フランスでは2022・23年とインフレが年率5%を超え、24年に入っても約2.5%のインフレが続いています。また2024年7月にはユーロ導入以来初めて1ユーロ=175円をつけるなど、円安ユーロ高の状況も続いています。そのためパリの物価は円換算すると恐ろしいことになっています。そこで今回は、そんな物価の高いパリをリーズナブルに楽しむアイデアをいくつかご紹介します。(記事中の情報はすべて執筆時のものです)
交通費を少しでも節約
パリの市内交通の1回券は通常時2.15ユーロ。現時点の為替レートでおよそ350円という値段です。にもかかわらず地下鉄の駅の間隔は日本よりもずっと短く、ホームから隣の駅が見えることも珍しくありません。そこで地下鉄やバスで2〜3駅程度の距離であれば、まずは歩いてみることをご提案します。
自転車を利用してみる
メトロに1日何回も乗るようなら、公共のレンタサイクル Vélibの利用も選択肢に入れてみましょう。最初に5ユーロ払うPASS 24H CLASSIQUEというプランなら、1回30分以内に自転車を返却すれば24時間以内で何度でも借りられます。自転車で30分も走ればパリ市内の大体の場所には行けるので、歩くには遠いけど地下鉄に乗るほどでもない、という距離であれば試してみると良いでしょう。
ただVelibにはいろんな料金プランがあり、メトロのほうが安上がりな場合もあるので要注意。また、自転車の運転はくれぐれも気をつけて。
飲料水やコーヒー代も高い…
観光の際に持っておきたいのが飲料水。ただし、街のカフェで冷えたペットボトルの水を買うと500mlで2~2.5ユーロはします。そこで、水を買うならば大きめのスーパーに行きましょう。そして入口付近の冷蔵庫にあるものではなく、店の奥の方にある飲み物コーナーを探してみてください。冷えてはいませんが、500mlであれば1本30セント程度、1~1.5リットルのボトルでも1ユーロ以下で買えます。
さらに節約するなら、街のいたるところに設置されている水飲み場(給水場)でマイボトルに補給ができます。中には炭酸水も提供しているところもあり、パリ市のマップで確認できます。
街なかにある無料の水汲み場
パリの街歩きで疲れたらカフェで一服…といきたいところ。ですが有名な観光地のカフェでは、一番手頃なエスプレッソですら6~7ユーロを覚悟しなければいけません。
一方、10年ほど前には普通のカフェのエスプレッソは1ユーロというのが定番でした。これをパリの文化として守ろうと、パリ市が「1ユーロでコーヒーが飲めるカフェ」をマップにまとめて公開しています。地図を見ると、1ユーロでコーヒーを提供しているお店はかなり少数派となってしまっていることが分かります。
安く食事できるお店は
パリでは普通のビストロでも、メインだけで20~25ユーロの出費は覚悟する必要があります。パン屋さんでサンドイッチを買えば5ユーロ程度で済み、またいろいろな種類があって美味しいので、サンドイッチを買って近くのベンチで食べるというのもパリらしくて良いと思います。
大衆食堂 Bouillon
とはいえ、冬の間や天気の悪い時に外で食べるのは無理。そんな時に入りたいのが、リーズナブルな価格で食事ができるBouillon(ブイヨン)という大衆食堂です。前菜・メイン・デザートで20ユーロ程度、ワインを頼んでも25ユーロでお釣りが来ます。もちろんきちんとした内装でテーブルサービスの食事です。
おすすめはアクセスも雰囲気も良いオペラ座近くのBouillon Chartierとモンパルナス駅前の Bouillon Montparnass。もともとが大衆食堂という性格のため予約は受け付けておらず、食事の時間帯になるとお店の前に長蛇の列ができます。ただ、最近ではリュクサンブール庭園に近いBouillon Racineやムーランルージュの近くにあるBouillon Pigalleなど、予約できるブイヨンも出てきました。
オペラ座近くにある Bouillon Chartier の入口と内装
マドレーヌ寺院の地下
また有名なマドレーヌ寺院の地下に Foyer de la Madeleineというフォワイエ(「社交場」の意味)があります。平日のランチタイムのみの営業ですが、前菜・メイン・デザートで13.5ユーロ。ただし、追加で4ユーロの adhésion(メンバーシップフィーのようなもの)を支払う必要があります。このadhésionは年間では10ユーロとなるため、3回以上行くのであれば年間登録してしまう方がお得です。
これは教会の慈善事業のひとつであり、そのため働いている方もボランティアです。ホームレスの方や生活保護受給者には無償で食事が提供されています。
食事の内容を期待して行くところではありませんが、マドレーヌ寺院の地下の回廊にテーブルが並べられている不思議な空間で食事ができ、おもしろい経験となることは間違いありません。また、食後には同じ回廊にあるバーでコーヒーを無料でいただくことができます。テーブルでゆっくりしていても誰にも変な目で見られないのも良いところです。
文化施設が無料になる日も
パリでは第1日曜日は多くの文化施設が無料開放されます。事前予約は必須ながら、オルセー美術館やオランジュリー美術館、ポンピドゥーセンターなど有名な美術館も無料になります。その他、小さくあまり有名とは言えない文化施設も無料となるところが多く、少し気になる場所にお試し感覚で訪問する良い機会と言えるでしょう。詳しくはこのサイトによくまとまっています。
常時無料のところも
常時無料の文化施設も多くあります。たとえばパリ市立歴史博物館であるカルナヴァレ美術館(Musée Carnavalet)、プチパレ美術館(Petit Palais)、香水会社のFragonardがPRも兼ねて運営している香水博物館(Musée du Parfum)などです。文豪バルザックの家やヴィクトル・ユーゴーの家などの史跡も無料です。また教会や大聖堂は基本的に入場無料です。
意外な穴場として図書館も良いかもしれません。特に一昨年オープンした国立図書館のリシュリュー館はオペラ座近くという立地の良さ。圧巻の広さを誇る閲覧室に無料で入ることができ、その雰囲気を楽しむだけでも十分に楽しい空間です。
アーティストのアトリエ
おもしろいのがリヴォリ通り59番地。銀行所有の建物を90年代にアーティストが不法占拠し、アトリエとして利用し始めました。のちにパリ市がその建物を買い取り、現在ではホームページまで持つ合法的なアトリエとして一般公開されています。
パリの目抜き通りであるリヴォリ通りの、高級百貨店のサマリテーヌとルーブル美術館の間という一等地。そこに突如として現れる学園祭のような飾りつけの建物は、一見異様です。ですが中では最新のモダンアートやアーティストの作業風景を見ることができます。
リヴォリ通り59番地
お金をかけなくても楽しいパリ
観光にはお金がかかります。ただパリは街全体が博物館のようなところなので、有名な観光施設に入らず歩いているだけでも十分に楽しめます。どうしても入りたい観光施設やレストランには行きつつ、それ以外は節約するというメリハリをつけた旅行もいいでしょう。
執筆 Takashi