!
フランスでは自分が興味のあるタイプの犬や猫が決まっている場合、個人のブリーダーから直接ペットを購入することが多いです。犬の購入価格は品種にもよりますが、1,000ユーロ~2,000ユーロの予算だそうです。
フランスでは2024年からペットショップでの店頭販売が禁止されます。SNSや掲示板を通してのペット購入が現在すでに8割を占めている状態から、完全にネット取引へと移行していくことになります。
保護犬を受け入れるために必要なこと
フランスでは、残念ながら多くの捨て犬や捨て猫が保護されています。4万もの数の捨てられた猫や犬が、毎年どこかの家庭に受け入れられいるという統計が出ていますが、捨てられる数はそれを上回る8万~10万と言われ、まったく追い付いていない状態です。
地道に信頼関係を築くことが大切
フランス全土にS.P.A ( société protectrice des animaux ) エスペーアーと呼ばれる保護施設があり、私の知り合いの何人かもそこで動物を受け入れました。多くの動物は以前ペットとして飼われていたのに何らかの事情で捨てられたというトラウマを持ち、相当デリケートになっています。
新しい飼い主に心を許すまでにもかなりの時間がかかります。小さな物音でびくびくしたり、家のお留守番に抵抗を示すなどのサインを見逃さず、少しずつ信頼関係を築いていかなければなりません。
捨て犬や猫を受けいれたいと思っている人はいるものの、家に迎え入れるには子犬や子猫を飼うのとは違った、地道な働きかけが必要なため諦める人もいるそうです。
またS.P.Aで犬たちを散歩に連れ出すボランティアをしているうちに、この子だ!という犬に出会い、家族に迎えることにしたケースもあるそうです。
S.P.Aは飼育ボランティアや里親サポート制度などを設け、直接引き取れなくても保護された動物をサポートできるシステムもあり参加を呼びかけています。
フランス人がペットのために実践していること
1.ペットも一緒に外出
フランス人はカフェ、レストラン、ホテルでも動物を同伴していることが多く、本当に家族の一員として大切に扱っていると感じます。私は、ホテルで足元に大きな犬、肩に鳥をのせてチェックインしている女性を見かけたことがあります。
2.ペットの健康ケアをする
フランスでは、ペットもストレスを抱えることが多いので日頃から体調管理や体のケアが大切だと考る人も出てきました。ペットを対象にオーガニックなペットフード、動物に特化した指圧の施術などのサービスが展開されています。
病気になったら動物病院にお世話になりますが、事前にケアできる環境も整えたいという考えが広まってきているのです。
3.外泊時はペットシッターを利用する
旅行に連れていけない場合、狭いペットホテルに閉じ込めておくのは少しかわいそうな感じもしますよね。そこで、自由に動き回れる環境を提供するペットシッターに依頼する人もいます。しかし、それなりの料金がかかります。
私の知り合いも長期の海外出張で家に不在中、自分の家と犬のお世話をまるごと託して依頼していました。私も義理両親の旅行中に、犬と家の世話で2週間ほど住み込んだことがあります。
ペットのお世話は状況によって大変なこともあります。しかし普段から信頼できる友人のネットワークや家族のサポートがあれば乗り切ることができると思います。
まとめ
フランスではペットを放棄をする人たち、反対にペットに至れり尽くせりのことをしてあげたいという飼い主の2極化が進んでいるように感じます。私の周りにはペットを家族の一員として扱っている人ばかりで動物放棄の問題に疎くなりがちでした。しかし、政府の動物放棄防止キャンペーンを目にするたびに深刻な問題だと感じます。
私は動物と触れ合っているとき、とってもリラックスできます。ペットたちにとっても、飼い主と楽しい時間を過ごすことがなにより大切なのではないでしょうか。保護施設やペットに関する規則の見直しと同時に、個人レベルでペットをサポートする意識が大切だと感じました。
執筆 YUKO