交通違反には要注意!パリで増える自転車利用

2022.09.05

フランス パリ 自転車生活の足として便利な自転車。欧州ではオランダやデンマークなどが自転車大国として知られていますが、フランスでは自転車はどちらかといえばスポーツとして見られてきた傾向があります。毎年パリでゴールを迎えるツール・ド・フランスがその最たる例でしょう。

しかしここ最近は、環境対策や健康増進のため自転車を見直す動きが広がっています。そんなフランスの自転車事情を、主にパリの事例を中心に紹介します。

 

自転車に優しいパリの街づくり

パリではベルナール・ドラノエ前市長の時から環境改善のために自転車が注目されはじめ、街角の無人貸出自転車「ヴェリブ(Vélib)」の設置や、自転車レーンの整備が始まりました。

その仕掛け人は前市長の助役だったアンヌ・イダルゴ氏といわれており、2014年に市長に選出されてからはパリを緑の都市にするという大構想のもと、市内での自転車利用促進が精力的に進められています。

実際、自転車レーンの拡充は目覚ましいものがあります。パリのメインストリートのひとつでバスティーユ広場からコンコルド広場までつながるリヴォリ通りは、もともと車専用の3車線道路でしたが、今では2車線が自転車専用レーンになっています。残りの1車線も通行はタクシーやバスなど営業車に限られており、もはや自家用車ではリヴォリ通りに入ることはできない状況です。

凱旋門の下を抜けるバイパスやセーヌ川沿いのバイパスも、以前は自動車専用道路でしたが現在は自転車と歩行者専用になっています。

写真:街角のヴェリブのステーション

写真:リヴォリ通り。左側2レーンが自転車用

とはいえパリは坂も多く

パリには一方通行の細い旧道や、車の侵入を止められない幹線道路などもたくさんあります。そういった道路は自転車レーンの整備が難しい、もしくは追い付いておらず、自転車はバスレーンを走ることになっています。

ただバスレーンで自転車に乗っていると、後ろにバスが付いてきていてびっくりするということもよくあり、あまり快適とは言えません。

また、歩いているとそれほど気になりませんがパリはけっこうアップダウンがあります。モンマルトルの丘やパンテオンの丘はもとより、シャンゼリゼ通りも凱旋門に向かってなだらかに上がっており、自転車に乗っていると立ち漕ぎを迫られることもよくあります。

盗難対策も必須

自転車に盗難はつきものです。自転車大国オランダでの90万台と比較すると少なく見えますが、フランスでは年平均で推定40万台が盗難されているとのこと。

盗難対策は必須で、自転車屋を覗くと日本で私がみたこともないような頑丈なロックがたくさん並んでいます。また盗難を恐れて安い中古自転車を探す人や、自転車を買わない人も周りにはいます。

駐輪場も十分にあるとは言えず、標識やガードレールなどに結びつけられている自転車をよく目にします。

写真:歩道の柵にはたくさんの自転車が結び付けられているところも

 

自転車購入に補助金が出る

パリで自転車を使うことは日本やオランダほど快適ではないのは事実です。しかしコロナ禍で公共交通機関を嫌う人が増えたことに加えて、国や地方公共団体が自転車購入者へ補助金を提供する制度もできたことで、自転車の利用は増えてきています。

例えば電動アシスト付自転車を新品で購入する場合は、パリ市から最大400ユーロ、イル=ド=フランス県から最大100ユーロの aide de l’achat(補助金)を受けることができます。これらに加えて低所得者には国から最大1000ユーロまでの支援があります。

こういった政策のおかげか、2020年は全国の新車販売台数が160万台であったのに対し、自転車(電動アシスト付を含む)は280万台と好調なようです。

それ以上に注目されるのが平均購入価格の上昇傾向です。20年のデータでは平均560ユーロ。安いものでは200ユーロ以下からある自転車にしては高い印象があります。これは電動アシスト付自転車のシェア拡大によるところが大きいようです。他に自転車の高級化もあるようです。

運搬用のカーゴ付自転車も、18年の販売台数が01年の4倍以上になっています。個人の移動に加えて、配達などに自転車が使われる機会も増えていることが分かります。

 

「Jitensha」というフランス製自転車も

フランスには実は自転車メーカーがたくさんあります。最も有名なのが自動車で知られるプジョーで、街乗り用から競技用まで幅広く生産・販売しています。

自転車の高級化ということにもつながりますが、ボディカラーやサドルの素材、変速ギアの枚数などをカスタマイズできるメーカーもあります。ここにも日本ブームが来ているのか、その名も「Jitensha」というブランドまであります。

「Jitensha」は日本人の私の目からはどう見てもクラシックなヨーロッパの自転車で、試乗もしてみましたがやはり日本のママチャリとは別物でした。ただ自転車自体は色や素材にカスタム化が効き、おしゃれに仕上がっている印象でした。

問題は運転者のマナー?

自転車が増えるにつれて問題となってきているのが運転者のマナーです。

日本と同じくフランスでも自転車は車に大別されますが、免許制度がないこともあり、歩道も車道も信号も気にせず縦横無尽に運転する自転車によく出会います。街を歩いていると車よりも自転車に気をつけた方が良いと思われるほどです

警察による自転車の違反取締も増えており、先日は私の友人が信号無視で90ユーロの罰金を払っていました。

自転車から見る光景は徒歩や車とはまた違ったものがあり、ヴェリブは誰でも使えるのでパリ観光の際にもぜひおすすめしますが、交通ルールだけは確実に順守したいものです。

執筆 Takashi

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