今回は、数年前から日本人を中心に被害が急増している詐欺についてお伝えします。実際に被害にあった友人のエピソードをもとに、対策を考えていきましょう。さあ今回も元気よく「詐欺になんて負けないぞ――!!」
職務質問をする私服警官
パリ滞在も数週間目を迎えこちらでの生活にも慣れてきたころ、Opéra 界隈の人通りの少ない裏通りを歩いていた友人。前方で私服警官が男性に職務質問をしているのを見かけます。警官は男性に身分証を提示させ「麻薬の売買の疑いをかけていた」と友人は感じたそうです。
クレジットカードの提出を求められる
その後、警官は友人に対してその男性の仲間ではないかと疑い始めます。友人にパスポートを提出させます。どういうわけか警官は「麻薬取引をしているかどうか調べるために、あなたの銀行口座を調べます。持っているクレジットカードを出しなさい」と迫ります。
友人は警官に持っていたクレジットカードを2枚渡すとさらに「このままでは口座が調べられないので、ここに暗証番号を打ち込んでください」となにかの機械を友人に渡します。
機械に暗証番号を打ち込んで…
友人が番号を機械に打ち込むと「ありがとうございました。問題がなかったので行っていいですよ」と言われたものの、まだクレジットカードを返されていないことに気がつきます。振り返るとそこには…もう誰もいませんでした。
私服警官を装ったカード詐欺師
ここで友人は初めて自分が騙されていたことに気がつきます。私服警官を装ったカード詐欺師だったのです。すぐに近くのカフェに飛び込み助けを求めましたが、もう犯人の手掛かりはつかめませんでした。
普通に考えれば、警察官がクレジットカードの提出を求めたり、カード番号を聞き出すのはおかしいとわかるはずです。しかし友人は「なにか変だな」とは思ったものの、目の前で取り調べを受けている光景を見て、本物の私服警官だと信じ込んでしまったそうです。
このやり取りの間、彼らは非常に優しい感じだったと友人は言います。最初に取調べを受けていた男性も友人に対して協力的だったそうです。ここで注意したいのは、最初に職務質問を受けていた男性も犯人の仲間だったということです。
観光客が多く安全な地域で多発
「あなたの友人がこちらで保護されているけれど、フランス語が話せないので通訳をしに警察署まで来てほしい」と警察から連絡を受けた僕は、偶然近くの界隈にいたのですぐに向かいました。
混乱している友人に代わり状況を通訳すると「ああ、あなたもやられたのね。状況は他の被害者とほぼ同じね。犯人の特徴を教えてちょうだい」と、すでにかなりの数の被害が届けられていると教えられました。
被害届を出してクレジットカード会社に連絡をしてカードを止めたのですが、友人の受けた精神的ショックはかなりのものでした。「自分を守ってくれるはずの警察までもが偽物だった。何を信じていいかわからなくなった」。泣きじゃくる友人がその時そう話していたのを、今でも強く覚えています。
次回は詐欺に遭わないための注意点をお伝えします。
執筆 Daisuke