観光名所に溢れる地元のフランス人客(筆者撮影)
6月11日(金)、昨日のフランス国立経済研究所(インセ:L’Institut National de la Statistique et des Études Économiques)の発表によると、2021年1月〜3月の第一四半期で86,000人の雇用が創出されました。主に建設業における雇用の回復は、GDP減となったフランス経済が、コロナ禍による不況からの脱出に期待をもたらしています。
フランス民間企業の雇用86000人増、公共部門微減
フランスの2021年第一四半期の雇用は86,100人増え、雇用総数は2530万人となりました。内訳は、民間企業の採用は89,000人で0.5%増で、公共部門では2,700人減となっています。
ちなみにこの統計は期間中に1時間でも有給で就労した人数を数えています。よって有給で休業中の人数もカウントされています。
雇用回復がめざましいのは建設業で、この業界だけで20,000人(+1.4%)の雇用を生み出しています。
一方、フランスの雇用の大半を占めるサービス業などの第三次産業部門では、48,000人増(+0.5%)に留まっています。
感染者増、商店閉店でも雇用増はなぜ?
今年の第一四半期のフランスは、3回目のロックダウンの真っ最中で新規感染者増が続き、病床も逼迫、夜間外出禁止が18時まで、飲食店や商店も営業していませんでした。
それにも関わらずの雇用が増加した理由は何でしょうか?
自治体ごとのロックダウン、ワクチン接種で先の見通し
インセの雇用分析総合部長のシルヴァン・ラリユー氏よると、まず、この時期のロックダウンは、自治体ごとに状況に合わせて行われいた事が挙げられます。そのため、昨年3月〜6月の第一回目ロックダウン時のように国全体がシャットダウンしたわけではありませんでした。
次に、昨年12月末に始まったワクチン接種が徐々に進み、2月〜3月にはコロナ禍からの脱出の見通しが立ってきた事です。見通しが立つ事で、閉店を余儀なくされている業種の雇用主が解雇を見送り、再開まで国の休業支援を利用して雇用を維持しています。
2020年コロナ禍で失われた雇用24万人、建設業、公共部門は増
とは言うものの、1年以上続くコロナ禍の痕跡が消えたわけではありません。昨年同時期(1月〜3月)には488,000人、第二四半期には 202,000人の雇用が失われています。
5月中旬にロックダウンが解除され417,000人の雇用が回復しましたが、第四四半期にさらに22,000人の雇用減となっています。昨年1年で243,000人の雇用が喪失しています。
建設業だけは例外で、対2019年で51,000人の雇用が創出されています。また、公共部門の雇用は36,000人増えており、更に第三次産業以外の業種も勢いづいています。
フランス経済、今後の見通しは?
ラリユー氏は「4月〜6月、第二四半期も半分以上がロックダウン中でしたが、政府が営業規制や行動規制段階的解除の日程を明らかにした事、そして解除後の政府補助の減額や終了時期を段階的にした事から、雇用主がより明確に見通しを立てられるようになっています」と説明しています。
6月に入り、バーやカフェ、レストランの本格営業、美術館や博物館、コンサートや映画などの再開でパリの街は活気を取り戻しています。「リベンジ消費」なのか平日にも関わらず多くのレストランは満席、外国人観光客不在の観光名所はフランス人客で賑わっています。
今年1年は「解雇の波」が押し寄せると予想されていましたが、第一四半期の数字を見ると「この波は予想よりも緩やかになるのではないか?」と、ラリユー氏は見ています。
執筆:マダム・カトウ