インフレで売れている卵の30個パック、価格は4.30EUR（約625円/１ユーロ＝約145円）ぐらいから（筆者撮影）
11月18日（金）、昨年から続くインフレでフランス人の消費行動に変化が見られています。消費者は節約に走り、その結果今まで売れていた商品も値上がりで売れ行きが悪くなったり、逆に思わぬ商品が売れ行きを伸ばしています。
2021年夏からのインフレ、消費行動に大きな変化
消費者物価の大幅な値上がりにもかかわらず、お財布の中身は増えないことから、今まで買っていたものをあきらめて別のものを買うという消費行動の変化が顕著になっています。
電気代の高騰、マフラーやセーターの売り上げアップ
フランスでは例年10月から気温がぐっと下がり始めますが、今年は最高気温が20℃を超えるなどフランス気象史上最も暖かい10月でした。
とはいえこの冬の暖房費節約に備え、「マフラーやセーター、ダウンなど防寒用の衣服の売り上げが好調」とフランスの衣料関係の商店連盟（Alliance du commerce）の会長ヨアン・プティオ（Yohann Petiot）氏は述べています。
フランスのダウンジャケットブランド「ジョット」（Jott）社は、９月上旬から10月上旬の１ヶ月で、売り上げが前年比で30％もアップしています。
フランスの大手下着メーカー、ダマール（Damart）社は、防寒下着「テルモラクティル」（Thermolactyl）の売り上げが「前代未聞」の前年比50％増になったと発表しました。
高くて買えない肉、卵に切り替え？
フランスの調査会社カンタール（Kantar）によると、特に低所得層では「メインディッシュ１品」が主流になっており、本来主品の肉は卵やパスタに取って代わっています。
フランスでは通常、卵は４個、６個、10個、12個のパックで売られていますが、今年以降30個入りの大型パックの売れ行きが好調です。
卵は6個パックが安くても２ユーロ（約290円）ぐらいするため、１個あたりの価格が大変お得になるからです。
2022年の第一四半期におけるフランス人一人たりの肉の消費量は、前年比で牛肉、豚肉、羊肉でマイナス1.5kg、鶏肉および鴨肉でマイナス１kgとなっています。
別の調査会社ニールセン（Nielsen）社は、「肉だけでなく、野菜や果物など最も値上がりが激しい生鮮食料品全般の販売量が落ちている」と分析結果を公表しています。
値上がりしても、安上がりなパスタ
同社によると、安価なパスタの販売量は全体的には1.5%と上がっていますが、増えたのは大手スーパーのプライベートブランド（PB）など最安値の商品で、フランスの有名メーカーの一つ、パンザーニ（Panzani）社は販売量がわずかに減少していると発表しています。
大手スーパーのPB好調、ディスカウントストアは勝ち組
最安値ばかりが売れることから、大手スーパーは自社ブランドの商品を強化し、その結果PBのシェアが伸びています。
また、アルディ（Aldi）、リドル（Lidl）といったディスカウントストアはいずれも好調で、９月上旬から10月上旬の１ヶ月でシェアを0.5ポイント伸ばすなど勢いを増しています。
最安値に走る傾向は食料品以外でも顕著になっており、衣料品のキアビ（Kiabi）やジェモ（Gémo）、日用品全般を扱うアクション（Action）、ジフィ（Gifi）などがその恩恵にあずかっていると、フランス専門店連盟（Procos）の会長エマニュエル・ル・ロッシュ（Emmanuel Le Roch）氏は述べています。
節約のため禁酒？「安価な楽しみ」にシフト
ファミリー層のお財布の紐は特に堅く、生活必需品でないものの消費は低調です。
衛生関連商品、消臭剤、洗剤やシャンプー、化粧品などは、これまで何種類も買っていたとしたら必要最低限に抑え、また「嗜好品」であるビールやワインなどアルコール類の販売量も減っています。
この傾向は「ファミリーの消費動向に顕著に表れている」と、ニールセン社のニコラ・レジェール（Nicolas Léger）氏は説明しています。
ただし、高いアルコールはあきらめても、その分清涼飲料を買うという「安価な楽しみ」に切り替える傾向が見られることから、節約のために何もかも我慢するわけではないようです。
執筆：マダム・カトウ
