フランスの地域言語を守れ 法案をめぐり各地でデモも

2021.06.14

ブルターニュ 女性

フランスにはフランス語のほかにも、特定の地域で話されるさまざまな「地域言語」があります。教科書で学ぶフランス語に近いものもあれば、聞いただけでは理解が難しいものまで、豊かな特徴を持っています。

地域言語については歴史的に議論が続いていますが、ここ数ヶ月はとくに保存をめぐる運動が活発になっています。21年5月28日には、保護法案の修正に関して各地でデモが行われました。

この記事では地域言語を保護する取り組みや、最近の動向についてご紹介します。

 

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  • フランスの地域言語は?

    フランスの地域言語には、例えば以下のようなものがあります。

    バスク語(le basque):南西部、スペインとの国境地域で話される。
    ブルトン語(le breton):西部のブルターニュ地方で話される。
    オック語(l’occitan):南部オクシタニー地方、スペインのカタルーニャ地方の一部やイタリアの一部などで話される。
    コルシカ語(le corse):コルシカ島で話される。ナポレオンもコルシカ語の話者です!

    フランスの言語学者セルキリーニ(Cerquiglini, Bernard)は、フランス領全体で75もの地域言語があると報告しています。

    存続の危機にある

    しかし近年、これら地域言語の存続は危機にさらされています。話者が高齢化していることや、若者への教育が難しいなどの理由があります。

    ユネスコ(UNESCO)は「世界の危機言語(les langues en danger)リスト」を公表しており、フランス国内では26の言語が挙げられています。

     

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  • 地域言語による教育

    こうした危機的状況を改善するため、フランス各地には地域言語をつかって授業を行なう学校があります。

    ブルターニュ地方の学校の例

    ブルターニュにある学校 Diwan では、家庭内でブルトン語を使う機会が減ったという事情から、ブルトン語を書いたり話したりできる人材を育てる授業に取り組んできました。授業の一部をブルトン語で行い、小学校卒業(10-11歳)までに、日常生活で必要なコミュニケーションができるレベルまでブルトン語を身につけるのです。

    また中学校に進むと、授業の一部をブルトン語で行うコースを4人に1人の学生が選びます。

    フランスの高校卒業資格であるバカロレア(Baccalauréat)試験では、この Diwan の卒業生の取得率はほぼ100%で、成績も良好であることが報告されています。フランス語以外の言語で授業を受けていても、それが試験に影響するということはないようです。

    教師の確保と財源が問題

    このような学校はブルターニュだけでなく、南西部のバスク地方(バスク語)や南部のオクシタニー地方(オック語)など各地にあります。

    こうした、歴史や数学など語学以外の教科をその目標言語(上記の例ではブルトン語)で教える・学ぶ方法をイマージョン教育といいます。フランス全国でイマージョン教育を受けている児童数は約1万5000人にのぼります。

    しかし近年は全体的に地域言語の話者が減少し、教師の確保が問題になっています。また多くの学校が私立運営で、フランス語のみによる教育を受ける学生が多いなか、政府からの資金確保には苦心しているようです。

     

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  • 地域言語の保護法案

    21年4月8日、地域言語で教育する私立学校に対してイマージョン教育の導入などを提案する法案が、国民議会で可決されました。

    これはブルターニュ出身のモラック下院議員が提出したもので「モラック法(la Loi Molac)」と呼ばれています。モラック氏は野党の「自由と領土」グループ(Libertés et territoires)に所属しています。

    ここ数ヶ月、この法案を可決するよう求めるデモが各地で行われていました。

    可決は予想外だった?

    モラック法は賛成247、反対76、棄権19と圧倒的多数で可決しましたが、議会内では意見対立があったようです。

    とくにマクロン大統領やジャン=ミシェル・ブランケール(Jean-Michel Blanquer)国民教育大臣などが属する共和国前進グループ(La République en Marche, LREM)は反対色を見せていたため、法案の可決は予想外だという声もあったほどです。

    憲法院の判断にデモ

    しかし5月21日、フランス憲法院(Conseil constitutionnel)はブルトン語やバスク語によるイマージョン教育をすべての学校で実施するのは、効率の良い教育を行なうという点では「過剰」だという見解を表し、法案を一部修正しました。

    これを受けて、モラック氏をはじめ法案賛成派の議員は国民教育大臣を非難しています。

    こうした政府の姿勢に対して、ブルターニュ地方やバスク地方などで、市民によるデモ運動が行われています。

     

    最後に

    フランス語の教科書ではなかなか取り上げられることのない地域言語について、近年の保護運動の様子を少しでも知っていただけたとしたら幸いです。

    執筆 あお

    参照
    UNESCO「世界の危機言語リスト」[2021.06.03]
    Rouedad Skoliou DiwanL’immersion. Vivre et apprendre en breton[2021.06.03]

    Le Figaro (2021/04/07) La loi de promotion des langues régionales ratifiée par l’Assemblée nationale. [2021.06.03]
    Le Monde (2021/05/21) Le Conseil constitutionnel censure partiellement la loi sur les langues régionales.[2021.06.03]
    Le Figaro (2021/05/30)Langues régionales : l’enseignement immersif en question.[2021.06.03]

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